日々是売買~トレードへの道

第38回「投機筋の円売りポジションが急減 介入受け」

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投機筋の円売りポジションが急減 為替介入受け

 

ヘッジファンドによる円売りポジションは政府・日銀による為替介入があったとみられる4月29日以降、大幅に減少しています。米商品先物取引委員会(CFTC)が4月26日に発表した4月23日時点の建玉報告によると、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の通貨先物市場で非商業部門(投機筋)の円の売り越し=ドル円のロングは17万9919枚と2007年6月(18万8077枚)以来の高水準を記録。円先物が導入された1986年以来でも屈指の規模となりました。

 

ただ、本日5月17日(日本時間18日早朝)に発表された5月14日時点の建玉報告によると、投機筋の円売りポジションは12万6182枚と4月23日時点の17万9919枚から5万3737枚減少しています。

 

*CFTCのデータを基にDZHフィナンシャルリサーチ作成

 

政府・日銀の円買い介入とみられる動きでドル円が急落したため、まとまった規模の持ち高整理が進んだようです。市場では「実弾が入ったことでひとまず手を引く投機筋が多かった可能性がある」との声が聞かれています。

 

 

 

イエレン発言で介入困難に

 

ただし、そのあとのイエレン米財務長官による円買い介入へのけん制を受けて、市場では「政府・日銀は介入が困難になった」との見方が浮上しています。

 

イエレン米財務長官は13日、通信社のインタビューで「為替介入はまれな行為であるべき」「他国への伝達必要」と発言。「日本は主要な貿易相手国である米国の許可を得ず安易に円買い・ドル売り介入を実施しにくくなった」との見方が強まりました。イエレン氏は4日にも「比較的短期間にかなり動いた」と述べ、為替のボラティリテ(変動率)の過剰な高まり抑制に理解を示しつつも「介入はまれであるべき」と同様の発言をしていました。

 

160.17円まで進んだ円安・ドル高のさらなる進行を食い止めた4月29日の介入に加えて、5月1日の米連邦公開市場委員会(FOMC)後にも介入を行ったことに「釘を刺した」と受け止められたようです。

 

*Trading Viewより 



 

米インフレ圧力和らぐ公算も

 

今週注目だった4月米消費者物価指数(CPI)は前月比の伸びが予想を下回り、変動の大きい食品とエネルギーを除くコアベースでは前月比の伸びが6カ月ぶりに鈍化しました。また、4月米小売売上高は前月比横ばいと予想の0.4%増を大きく下回り、過去2カ月分の数値が下方修正されました。

 

*米労働省HPより

 

市場では「マーケット好みの統計。コアインフレの数字は予想より良好だった。小売売上高もこれまで好調だったセクターである程度の減速が見られた。これらを総合すると、秋の利下げ説が補強される」「FRBの年内利下げが再び視野に入った。ただ、小売売上高が市場予想を下回ったことは注意が必要。個人消費の過熱感が薄れるのは良いことだが、一段と深刻な減速につながれば、市場が歓迎できないような経済悪化の前触れになりかねない」との声が聞かれました。

 

 

 

FRB高官は根強いインフレに懸念

 

一方で、今週は複数の米連邦準備理事会(FRB)高官が根強いインフレに懸念を示しました。パウエルFRB議長は「ここ数カ月インフレ沈静化に進展がなかったことを踏まえ、当局は忍耐強くあるべきで、政策金利を引き続き高水準に維持する必要がある」と改めて表明したほか、FOMCで投票権を有するバーキン米リッチモンド連銀総裁は「CPIはまだFRBが目指す目標には達していない」「我々は正しい道を進んでいるものの、もう少し時間がかかりそうだ」と述べ、メスター米クリーブランド連銀総裁は「政策金利を現在の水準で維持することが、なお高水準で推移するインフレ率を目標の2%に戻すことにつながる」と話しています。

 

加えて、ボウマンFRB理事は「インフレはしばらく高止まりするだろう」「今年はインフレに関してさらなる進展はまだ見られない」「金利変更には引き続き慎重、インフレ進展次第では利上げも辞さない」と語っています。

 

*Trading Viewより

 

米物価指標を受けてのドル売りと、FRB高官発言を受けてのドル買いで、ドル自体は方向感が出にくい面もありますが、円単体で考えるとイエレン米財務長官の発言で為替介入への警戒が後退する中、売りが出やすい状況と言えます。

 

 

 

【免責事項・注意事項】

 

本コラムは個人的見解であり、あくまで情報提供を目的としたものです。いかなる商品についても売買の勧誘・推奨を目的としたものではありません。また、コラム中のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。最終的な投資決定はお客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。

この連載の一覧
第48回「投機筋の円売りポジションが10.7万枚まで大幅に減少」
第47回「ヘッジファンドによる円売りポジションが急減」
第46回「ドル円、ピークアウトか 押し下げ介入?のサプライズ」
第45回「ドル円、またまた37年半ぶりの高値を更新」
第44回「ドル円、37年半ぶりの高値 当面は円安・ドル高基調か」
第43回「ドル円、34年ぶりの高値160円に接近 介入は困難か」
第42回「注目のFOMCを通過、今年の米利下げ予想1回に」
第41回「米雇用統計でFRBの年内利下げ観測が後退」
第40回「ドル円、介入規模は過去最大 ただ効果は1カ月」
第39回「ドル円、再び157円台に 介入は困難!?」
第38回「投機筋の円売りポジションが急減 介入受け」
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第1回「ドル円、乱高下のあと何故か全戻し 戻りは叩く」

為替情報部 アナリスト

中村 知博

鹿児島出身。2007年国際金融情報サービス会社に入社。 外国為替取引会社・金融機関への24時間リアルタイム金融情報サービスの為替記者として従事。市場動向や見通しなどを解説する動画サービスの業務も経験。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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