日々是売買~トレードへの道

第80回「円買いポジションの解消に伴う急速な円安・ドル高圧力」

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ドル円、週末に下落も下値切り上げの印象

 

今週のドル円は週末28日の海外市場で大きく下げてしまいましたが、着実に下値を切り上げている印象。28日の東京市場では一時151.21円と3日以来の高値を更新しています。週明け24日の3月米製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値は予想を下回りましたが、サービス部門PMI速報値が予想を上回ると円売り・ドル買いで反応。19日の高値150.15円や5日の高値150.18円を上抜けると上昇に弾みが付きました。

 

なお、米経済におけるサービス業の占める割合は非常に高いため、この分野の景況感を把握する米サービス部門PMIは経済全体の動向を示す重要な指標となります。

 

また、27日には米ホワイトハウスが「関税の数字の一部は予想よりも控えめなものになる」との見解を示したことで、米国株の下げ渋りとともにドル円にも買いが入りました。その流れを受けての28日の東京市場でした。

 

*Trading Viewより

 

ただ、海外市場では一転売りが優勢となりました。米商務省が発表した2月米個人消費支出(PCE)は予想を下回りましたが、米連邦準備理事会(FRB)が金融政策を判断するうえで重視しているPCE価格指数(デフレーター)で、変動が激しい食品とエネルギーを除くコアデフレーターは予想を上回りました。米経済の3分の2以上を占める個人消費が予想を下回ったうえ、基調的な物価圧力の高まりが示唆されました。

 

また、その後発表された3月米ミシガン大学消費者態度指数確報値は予想を下回った一方、1年先・5年先の期待インフレ率は予想を上回り、速報値から上方修正されました。市場では「貿易摩擦が激化する様相を呈する中、物価高と景気悪化が重なるスタグフレーションのリスクが大きくなるとの懸念が広がった」との声が聞かれ、ダウ平均が一時760ドル超下落。米国株相場の軟調推移とともにリスク・オフの円買い・ドル売りが優勢となりました。米長期金利の大幅低下もあり、一時149.69円まで値を下げています。

 

 

 

投機筋の円買いポジション、高水準を維持

 

米商品先物取引委員会(CFTC)が3月28日(日本時間29日早朝)に発表した3月25日時点の建玉報告によると、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の通貨先物市場で非商業部門(投機筋)の円の対ドル持ち高は12万5376枚の円買い越し(ドル円のショート)と前週から2412枚増加しました。前週は1万938枚減少していましたが、今週は僅かながら増え、過去最大の大きさである3月4日時点の13万3651枚の円買い越しに近い水準を維持しています。

 

*CFTCのデータを基にDZHフィナンシャルリサーチ作成

 

昨年7月2日には18万4223枚の円売り越し(ドル円のロング)となり、2007年6月(18万8077枚)以来の高水準を記録していましたが、そのあとは一転して円買いポジションを構築する動きが目立ちました。そして、一気に10万枚の大台を突破し、13万枚の円買い越しになっていました。先週は統計開始以来、最大の円買いポジションが縮小したため、「いよいよ巻き戻しスタートか!?」との思惑も台頭しましたが、CFTCのポジションを見るとその動きはまだスタートしていないようです。とはいえ、燃料はかなりのモノ。巻き戻しがスタートしてしまえば、想定以上のスピードでマーケットが動く可能性もあるでしょう。

 

 

 

ドル円の一目均衡表チャートを見ると

 

今週の動きを見ると、特に週末の米国株や日本株の下落が目立ち、ドル円も週末の失速が懸念されますが、投機筋の円買い越しポジションの偏りを警戒する向きは依然として多く、何かしらの材料がきっかけで円買いポジションの解消に伴う急速な円安・ドル高圧力が生じる可能性はあります。きっかけがなくとも今後円高が進みにくいとなれば、ポジション解消の動きが突如広がることも想定されます。

 

*Trading Viewより

 

また、ドル円の一目均衡表チャートを見ると、基準線(148.92円)転換線(149.70円)週末の終値(149.84円)で上回っています。雲(上限:153.90円、下限:152.35円)で上値を抑えられてはいますが、テクニカル的に下値は堅い印象です。東京市場では引き続き「本邦実需の買い」が観測されています。特に「週明けの期末当日後場や4月新年度入りしてからのフローに期待」との声も聞かれており、来週以降も上サイドへのトライを期待したいところ。

 

*IG証券より

 

「148.895円」のドル円ロングはしばらくキープしたいと思います。なお、ロットは「2」、ストップロスは直近の安値である3月11日の安値146.54円よりやや下の「146.50円」に設定しています。

 

 

 

【免責事項・注意事項】

 

本コラムは個人的見解であり、あくまで情報提供を目的としたものです。いかなる商品についても売買の勧誘・推奨を目的としたものではありません。また、コラム中のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。最終的な投資決定はお客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。

