あの銘柄を買ってみた!

三菱重工、川崎重工、IHIを買ってみた!

特定の銘柄の値動きを追いかけてみる「あの銘柄を買ってみた!」


今回は三菱重工業、川崎重工業、IHIを取り上げます。証券コードは三菱重工が7011、川崎重工が7012、IHIが7013と並んでおり、いずれもプライム市場に上場しています。


自民党総裁選で防衛関連が人気化


これらは株式市場では防衛関連と見なされています。そして、防衛関連銘柄は自民党総裁選をきっかけに注目を集めることとなりました。


2024年9月27日に投開票が実施された自民党総裁選は、9人が立候補する混戦となりました。株式市場では結果が出る前に「●●候補が有力そうだから、その場合、××といった政策に絡む銘柄が物色されるだろう」といった先読みが行われます。しかし、今回は直前まで誰が総裁選で勝利するかが読みづらい状況でした。その中で、「『国防強化』は有力候補者に共通するテーマである」との見方が強まり、防衛関連が人気化しました。


最終的に自民党の総裁に選ばれたのは石破茂氏でした。石破氏は防衛庁長官を経験したことがあり、「防衛に強い」というイメージがあります。10月1日にはこれら3銘柄の売買が盛り上がりました。三菱重工は10月1日、2日と連日で全市場の売買代金ランキングでトップとなっています。


1番手候補で買いやすさもある三菱重工


10月2日の終値は、三菱重工が2210円、川崎重工が6245円、IHIが7675円でした。最低購入金額が一番低いのは三菱重工となります。三菱重工は2024年3月31日を基準日として、1:10の株式分割を実施しています。


大幅な分割をすれば買いやすくなる一方で売りやすくもなりますが、三菱重工に関しては分割した後の動きが強く、10月2日に上場来高値を更新しています。防衛関連として多くの人がまず最初にイメージするのが三菱重工で、その三菱重工の株価の値動きが良いからこそ、川崎重工株やIHI株にも資金が向かいやすくなっていると考えられます。



PER面では相対的な割安感がある川崎重工


2024年10月2日時点で3社のPER(1株純利益はこの時点での会社予想を採用)を見てみると、三菱重工が32倍、川崎重工が13倍、IHIが19倍となっています。PERは低い方が割安と言えますので、この比較においては川崎重工に分があります。


3社とも防衛関連として注目されてはいるものの、防衛だけの会社ではありません。多方面に事業を展開している中に防衛関連も入っているという形態であるため、単純にPERで3社を比較するのは、企業分析として適切とは言えません。とはいえ、足元のように上昇に勢いがついている時には、高値警戒感も出てきます。その点において、PERにさほど過熱感がないことは、買い安心感を高める要素の一つと考えられます。


なお、防衛関連の事業が拡大するかどうかは、時の政権の意向を大きく受けます。時の政権が防衛に関してどういうスタンスを採るかは、国際情勢に大きく影響されます。日本もしくはその周辺で軍事的緊張が高まった場合には、国の防衛に関する予算は増加すると考えられます。


また、日本と米国との関係にも注意を払う必要があります。今年は米国で大統領選挙が行われますが、トランプ氏とハリス氏のどちらが勝利するかというのも、これらの銘柄を見る上では重要になってきます。年前半にトランプ氏とバイデン氏の対決という構図であった際には、トランプ氏優位との見方が強まった時に防衛株が買われる場面もありました。他の多くの銘柄のようにPERだけで評価できない側面もあるだけに、人気になった際には跳ねやすいとも言えます。



出遅れ感がある分、足元の勢いが強いIHI


IHIに関しては、夏場以降の動きが良く、10月2日に年初来高値を更新しています。先述したように、防衛関連としてはまず三菱重工の注目度が高まりやすい分、2024年前半のIHI株は他の2銘柄と比べて出遅れ感もありました。ここにきて防衛関連の注目度が高まる中で、出遅れを挽回するような動きとなっています。


川崎重工は7月17日の高値6719円をまだ超えてはいません。前の高値の近辺ではやれやれ売りも出やすくなりますので、スンナリ上回ることができるかが今後の焦点となります。一方でIHIは抵抗がない分、上値が軽そうという期待があります。



似た動きが続く?選別が進む


10月2日の終値は、三菱重工が2210円、川崎重工が6245円、IHIが7675円でした。100株単位だと、それぞれ22万1000円、62万4500円、76万7500円となります。今回はこのタイミングで購入したと仮定して、後日、値動きを振り返ります。


これまでの銘柄のように1カ月後といきたいところですが、米国の大統領選挙が11月5日(火)に行われます。この結果も防衛関連の値動きに大きな影響を与える可能性がありますので、大統領選の投開票のある週の週末、11月8日(金)の時点での終値と見比べることとします。トランプ氏勝利なら防衛関連の買いが刺激されそうですし、そのイメージが強い分、ハリス氏勝利なら利益確定売りに押されそうではありますが、実際はどうなるでしょうか。


強い基調がまだまだ続くのか、それとも自民党総裁選を通過したことでそろそろ目先の材料出尽くしとなるのか、非常に興味深い局面です。また、3銘柄がこの先も似たような動きをしていくのか、それとも格差が出てくるのかも気になるところです。ここ数日は3社とも売買代金が高水準となっていますので、それがこの先も続くかどうかも見どころです。今の防衛関連を買いたいか買いたくないか、買いたい場合、どの銘柄に魅力を感じるか。売りから入りたい場合、どの銘柄がここから大きく下がりそうか。ぜひ、この時点でご自身なりの見解を出してみてください。






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日本株情報部 アナリスト

小松 弘和

証券会社、外資系生命保険会社、大手出版社マネーサイトの株式分析アナリスト、FX会社勤務を経て2014年に入社。金融全般に精通。2級FP技能士。 「トレーダーズ・プレミアム」では、「個別株戦略」「Market Flash」などのコンテンツやニュース配信を担当。 メディア掲載&出演歴 日経CNBC「朝エクスプレス『証券中継』」(隔週金曜)、株主手帳「街の専門家『今月の相場見通し』」、週刊現代、日経マネー、ダイヤモンド・ザイ、ビジネスマンの人生逆転マガジン「Ambitious」、完全ガイドシリーズ「株 完全ガイド」

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