日々是売買~トレードへの道

第56回「残暑厳しくも年末ラリーを期待する季節」

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ドル円、139.58円と1年2カ月ぶりの安値を更新

 

先週前半は米国のインフレ指標などを受けて、「米連邦準備理事会(FRB)は17-18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.25%の利下げを実施する」との見方が優勢となっていましたが、12日付の米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の記事をきっかけに「0.50%の大幅利下げ」観測が盛り返す格好となりました。

 

その週後半の流れを引き継いで、週明け16日も円高・ドル安が進行。その日の夕刻には一時139.58円と昨年7月28日以来約1年2カ月ぶりの安値を付けました。ただ、NY市場に入ってからは米経済指標の上振れを受けて一転買い戻しが優勢となりました。17日も良好な米経済指標が相次ぎ、米景気の底堅さが示されたためドル買い戻しが進みました。

 

*Trading Viewより

 

そして、注目のFOMC。結果は「0.50%の大幅利下げ」となりました。FOMC直前の金利先物市場は0.50%の利下げを6割、0.25%の利下げを4割織り込んでいましたが、エコノミストの多くは0.25%の利下げを予想していたため、結果公表後はドル売りで反応しました。ただ、ドル売りは一時的で、パウエルFRB議長が会見で「FRBが急いでいることを示唆する予測は何もない」「適切であれば、利下げを早めたり遅らせたり、一時停止したりする」と述べたほか、「0.50%の利下げは後手に回らないという決意のサイン、新たなペースと見なすべきではない」と話すとドル買い戻しが活発化しました。

 

 

 

日銀、早期利上げの可能性は低くなった!?

 

今週のもう一つの注目材料だった日銀金融政策決定会合。日銀は19-20日に開いた金融政策決定会合で市場予想通り政策金利の据え置きを決めましたが、注目はその後の植田和男日銀総裁の記者会見。植田総裁は「経済・物価見通しが実現していけば政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整していくことになる」と述べた一方で、「為替の動向や物価上振れリスクが相応に減少していることで時間的に余裕がある」「今年2回の利上げの影響を踏まえつつ、徐々に中立金利への認識を深めていく段階」「直ちに見通しの確度高まり、すぐ利上げとはならない」などと発言。市場では利上げを急がないややハト派寄りの姿勢を示したと受け止められました。

 

*CFTCのデータを基にDZHフィナンシャルリサーチ作成

 

植田日銀総裁による早期利上げに慎重な発言を受けて、20日の夕刻以降は全般円安が進みました。0時10分頃には一時144.49円と4日以来の高値を付けています。植田日銀総裁の会見直前に付けた141.74円からは2.75円の大幅上昇となりました

 

市場では「日銀はこの先、利上げを視野に入れているものの、植田総裁は米経済の先行きなどを慎重に見極めていく姿勢を強調。早期利上げの可能性は低くなったのではないか」との見方が出ています。

 

 

 

投機筋のポジション、円買いポジションが僅かながらも増える

 

ヘッジファンドによる円売りポジションは7月、過去17年間で最大規模に膨らみました。米商品先物取引委員会(CFTC)が先週日発表した7月2日時点の建玉報告によると、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の通貨先物市場で非商業部門(投機筋)の円の売り越し=ドル円のロングは18万4223枚と2007年6月(18万8077枚)以来の高水準を記録。円先物が導入された1986年以来でも屈指の規模となりました。

 

*CFTCのデータを基にDZHフィナンシャルリサーチ作成

 

ただ、20日(日本時間21日早朝)に発表された9月17日時点の建玉報告によると、投機筋の円の対米ドルポジションは5万6840枚の円買い越しとなっており、その前の週から1070枚増加。2016年10月以来の円買い越し=ドル円のショートとなっています。投機筋が円買いポジションを僅かながらも増やしたことが明らかになりました。もっとも、「FOMCや日銀金融政策決定会合前の数値」との認識は必要でしょう。日米金融イベントを経て、円買いポジションがかなり縮小した可能性は否定できません。

 

 

 

ポジションはないものの

 

ドル円の「145.05円」と「143.965円」のロングは、当初予定していた通り、8月5日の安値141.70円を下抜けたため、140.88円でストップアウトしています。今週の重要イベントを前に、その後はポジションを持たずにいましたが、来週以降は再びドル円の押し目を狙っていきたいと思っています


 

1年2カ月ぶりの安値139.58円という、分かりやすい下値目処が出来たこともありますし、年末までは下げたところを少しずつ拾っていく戦略。ゴールドマン・サックスのアナリストは「米国株はテクニカルなポジショニングや資金フローといった短期的な季節要因で当面は不利な状況に直面するが、年末にかけて上昇する可能性がある」と指摘していますが、米国株が「年末ラリー」となれば、ドル円やクロス円も年末にかけては底堅く推移する可能性がありそうです

 

 

 

【免責事項・注意事項】

 

本コラムは個人的見解であり、あくまで情報提供を目的としたものです。いかなる商品についても売買の勧誘・推奨を目的としたものではありません。また、コラム中のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。最終的な投資決定はお客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。

この連載の一覧
第56回「残暑厳しくも年末ラリーを期待する季節」
第55回「ドル円は年初来安値 歴史的な円安進行は終わり!?」
第54回「ブラックマンデーの再来!?!?(1カ月ぶり2度目)」
第53回「いろいろ底打ち? 日経平均は1カ月ぶり高値」
第52回「ドル円、二番底確認か?底割れか?」
第51回「投機筋のポジション、まさかの円ロングに」
第50回「株も為替もセリング・クライマックス」
第49回「植田総裁が突如タカ派路線、円高と株急落招く」
第48回「投機筋の円売りポジションが10.7万枚まで大幅に減少」
第47回「ヘッジファンドによる円売りポジションが急減」
第46回「ドル円、ピークアウトか 押し下げ介入?のサプライズ」
第45回「ドル円、またまた37年半ぶりの高値を更新」
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為替情報部 アナリスト

中村 知博

鹿児島出身。2007年国際金融情報サービス会社に入社。 外国為替取引会社・金融機関への24時間リアルタイム金融情報サービスの為替記者として従事。市場動向や見通しなどを解説する動画サービスの業務も経験。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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