日々是売買~トレードへの道

第76回「投機筋の円買いが過去最大に 偏り警戒160円超えを指摘する声も」

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ドル円、約4カ月半ぶりの安値

 

今週のドル円は米景気減速への懸念が台頭する中、米長期金利の低下に伴う円買い・ドル売りが進行。25日の2月米消費者信頼感指数が98.3と予想の102.5を下回ったことが分かると全般ドル売りが活発化し、これまでサポートとして意識されていた昨年12月3日の安値148.65円を下抜けると一時148.57円と昨年10月11日以来約4カ月半ぶりの安値を更新しました。日銀による早期の追加利上げ観測も引き続きドル円の重しとなったようです。

 

*Trading Viewより

 

ただ、そのあとは週末にかけて下げ渋る展開となっています。トランプ米大統領は27日、自身のSNSに「メキシコとカナダに対する関税は3月4日に発動。中国に対しても同日に10%の追加関税を課す」と投稿。米関税による世界経済への悪影響が警戒される中、米国株相場は軟調に推移しました。ただ、これまでの「株安」→「円高」という流れにはならず。米関税政策が米国内での物価上昇圧力につながるとの見方からドルを買う動きが目立ちました。

 

*Trading Viewより

 

特に週末の28日にはその動きが顕著となりました。2月東京都区部CPIが予想を下回る伸びに留まったことで円売り・ドル買いが強まると150.15円まで上昇しましたが、内田日銀副総裁が衆院財務金融委員会で「基調的な物価は2%に向かって徐々に高まっている」などと発言したことで反落。その後は日経平均株価が一時1400円を超える大幅安となる中、リスク回避目的の円買いも入りましたが、下押しは限定的。NY市場に入って、米ウクライナ首脳会談が決裂し共同会見も取りやめになったと伝わると、米国株も下げに転じる場面がありましたが、ドル円はほぼ反応なし。さらには、米10年債利回りが一時4.1912%前後と昨年12月10日以来の低水準を付けたにもかかわらず、取引終了まで底堅い動きが続きました。

 

 

 

投機筋の円買いポジション、過去最大の9万枚超まで拡大

 

米商品先物取引委員会(CFTC)が2月28日(日本時間3月1日早朝)に発表した2月25日時点の建玉報告によると、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の通貨先物市場で非商業部門(投機筋)の円の対ドル持ち高は9万5980枚の円買い越し(ドル円のショート)と過去最大の大きさとなりました。

 

*CFTCのデータを基にDZHフィナンシャルリサーチ作成

 

昨年7月2日には18万4223枚の円売り越し(ドル円のロング)となり、2007年6月(18万8077枚)以来の高水準を記録していましたが、そのあとは一転して円買いポジションを構築する動きが続き、9月24日時点では6万6011枚の円買い越しとなっていました。今週はその水準を突破し、統計開始以来、最大の円買いポジションとなりました。日銀の早期追加利上げ観測や米景気減速懸念などを背景に、投機筋が円買いポジションを積み上げたことが推測されます

 

 

 

ポジションの偏りによる反動に警鐘を鳴らす

 

投機筋による円買いは過去最大にまで膨張しているにもかかわらず、円高・ドル安のペースが加速する気配は乏しい状況です。市場では「日米金利差を手掛かりにした投機的な円高圧力が、絶大なドル需要に打ち消されているため」との声が聞かれています。市場関係者からは「足もとの円高進行は一時的」との予想が多く聞かれており、「中長期的には155-160円程度の円安に戻る」「日銀の利上げ観測が高まりきったあとに160円を突破する可能性もある」との見立てもありました。

 

投機の円買いは近い将来、ポジション解消の動きが出やすいため、今後円高が進みにくいとなれば、ポジション解消の動きが突如広がる可能性も。今週25日時点で過去最大の円買い越し=ドル円のショートであり、「偏り」の反動で円安方向に大きく動く可能性があることに留意しながら、ドル円は押し目買いを狙っていきたいところです。

 

 

 

【免責事項・注意事項】

 

本コラムは個人的見解であり、あくまで情報提供を目的としたものです。いかなる商品についても売買の勧誘・推奨を目的としたものではありません。また、コラム中のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。最終的な投資決定はお客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。

