日々是売買~トレードへの道

第78回「来るか!?行き過ぎた『ポジションの偏り』の反動」

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ドル円、5カ月ぶり安値 一時146.54円

 

今週のドル円は下げ渋る展開となりました。米国株の大幅下落などを見る限りでは、むしろ「底堅かった」との印象です。

 

週前半こそ、トランプ米政権による関税政策などを背景に米景気懸念が一段と高まる中、ダウ平均が一時1100ドル超の急落。米国株相場の大幅下落を背景に、投資家がリスク回避姿勢を強め円買い・ドル売りが優勢となりました。11日の東京市場でも日経平均が一時1000円超の急落となり、ドル円は一時146.54円と昨年10月以来約5カ月ぶりの安値を更新しました

 

*Trading Viewより

 

ただ、そのあとはドル円の下値の堅さが目立ちました。鉄鋼・アルミニウム関連の輸入品に課す25%の追加関税を発動したトランプ米政権に対抗し、EUとカナダは対米報復関税を発表。世界的な貿易戦争が一段と激化するとの懸念から米国株は引き続き軟調に推移。さらには、ベッセント米財務長官が「最近の市場でドルが下落しているのは自然な調整」と述べ、「懸念していない」との考えを明らかにしたことがドルの重しとなりました。

 

それでも、ドル円は下げず。投機筋の円ロング(ドル円のショート)ポジションの偏りを警戒する向きが増える中、ショートカバーが進みやすい状況でした。12日には2月米消費者物価指数(CPI)が予想を下回ったにもかかわらず、指標発表後に149.19円まで上昇する場面がありました。なお、米CPIに続き、翌13日の2月米卸売物価指数(PPI)も下振れましたが、市場では「関税引き上げの影響はこれからで、安心する声は少ない」との声が聞かれました。

 

 

 

投機筋の円買いポジション、僅かながらも過去最大を更新

 

米商品先物取引委員会(CFTC)が3月14日(日本時間15日早朝)に発表した3月11日時点の建玉報告によると、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の通貨先物市場で非商業部門(投機筋)の円の対ドル持ち高は13万3902枚の円買い越し(ドル円のショート)と前週から251枚増え、3週連続で過去最大の大きさとなったことが分かりました。

 

*CFTCのデータを基にDZHフィナンシャルリサーチ作成

 

昨年7月2日には18万4223枚の円売り越し(ドル円のロング)となり、2007年6月(18万8077枚)以来の高水準を記録していましたが、そのあとは一転して円買いポジションを構築する動きが目立ちました。そして、先週は一気に10万枚の大台を突破し、13万枚の円買い越しに。今週はその水準を僅かながら更新し、統計開始以来、最大の円買いポジションとなりました

 

ただ、内訳をみてみると、円ロング=17万6790枚、円ショート=4万2888枚となっており、ポジション自体はロングもショートも縮小し、ネットで円ロングが増えたことが分かります。

 

*CFTC HPより 


 

 

来るか!?行き過ぎた「ポジションの偏り」の反動

 

 

今週のドル円の動きを見る限り、投機筋の円買いには「息切れ」を感じます。日米金利差は依然として4%近く開きがあり、ドル円のショートを維持するためにはこの金利差分の金利を毎日支払わなければなりません。何かしらの材料がきっかけで円買いポジションの解消に伴う急速な円安・ドル高圧力が生じる可能性もありますし、きっかけがなくとも今後円高が進みにくいとなれば、ポジション解消の動きが突如広がることが想定されます。

 

行き過ぎた「ポジションの偏り」の反動で円安方向に大きく動く可能性があることに留意しながら、ドル円はそろそろ押し目を拾っていきたいところ。市場関係者からは「円高進行が見込みにくくなると円買い解消の動きが大きくなりやすい。短期的には145円台まで円高が進む可能性もあるが、長期的な円高トレンドへと転換したわけではないだろう」との声が聞かれました。

 

*Trading Viewより

 

なお、ドル円の一目均衡表チャートを見ると、転換線(148.36円)週末の終値(148.64円)でようやく上回りました。「ドル円は二転三転しているトランプ関税や米国株の大幅な調整売りといったリスク・オフをこなしながら、下値を固めつつある。終値ベースでの転換線上抜けといったチャート上でのサインを確認出来るのであれば、コストのかかるショートポジションを敢えてキープする意味合いも薄れてくる」との指摘もありました。

 

 

 

【免責事項・注意事項】

 

本コラムは個人的見解であり、あくまで情報提供を目的としたものです。いかなる商品についても売買の勧誘・推奨を目的としたものではありません。また、コラム中のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。最終的な投資決定はお客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。

