オルバン政権が退陣へ、揺らぐ欧州の「橋頭堡」
ハンガリーで12日投開票された議会総選挙で、新興野党の中道右派「ティサ(尊重と自由)」が勝利しました。反欧州連合(EU)的なオルバン政権の下野が決まったことで、ロシアと米国は欧州での盟友を失った形になりました。また、中国の市場関係者の間では、親中路線をとっていたオルバン首相が退陣したことで、中国企業が欧州進出の「橋頭堡(きょうとうほ)」を失うのではないか、との懸念が浮上しています。
『香港経済日報』によると、上海の復旦大学中国欧州関係研究センター主任を務める簡軍波氏は、親EU路線のティサが政権を握れば、中国からの投資に対する審査が強化される可能性があるとの見方を示しました。「中国はもはやハンガリーを橋頭堡と見なすべきではない。政策動向を慎重に見極める必要がある」と簡氏は述べました。
CATLやBYDがハンガリーに投資
ハンガリーで16年ぶりの政権交代が実現した主因は経済低迷と汚職のまん延に対する不満とされていますが、中国企業が関わる環境問題も選挙の争点の一つでした。車載電池大手のCATL(03750)がハンガリー第2の都市である東部のデブレツェンで建設した工場を巡り、大気や水資源の汚染疑惑が表面化したと伝わっています。
オルバン氏はウクライナ支援を巡り他のEU加盟国と対立し、強権的な政治手法が批判された半面、中国による投資の誘致に積極的でした。2023年秋にはCATLのデブレツェン電池工場が着工。新エネルギー車大手のBYD(01211/002594)も南部セゲドで欧州初の組み立て工場を建設すると表明し、2026年に生産開始の見通しです。同社はハンガリーに欧州の事業を統括する欧州本部を設けています。

CATLのスマホサイト
ハンガリー新政権トップ、中国投資誘致の「見直し」表明
ところがハンガリー次期首相となるティサのマジャル党首は、2026年1月のロイター通信のインタビューで、外国直接投資は重要だとしつつ、オルバン政権が中国や韓国の電池メーカーに過度に依存したのは「誤り」だと指摘していました。また国際契約は「実務的」に見直すべきで、不利な条項があれば再交渉すべきだとも述べました。マジャル氏は議会選翌日の記者会見でも、中国からの投資誘致を「見直す」と明言。投資計画を止めるわけではないと前置きしたうえで「環境や労働規制、汚職対策などの法律は尊重されるべきだ」と語りました。
ただ、中国側は、マジャル氏の言う「実務的」な経済関係が完全に崩れるとはみていません。簡氏は「ハンガリー経済は依然として外資、特に中国からの投資に依存しているため、中国と敵対関係にはなれない」と述べています。また、ハンガリー世論は完全にEU寄りではなく、オルバン氏の影響力も残ると指摘し、新政権の政策転換はある程度制約されるとしました。
暗雲漂う「全天候型包括戦略パートナー関係」
ハンガリーはEU加盟国として初めて「一帯一路」協力文書に署名した国です。さらに、中国の習近平国家主席が2024年5月にハンガリーを訪問した際、両国は戦略提携関係を「新時代の全天候型包括戦略パートナー関係」へと格上げしています。中国の広域経済圏構想「一帯一路」に基づく協力を深化させ、中国の対ハンガリー投資の拡大とサプライチェーンの安定を目指すとしました。
ハンガリーの国民1人当たりの可処分所得(購買力平価ベース)は2024年にEU域内で最低水準に沈みました(EU統計局による統計)。同国経済が活気を取り戻すには、中国を含めた外資の導入が不可欠でしょう。ただ、欧州諸国が中国企業の過剰生産や補助金、技術移転リスクに神経をとがらせるなか、マジャル新政権がEUに歩調を合わせれば、中国との関係の雲行きは怪しくなってきます。「全天候型」パートナーシップの真価が試されることになりそうです。





