日々是売買~トレードへの道

第35回「個人投資家の円買いvs投機筋の円売り」

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日米韓、初の財務相会合

 

日米韓は今週17日にワシントンで初となる財務相会合を開き、「最近の急速な円安及びウォン安に関する日韓の深刻な懸念を認識しつつ、既存のG20のコミットメントに沿って、外国為替市場の動向に関して引き続き緊密に協議する」と盛り込んだ共同声明を発表しました。

 

通貨安に悩む日本と韓国の財務相が足並みをそろえて自国通貨安に対する懸念を表明し、日韓安全保障分野でも連携を強める米国を巻き込み、声明を発表するのは異例。当然これには「市場へのけん制を強める狙い」もあります。翌18日にドル円は154円を割り込み、153.96円まで下押しする場面がありました。逆に言えば、「異例の対応」をもってしても瞬間的に154円を割り込んだだけ、と言えます。ドル円の18日の終値は154.64円ですので、「あまり効果はなかった」と言えます。

 

*Trading Viewより

 

むしろ、このところ「米連邦準備理事会(FRB)高官によるタカ派的な発言」が相次いでおり、米金利上昇とドル高が進んでいます。今年に入り数カ月が経過した中で、景気と労働市場が底堅さを見せており、インフレは想定よりもはるかに根強いことが判明しています。そのような状況で、パウエルFRB議長は「インフレが長引けば当初の想定よりも長期にわたり高金利を維持する」と述べ、これまでのトーンを変化させています。

 

パウエル議長は3月の議会証言で「FRBが利下げに着手するために必要なインフレ低下に対する確信は“そう遠くない”将来に得られる」としていたにもかかわらず、「最近の経済データを受けて目標達成の自信が持てなくなり、その自信を得るまでにいまだ時間がかかる」と姿勢を転換していますが、市場では「根強い米インフレはパウエル議長自身が昨年12月に利下げの可能性を時期尚早に示唆し、金融市場の楽観論に火をつけ、経済活動に拍車をかけたことも一因」との恨み節も聞こえてきます。

 

 

 

為替介入実施は近いのか!?

 

さて、日本の当局が日米韓財務相会合やG7で為替安定についての議論を主導しているのは、「国際協調の枠組みを通じて、円安に歯止めをかけたい」との狙いがあるからですが、ユーロ円をショートしている私にとって重要なことは「為替介入は近いのか!?」ということにつきます。市場関係者からは「財務相会合やG7で議論を主導したのは介入のための地均し」のためであり、「近いうちに為替介入に踏み切る」との見立てもあります。

 

ただ、16日に付けた34年ぶりの高値154.79円や大量のノックアウトオプションが観測されている155.00円を上抜けて、急速に円安・ドル高が進んだあとになると自動的にユーロ円も急伸し、私のストップロスが付いてしまいます。

 

*IG証券より

 

現在、ユーロ円(標準)をロット「1」、163.929円でショートし、ストップロスは直近高値である3月20日の165.35円より少し上の「165.45円」に設定していますが、仮にドル円が155円を突破し大きく上昇した場合はユーロ円も165.45円を上抜けてしまうでしょう。

 

 

 

個人投資家は過去最大規模の円買いポジション

 

政府・日銀による為替介入への期待もあり、ユーロ円をショート=円買いポジションを構築したわけですが、個人投資家も同じような理由から円買いポジションを維持していることが伺えます。下のグラフは東京金融取引所がHP上で公表している外国為替証拠金(FX)取引「くりっく365」のデータです。個人投資家の円買いポジション=ドル円ショートは2月に記録した過去最大である28.4万枚とほぼ同じ28万枚程度となっており、円買いポジションが依然として高水準であることが分かります。私と同様、為替介入を期待(切望)して、ポジションを維持していることが伺えます。

 

*東京金融取引所のデータを基にDZHフィナンシャルリサーチ作成 



 

投機筋の円売りポジションは17年ぶりの高水準

 

一方、ヘッジファンドによる円売りポジションは過去17年間で最大規模に膨らんでいます。米商品先物取引委員会(CFTC)が先週日発表した9日時点の建玉報告によると、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の通貨先物市場で非商業部門(投機筋)の円の売り越し=ドル円のロングは16万2151枚とその1週前の14万3230枚から1万8921枚増加しました。これは2007年6月以来の高水準であり、円先物が導入された1986年以来でも屈指の規模となっています。

