日々是売買~トレードへの道

第77回「投機筋の円買い過去最大 行き過ぎた『ポジションの偏り』」

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ドル円、5カ月ぶり安値 一時146円台

 

今週もドル円は軟調な展開となりました。週明け3日こそ、欧州の西側諸国首脳が週末にウクライナへの支持を改めて表明したことや、「英仏とウクライナで停戦案を作成したうえで米国に提示する」「欧州首脳らは停戦後のウクライナの安全保障に向けて有志国連合の協議を始めた」と報じられたことで、ウクライナ情勢に対する過度な懸念が後退。日経平均が600円超上昇したほか、英国やドイツの株価指数が最高値を更新。ドル円にも買いが入り151.02円まで値を上げました。

 

ただ、その後はさえない展開に。米政権による関税強化をきっかけに貿易摩擦が激化するとの懸念が高まると、世界的に株価が下落。投資家がリスク回避姿勢を強め円買い・ドル売りが優勢となりました。市場はトランプ米大統領の発言に振り回される状況。「関税を巡る状況が二転三転しており、予測不能性が大きな懸念につながっている」との声が聞かれています。

 

そして、週末7日には『月に一度のビッグイベント』である米雇用統計。米労働省が発表した2月米雇用統計では非農業部門雇用者数が前月比15.1万人増と予想の16.0万人増を下回り、失業率が4.1%と予想の4.0%より弱い結果となりました。これを受けて円買い・ドル売りが進むと、一時146.95円と昨年10月4日以来約5カ月ぶりの安値を付けています。

 

*Trading Viewより

 

加えて、今週6日には日本の連合が公表した2025年春闘の賃上げ要求が32年ぶりに6%を上回ったことが判明。高水準の賃上げ要求を受けて、市場では「日銀が早期に追加利上げに動く」との観測が高まり、円買いが広がりました。

 

ただ、7日には米大手ベンダーが「日銀は今月18-19日に開催する金融政策決定会合で金融政策の現状維持を決める公算が大きい。1月に利上げしたばかりであるほか、世界経済の不確実性が増しているとの考えが背景」と報じています。今後、日銀絡みの観測報道次第では相場が大きく動く可能性がありそうです。

 

 

 

投機筋の円買いポジション、過去最大の13万枚超え

 

米商品先物取引委員会(CFTC)が3月7日(日本時間8日早朝)に発表した3月4日時点の建玉報告によると、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の通貨先物市場で非商業部門(投機筋)の円の対ドル持ち高は13万3651枚の円買い越し(ドル円のショート)と前週から3万7671枚増え、2週連続で過去最大の大きさとなったことが分かりました。

 

*CFTCのデータを基にDZHフィナンシャルリサーチ作成 

 

昨年7月2日には18万4223枚の円売り越し(ドル円のロング)となり、2007年6月(18万8077枚)以来の高水準を記録していましたが、そのあとは一転して円買いポジションを構築する動きが目立ちました。そして、先週は9万5980枚の円買い越しとなり、過去最大を記録。今週はその水準を突破し、統計開始以来、最大の円買いポジションを更新しています。日銀の早期追加利上げ観測や米景気減速懸念などを背景に、投機筋が円買いポジションを積み上げたことが分かります。

 

内訳をみても、円ロング=18万3955枚円ショート=5万304枚となっており、投機筋の円ロングは最大です。

 

*CFTC HPより 


 

 

行き過ぎた「ポジションの偏り」に警鐘鳴らす

 

東海東京インテリジェンス・ラボでは為替に関するリポートの中で、「投機筋が円買いポジションの解消に動けば、ドル円を5円程度押し上げる原動力にもなり得る」とコメントしています。他の市場関係者からも「中長期的には155-160円程度の円安に戻る」「日銀の利上げ観測が高まりきったあとに160円を突破する可能性もある」との見立てが聞かれています。

 

日米金利差は依然として4%近く開きがあります。ドル円のショートを維持するためにはこの金利差分の金利を毎日支払わなければなりません。「何かしらがきっかけで、円買いポジション解消に伴う急速な円安・ドル高圧力が生じる可能性もある」といいます。きっかけがなくとも、今後円高が進みにくいとなれば、ポジション解消の動きが突如広がる可能性も。行き過ぎた「ポジションの偏り」の反動で円安方向に大きく動く可能性があることに留意しながら、ドル円は押し目買いを狙っていきたいところです。

 

 

 

【免責事項・注意事項】

 

本コラムは個人的見解であり、あくまで情報提供を目的としたものです。いかなる商品についても売買の勧誘・推奨を目的としたものではありません。また、コラム中のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。最終的な投資決定はお客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。