この連載の一覧
第78回「来るか!?行き過ぎた『ポジションの偏り』の反動」
第77回「投機筋の円買い過去最大 行き過ぎた『ポジションの偏り』」
第76回「投機筋の円買いが過去最大に 偏り警戒160円超えを指摘する声も」
第75回「投機筋の円買いポジション、再び6万枚超まで拡大」
第74回「投機筋の円買いポジション、5万4615枚に拡大」
第73回「ドル円、テクニカル的にも売りが出やすいか」
第72回「投機筋、ポジションはほぼフラットに」
第71回「28-29日のFOMC、利下げ見送りが濃厚」
第70回「日銀の追加利上げは織り込み済み」
第69回「ドル円は半年ぶり高値 ロングは維持したい」
第68回「やっぱり7月3日の高値161.95円突破を狙いたい」
第67回「ドル円、またまた160円台を目指していくのか」
第66回「日銀の年内利上げ観測後退 1月すらも怪しい」
第65回「感謝祭ウィーク週末のNY午後(日本の夜中2時)」
第64回「投機筋のユーロ売りポジション、再び5万枚に迫る」
第63回「クリスマスラリーに向けて仕込み時か!?その2」
第62回「クリスマスラリーに向けて仕込み時か!?」
第61回「投機筋、円買いポジションを大きく縮小」
第59回「投資の格言『損切りは早く、利は伸ばせ』」
第58回「円安予想で投機的ポジションを再び積み増し!?」
第57回「高市氏勝利を期待したポジションが含み損」
第56回「残暑厳しくも年末ラリーを期待する季節」
第55回「ドル円は年初来安値 歴史的な円安進行は終わり!?」
第54回「ブラックマンデーの再来!?!?(1カ月ぶり2度目)」
第53回「いろいろ底打ち? 日経平均は1カ月ぶり高値」
第52回「ドル円、二番底確認か?底割れか?」
第51回「投機筋のポジション、まさかの円ロングに」
第50回「株も為替もセリング・クライマックス」
第49回「植田総裁が突如タカ派路線、円高と株急落招く」
第48回「投機筋の円売りポジションが10.7万枚まで大幅に減少」
第47回「ヘッジファンドによる円売りポジションが急減」
第46回「ドル円、ピークアウトか 押し下げ介入?のサプライズ」
第45回「ドル円、またまた37年半ぶりの高値を更新」
第44回「ドル円、37年半ぶりの高値 当面は円安・ドル高基調か」
第43回「ドル円、34年ぶりの高値160円に接近 介入は困難か」
第42回「注目のFOMCを通過、今年の米利下げ予想1回に」
第41回「米雇用統計でFRBの年内利下げ観測が後退」
第40回「ドル円、介入規模は過去最大 ただ効果は1カ月」
第39回「ドル円、再び157円台に 介入は困難!?」
第38回「投機筋の円売りポジションが急減 介入受け」
第37回「政府・日銀、投機筋との攻防は長期化の可能性」
第35回「個人投資家の円買いvs投機筋の円売り」
第34回「介入期待もあってユーロ円のショートは維持」
第33回「久々のリスク・オフのムード 株安・原油急騰・円高」
第32回「ドル円、嵐の前の静けさか? 今週の値幅は1円未満」
第31回「中銀ウィークを無事通過!? ドル高・円安を期待」
第30回「ドル円ロングは維持、ストップは付かずに切り返す」
第29回「ドル円、上値重く 日銀の政策修正観測高まる」
第28回「【祝】日経平均株価、史上最高値 ドル円もそろそろ」
第27回「日経平均株価、史上最高値まであと少し」
第26回「ドル円、上値試すか 昨年11月の151円台も視野」
第25回「注目のFOMCタカ派寄りもドルは下落」
第24回「ドルと円、それぞれの買い要因が綱引き」
第23回「ドル円ショートは損切り 円安とドル高のダブルパンチで」
第22回「ドル円、1カ月ぶり146円台 追加でショート」
第21回「ドル円、年始の悪夢 1月3日のフラッシュクラッシュ」
第20回「ドル円、売りシグナル点灯 さらなる下落に期待」
第19回「ドル円、140円割れが視野に」
第18回「米債ロングは利食い FRB議長発言を前にポジションはなし」
第17回「米長期金利、2カ月ぶり低水準 上昇リスクにはなお注意」
第16回「米国債のロングポジション、含み益が拡大」
第15回「米国債のロングポジション、含み損から含み益に」
第14回「米10年債利回り、16年ぶりに『5%』を突破」
第13回「米国債、下落止まらず 利回りは2007年7月以来の高水準」
第12回「初めての米国債(CFD)買い、そろそろ底打ちかと思ったら・・・」
第11回「下手な難平(なんぴん)、素寒貧(すかんぴん)」
第10回「日経ロングはキープもリスク高い週末 米政府機関の閉鎖はほぼ確実に」
第9回「日経225ロング、含みゾーン(損)に突入!」
第8回「日経平均、レジスタンス突破でいよいよ3万4000円台乗せか!?」
第7回「日経平均、9連騰ならず テクニカル的には・・・」
第6回「日経平均をロング トレンドは友達(Trend is your friend)」
第5回「重要イベント通過もポジション取れず・・・相場は乱高下」
第4回「朝起きたらポジションが全てなくなっているという悲しみ」
第3回「ドル円、ストップロス水準に接近 祝日のため円安けん制発言も期待できず」
第2回「前週のドル円ショートはあえなくストップ 懲りずに再in」
第1回「ドル円、乱高下のあと何故か全戻し 戻りは叩く」

為替情報部 アナリスト

中村 知博

鹿児島出身。2007年国際金融情報サービス会社に入社。 外国為替取引会社・金融機関への24時間リアルタイム金融情報サービスの為替記者として従事。市場動向や見通しなどを解説する動画サービスの業務も経験。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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