 

*CFTCのデータを基にDZHフィナンシャルリサーチ作成

 


「ポジションが偏れば反動は大きくなる」と言います。先に政府・日銀による為替介入でドル円を大きく押し下げてくれれば、個人投資家が助かり、ヘッジファンドが損をする格好になります。逆に先に155円や160円を突破されてしまうと個人投資家が損をこうむり、ヘッジファンドが得をする格好になります。市場では「円売り(ドル円ロング)がここまで増えると、ちょっとしたきっかけでヘッジファンドがポジションを巻き戻し、利益を確定するかもしれない。現在、ドル円をロングしているトレーダーは難しい判断を迫られている」との声が聞かれていますが、同時に「ドル円をショートしている個人トレーダーも難しい判断を迫られている」とも言えます。

 

 

 

【免責事項・注意事項】

 

本コラムは個人的見解であり、あくまで情報提供を目的としたものです。いかなる商品についても売買の勧誘・推奨を目的としたものではありません。また、コラム中のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。最終的な投資決定はお客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。

この連載の一覧
第35回「個人投資家の円買いvs投機筋の円売り」
第34回「介入期待もあってユーロ円のショートは維持」
第33回「久々のリスク・オフのムード 株安・原油急騰・円高」
第32回「ドル円、嵐の前の静けさか? 今週の値幅は1円未満」
第31回「中銀ウィークを無事通過!? ドル高・円安を期待」
第30回「ドル円ロングは維持、ストップは付かずに切り返す」
第29回「ドル円、上値重く 日銀の政策修正観測高まる」
第28回「【祝】日経平均株価、史上最高値 ドル円もそろそろ」
第27回「日経平均株価、史上最高値まであと少し」
第26回「ドル円、上値試すか 昨年11月の151円台も視野」
第25回「注目のFOMCタカ派寄りもドルは下落」
第24回「ドルと円、それぞれの買い要因が綱引き」
第23回「ドル円ショートは損切り 円安とドル高のダブルパンチで」
第22回「ドル円、1カ月ぶり146円台 追加でショート」
第21回「ドル円、年始の悪夢 1月3日のフラッシュクラッシュ」
第20回「ドル円、売りシグナル点灯 さらなる下落に期待」
第19回「ドル円、140円割れが視野に」
第18回「米債ロングは利食い FRB議長発言を前にポジションはなし」
第17回「米長期金利、2カ月ぶり低水準 上昇リスクにはなお注意」
第16回「米国債のロングポジション、含み益が拡大」
第15回「米国債のロングポジション、含み損から含み益に」
第14回「米10年債利回り、16年ぶりに『5%』を突破」
第13回「米国債、下落止まらず 利回りは2007年7月以来の高水準」
第12回「初めての米国債(CFD)買い、そろそろ底打ちかと思ったら・・・」
第11回「下手な難平(なんぴん)、素寒貧(すかんぴん)」
第10回「日経ロングはキープもリスク高い週末 米政府機関の閉鎖はほぼ確実に」
第9回「日経225ロング、含みゾーン(損)に突入!」
第8回「日経平均、レジスタンス突破でいよいよ3万4000円台乗せか!?」
第7回「日経平均、9連騰ならず テクニカル的には・・・」
第6回「日経平均をロング トレンドは友達(Trend is your friend)」
第5回「重要イベント通過もポジション取れず・・・相場は乱高下」
第4回「朝起きたらポジションが全てなくなっているという悲しみ」
第3回「ドル円、ストップロス水準に接近 祝日のため円安けん制発言も期待できず」
第2回「前週のドル円ショートはあえなくストップ 懲りずに再in」
第1回「ドル円、乱高下のあと何故か全戻し 戻りは叩く」

為替情報部 アナリスト

中村 知博

鹿児島出身。2007年国際金融情報サービス会社に入社。 外国為替取引会社・金融機関への24時間リアルタイム金融情報サービスの為替記者として従事。市場動向や見通しなどを解説する動画サービスの業務も経験。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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