この連載の一覧
第77回「投機筋の円買い過去最大 行き過ぎた『ポジションの偏り』」
第76回「投機筋の円買いが過去最大に 偏り警戒160円超えを指摘する声も」
第75回「投機筋の円買いポジション、再び6万枚超まで拡大」
第74回「投機筋の円買いポジション、5万4615枚に拡大」
第73回「ドル円、テクニカル的にも売りが出やすいか」
第72回「投機筋、ポジションはほぼフラットに」
第71回「28-29日のFOMC、利下げ見送りが濃厚」
第70回「日銀の追加利上げは織り込み済み」
第69回「ドル円は半年ぶり高値 ロングは維持したい」
第68回「やっぱり7月3日の高値161.95円突破を狙いたい」
第67回「ドル円、またまた160円台を目指していくのか」
第66回「日銀の年内利上げ観測後退 1月すらも怪しい」
第65回「感謝祭ウィーク週末のNY午後(日本の夜中2時)」
第64回「投機筋のユーロ売りポジション、再び5万枚に迫る」
第63回「クリスマスラリーに向けて仕込み時か!?その2」
第62回「クリスマスラリーに向けて仕込み時か!?」
第61回「投機筋、円買いポジションを大きく縮小」
第59回「投資の格言『損切りは早く、利は伸ばせ』」
第58回「円安予想で投機的ポジションを再び積み増し!?」
第57回「高市氏勝利を期待したポジションが含み損」
第56回「残暑厳しくも年末ラリーを期待する季節」
第55回「ドル円は年初来安値 歴史的な円安進行は終わり!?」
第54回「ブラックマンデーの再来!?!?(1カ月ぶり2度目)」
第53回「いろいろ底打ち? 日経平均は1カ月ぶり高値」
第52回「ドル円、二番底確認か?底割れか?」
第51回「投機筋のポジション、まさかの円ロングに」
第50回「株も為替もセリング・クライマックス」
第49回「植田総裁が突如タカ派路線、円高と株急落招く」
第48回「投機筋の円売りポジションが10.7万枚まで大幅に減少」
第47回「ヘッジファンドによる円売りポジションが急減」
第46回「ドル円、ピークアウトか 押し下げ介入?のサプライズ」
第45回「ドル円、またまた37年半ぶりの高値を更新」
第44回「ドル円、37年半ぶりの高値 当面は円安・ドル高基調か」
第43回「ドル円、34年ぶりの高値160円に接近 介入は困難か」
第42回「注目のFOMCを通過、今年の米利下げ予想1回に」
第41回「米雇用統計でFRBの年内利下げ観測が後退」
第40回「ドル円、介入規模は過去最大 ただ効果は1カ月」
第39回「ドル円、再び157円台に 介入は困難!?」
第38回「投機筋の円売りポジションが急減 介入受け」
第37回「政府・日銀、投機筋との攻防は長期化の可能性」
第35回「個人投資家の円買いvs投機筋の円売り」
第34回「介入期待もあってユーロ円のショートは維持」
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第32回「ドル円、嵐の前の静けさか? 今週の値幅は1円未満」
第31回「中銀ウィークを無事通過!? ドル高・円安を期待」
第30回「ドル円ロングは維持、ストップは付かずに切り返す」
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第27回「日経平均株価、史上最高値まであと少し」
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第25回「注目のFOMCタカ派寄りもドルは下落」
第24回「ドルと円、それぞれの買い要因が綱引き」
第23回「ドル円ショートは損切り 円安とドル高のダブルパンチで」
第22回「ドル円、1カ月ぶり146円台 追加でショート」
第21回「ドル円、年始の悪夢 1月3日のフラッシュクラッシュ」
第20回「ドル円、売りシグナル点灯 さらなる下落に期待」
第19回「ドル円、140円割れが視野に」
第18回「米債ロングは利食い FRB議長発言を前にポジションはなし」
第17回「米長期金利、2カ月ぶり低水準 上昇リスクにはなお注意」
第16回「米国債のロングポジション、含み益が拡大」
第15回「米国債のロングポジション、含み損から含み益に」
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第11回「下手な難平(なんぴん)、素寒貧(すかんぴん)」
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第9回「日経225ロング、含みゾーン(損)に突入!」
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第5回「重要イベント通過もポジション取れず・・・相場は乱高下」
第4回「朝起きたらポジションが全てなくなっているという悲しみ」
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第2回「前週のドル円ショートはあえなくストップ 懲りずに再in」
第1回「ドル円、乱高下のあと何故か全戻し 戻りは叩く」

為替情報部 アナリスト

中村 知博

鹿児島出身。2007年国際金融情報サービス会社に入社。 外国為替取引会社・金融機関への24時間リアルタイム金融情報サービスの為替記者として従事。市場動向や見通しなどを解説する動画サービスの業務も経験。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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