この連載の一覧
第80回「円買いポジションの解消に伴う急速な円安・ドル高圧力」
第79回「投機筋の円買いポジション、いよいよ巻き戻しスタートか!?」
第78回「来るか!?行き過ぎた『ポジションの偏り』の反動」
第77回「投機筋の円買い過去最大 行き過ぎた『ポジションの偏り』」
第76回「投機筋の円買いが過去最大に 偏り警戒160円超えを指摘する声も」
第75回「投機筋の円買いポジション、再び6万枚超まで拡大」
第74回「投機筋の円買いポジション、5万4615枚に拡大」
第73回「ドル円、テクニカル的にも売りが出やすいか」
第72回「投機筋、ポジションはほぼフラットに」
第71回「28-29日のFOMC、利下げ見送りが濃厚」
第70回「日銀の追加利上げは織り込み済み」
第69回「ドル円は半年ぶり高値 ロングは維持したい」
第68回「やっぱり7月3日の高値161.95円突破を狙いたい」
第67回「ドル円、またまた160円台を目指していくのか」
第66回「日銀の年内利上げ観測後退 1月すらも怪しい」
第65回「感謝祭ウィーク週末のNY午後(日本の夜中2時)」
第64回「投機筋のユーロ売りポジション、再び5万枚に迫る」
第63回「クリスマスラリーに向けて仕込み時か!?その2」
第62回「クリスマスラリーに向けて仕込み時か!?」
第61回「投機筋、円買いポジションを大きく縮小」
第59回「投資の格言『損切りは早く、利は伸ばせ』」
第58回「円安予想で投機的ポジションを再び積み増し!?」
第57回「高市氏勝利を期待したポジションが含み損」
第56回「残暑厳しくも年末ラリーを期待する季節」
第55回「ドル円は年初来安値 歴史的な円安進行は終わり!?」
第54回「ブラックマンデーの再来!?!?(1カ月ぶり2度目)」
第53回「いろいろ底打ち? 日経平均は1カ月ぶり高値」
第52回「ドル円、二番底確認か?底割れか?」
第51回「投機筋のポジション、まさかの円ロングに」
第50回「株も為替もセリング・クライマックス」
第49回「植田総裁が突如タカ派路線、円高と株急落招く」
第48回「投機筋の円売りポジションが10.7万枚まで大幅に減少」
第47回「ヘッジファンドによる円売りポジションが急減」
第46回「ドル円、ピークアウトか 押し下げ介入?のサプライズ」
第45回「ドル円、またまた37年半ぶりの高値を更新」
第44回「ドル円、37年半ぶりの高値 当面は円安・ドル高基調か」
第43回「ドル円、34年ぶりの高値160円に接近 介入は困難か」
第42回「注目のFOMCを通過、今年の米利下げ予想1回に」
第41回「米雇用統計でFRBの年内利下げ観測が後退」
第40回「ドル円、介入規模は過去最大 ただ効果は1カ月」
第39回「ドル円、再び157円台に 介入は困難!?」
第38回「投機筋の円売りポジションが急減 介入受け」
第37回「政府・日銀、投機筋との攻防は長期化の可能性」
第35回「個人投資家の円買いvs投機筋の円売り」
第34回「介入期待もあってユーロ円のショートは維持」
第33回「久々のリスク・オフのムード 株安・原油急騰・円高」
第32回「ドル円、嵐の前の静けさか? 今週の値幅は1円未満」
第31回「中銀ウィークを無事通過!? ドル高・円安を期待」
第30回「ドル円ロングは維持、ストップは付かずに切り返す」
第29回「ドル円、上値重く 日銀の政策修正観測高まる」
第28回「【祝】日経平均株価、史上最高値 ドル円もそろそろ」
第27回「日経平均株価、史上最高値まであと少し」
第26回「ドル円、上値試すか 昨年11月の151円台も視野」
第25回「注目のFOMCタカ派寄りもドルは下落」
第24回「ドルと円、それぞれの買い要因が綱引き」
第23回「ドル円ショートは損切り 円安とドル高のダブルパンチで」
第22回「ドル円、1カ月ぶり146円台 追加でショート」
第21回「ドル円、年始の悪夢 1月3日のフラッシュクラッシュ」
第20回「ドル円、売りシグナル点灯 さらなる下落に期待」
第19回「ドル円、140円割れが視野に」
第18回「米債ロングは利食い FRB議長発言を前にポジションはなし」
第17回「米長期金利、2カ月ぶり低水準 上昇リスクにはなお注意」
第16回「米国債のロングポジション、含み益が拡大」
第15回「米国債のロングポジション、含み損から含み益に」
第14回「米10年債利回り、16年ぶりに『5%』を突破」
第13回「米国債、下落止まらず 利回りは2007年7月以来の高水準」
第12回「初めての米国債(CFD)買い、そろそろ底打ちかと思ったら・・・」
第11回「下手な難平(なんぴん)、素寒貧(すかんぴん)」
第10回「日経ロングはキープもリスク高い週末 米政府機関の閉鎖はほぼ確実に」
第9回「日経225ロング、含みゾーン(損)に突入!」
第8回「日経平均、レジスタンス突破でいよいよ3万4000円台乗せか!?」
第7回「日経平均、9連騰ならず テクニカル的には・・・」
第6回「日経平均をロング トレンドは友達(Trend is your friend)」
第5回「重要イベント通過もポジション取れず・・・相場は乱高下」
第4回「朝起きたらポジションが全てなくなっているという悲しみ」
第3回「ドル円、ストップロス水準に接近 祝日のため円安けん制発言も期待できず」
第2回「前週のドル円ショートはあえなくストップ 懲りずに再in」
第1回「ドル円、乱高下のあと何故か全戻し 戻りは叩く」

為替情報部 アナリスト

中村 知博

鹿児島出身。2007年国際金融情報サービス会社に入社。 外国為替取引会社・金融機関への24時間リアルタイム金融情報サービスの為替記者として従事。市場動向や見通しなどを解説する動画サービスの業務も経験。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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