特定の銘柄の値動きを1カ月間追いかけてみる「あの銘柄を買ってみた!」
今回は2024年10月に取り上げた三菱重工、川崎重工、IHIの値動きを振り返ります。
3社そろって大幅上昇
結果は以下の通りとなりました。
IHIが7675円→9167円となって19.4%高、川崎重工が6245円→7028円となって12.5%高、三菱重工が2210円→2329円となって5.4%高(いずれも税金・手数料等は考慮せず)と、3社そろって大きく上昇しました。IHIは2割近い上昇となっています。
トランプ氏の米大統領選勝利を受けて注目度が高まる
値動きを見た期間に大きく上昇した要因としては、米国の大統領選挙でドナルド・トランプ氏が勝利したことが挙げられます。「米国第一」を唱えるトランプ氏が勝利したことで、日本も国防を強化する必要が出てくるとの見方が強まりました。
9月後半から10月初旬にかけては、自民党総裁選に絡んで防衛関連が人気化しました。しかし、石破茂氏が新代表となって臨んだ10月の衆議院選挙では、早い時期から政権与党が苦戦するとの報道が出てきました。与党が弱いと政策期待が剥落しますので、10月中盤から後半にかけては3社とも売りに押されています。
ただ、ここで過熱感が冷まされた格好となり、米国の大統領選を通過して再び騰勢を強めています。
IHIは決算発表日にストップ高
各社の決算も株価を大きく刺激しました。IHIは上期の決算を発表した11月6日にストップ高となっています。ちなみに、米大統領選の投開票日は11月5日で、日本の11月6日の取引時間中に開票に関するニュースを消化しました。
IHIは上期の決算発表時に通期の利益見通しを上方修正しており、かつ、期末配当の見通しも引き上げています。決算内容そのものもポジティブでしたが、発表日時が11月6日の13時で、トランプ氏優勢との見方が一段と強まっていたタイミングでした。「トランプ氏=防衛関連」という見方が強い中、この日は発表を受けて買いが殺到しました。
川崎重工は下方修正がネガティブ視されず
川崎重工は上期決算発表時に通期見通しを下方修正しています。11月8日の昼休みに決算を発表して、この日の後場は売り気配スタートとなったのですが、鋭角的に切り返して大幅高で終えています。トランプ氏の勝利で防衛関連銘柄の再評価機運が高まり、6日にはIHIがストップ高となっていましたので、下方修正に対するネガティブな反応は限られました。
三菱重工は上期は大幅増益ではあったものの、上方修正などプラスアルファの好材料はありませんでした。また、決算発表日は11月5日で、大統領選はどちらが勝利するか分からない状況でした。この日は決算にサプライズが乏しいと受け止められ、下落して終えました。
上方修正や増配があったIHIはともかく、下方修正を発表した川崎重工との比較でパフォーマンスに差がついたことに関しては、決算発表のタイミングも少なからず影響しているかもしれません。
しばらくは注目度の高い状態が続く
値動きを見た期間では、3銘柄とも大幅高となりました。
3銘柄とも基調としては似た動きをしており、この期間ではいずれも11月8日に高値をつけています。しばらくは3社の中で選別が進むというよりは、同じような動きが続きそうな雰囲気があります。
大統領選に勝利したトランプ氏が実際に指導力を発揮するのは来年からとなります。年末年始のタイミングでは「2025年はこうなる」的な特集記事が多くなると思われますが、来年以降を見据えれば、防衛関連はテーマとして外せません。
「注目度が高い=上がり続ける」わけではなく、過剰人気になればそれが修正される場面も出てくるでしょうが、しばらくは売買代金上位の常連銘柄であり続けると考えられます。トランプ氏の発言や政策が軍事的緊張を高めるようなことになれば、それを材料に強く買われることもあり得ます。日本では先日、第2次石破内閣が発足しましたが、日米で良好な関係を継続できるかどうかも、今後の防衛関連の株価を見る上では重要なポイントとなります。