この連載の一覧
第76回「投機筋の円買いが過去最大に 偏り警戒160円超えを指摘する声も」
第75回「投機筋の円買いポジション、再び6万枚超まで拡大」
第74回「投機筋の円買いポジション、5万4615枚に拡大」
第73回「ドル円、テクニカル的にも売りが出やすいか」
第72回「投機筋、ポジションはほぼフラットに」
第71回「28-29日のFOMC、利下げ見送りが濃厚」
第70回「日銀の追加利上げは織り込み済み」
第69回「ドル円は半年ぶり高値 ロングは維持したい」
第68回「やっぱり7月3日の高値161.95円突破を狙いたい」
第67回「ドル円、またまた160円台を目指していくのか」
第66回「日銀の年内利上げ観測後退 1月すらも怪しい」
第65回「感謝祭ウィーク週末のNY午後(日本の夜中2時)」
第64回「投機筋のユーロ売りポジション、再び5万枚に迫る」
第63回「クリスマスラリーに向けて仕込み時か!?その2」
第62回「クリスマスラリーに向けて仕込み時か!?」
第61回「投機筋、円買いポジションを大きく縮小」
第59回「投資の格言『損切りは早く、利は伸ばせ』」
第58回「円安予想で投機的ポジションを再び積み増し!?」
第57回「高市氏勝利を期待したポジションが含み損」
第56回「残暑厳しくも年末ラリーを期待する季節」
第55回「ドル円は年初来安値 歴史的な円安進行は終わり!?」
第54回「ブラックマンデーの再来!?!?(1カ月ぶり2度目)」
第53回「いろいろ底打ち? 日経平均は1カ月ぶり高値」
第52回「ドル円、二番底確認か?底割れか?」
第51回「投機筋のポジション、まさかの円ロングに」
第50回「株も為替もセリング・クライマックス」
第49回「植田総裁が突如タカ派路線、円高と株急落招く」
第48回「投機筋の円売りポジションが10.7万枚まで大幅に減少」
第47回「ヘッジファンドによる円売りポジションが急減」
第46回「ドル円、ピークアウトか 押し下げ介入?のサプライズ」
第45回「ドル円、またまた37年半ぶりの高値を更新」
第44回「ドル円、37年半ぶりの高値 当面は円安・ドル高基調か」
第43回「ドル円、34年ぶりの高値160円に接近 介入は困難か」
第42回「注目のFOMCを通過、今年の米利下げ予想1回に」
第41回「米雇用統計でFRBの年内利下げ観測が後退」
第40回「ドル円、介入規模は過去最大 ただ効果は1カ月」
第39回「ドル円、再び157円台に 介入は困難!?」
第38回「投機筋の円売りポジションが急減 介入受け」
第37回「政府・日銀、投機筋との攻防は長期化の可能性」
第35回「個人投資家の円買いvs投機筋の円売り」
第34回「介入期待もあってユーロ円のショートは維持」
第33回「久々のリスク・オフのムード 株安・原油急騰・円高」
第32回「ドル円、嵐の前の静けさか? 今週の値幅は1円未満」
第31回「中銀ウィークを無事通過!? ドル高・円安を期待」
第30回「ドル円ロングは維持、ストップは付かずに切り返す」
第29回「ドル円、上値重く 日銀の政策修正観測高まる」
第28回「【祝】日経平均株価、史上最高値 ドル円もそろそろ」
第27回「日経平均株価、史上最高値まであと少し」
第26回「ドル円、上値試すか 昨年11月の151円台も視野」
第25回「注目のFOMCタカ派寄りもドルは下落」
第24回「ドルと円、それぞれの買い要因が綱引き」
第23回「ドル円ショートは損切り 円安とドル高のダブルパンチで」
第22回「ドル円、1カ月ぶり146円台 追加でショート」
第21回「ドル円、年始の悪夢 1月3日のフラッシュクラッシュ」
第20回「ドル円、売りシグナル点灯 さらなる下落に期待」
第19回「ドル円、140円割れが視野に」
第18回「米債ロングは利食い FRB議長発言を前にポジションはなし」
第17回「米長期金利、2カ月ぶり低水準 上昇リスクにはなお注意」
第16回「米国債のロングポジション、含み益が拡大」
第15回「米国債のロングポジション、含み損から含み益に」
第14回「米10年債利回り、16年ぶりに『5%』を突破」
第13回「米国債、下落止まらず 利回りは2007年7月以来の高水準」
第12回「初めての米国債(CFD)買い、そろそろ底打ちかと思ったら・・・」
第11回「下手な難平(なんぴん)、素寒貧(すかんぴん)」
第10回「日経ロングはキープもリスク高い週末 米政府機関の閉鎖はほぼ確実に」
第9回「日経225ロング、含みゾーン(損)に突入!」
第8回「日経平均、レジスタンス突破でいよいよ3万4000円台乗せか!?」
第7回「日経平均、9連騰ならず テクニカル的には・・・」
第6回「日経平均をロング トレンドは友達(Trend is your friend)」
第5回「重要イベント通過もポジション取れず・・・相場は乱高下」
第4回「朝起きたらポジションが全てなくなっているという悲しみ」
第3回「ドル円、ストップロス水準に接近 祝日のため円安けん制発言も期待できず」
第2回「前週のドル円ショートはあえなくストップ 懲りずに再in」
第1回「ドル円、乱高下のあと何故か全戻し 戻りは叩く」

為替情報部 アナリスト

中村 知博

鹿児島出身。2007年国際金融情報サービス会社に入社。 外国為替取引会社・金融機関への24時間リアルタイム金融情報サービスの為替記者として従事。市場動向や見通しなどを解説する動画サービスの業務も経験。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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