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中国株、あのテーマはどうなった?

第86回 ハンセンテック指数:ナスダック追走へ、AIモデル開発2社を採用

「巻き返し」のはずが、過去3年は期待外れ

2023年8月に、この連載の第25回で「ハンセンテック指数」を取り上げました。タイトルは「3周年を機に巻き返しなるか」。香港市場版のナスダック総合株価指数として鳴り物入りで登場したものの、当時はハンセン指数をアンダーパフォームしていたからです。


残念ながら、足元の結果は芳しくありません。ハンセンテック指数の2026年6月4日の終値は4975.36ポイントでした。算出開始から満3年を迎えた2023年7月27日の終値(4341.19ポイント)と比べ1.15倍になった計算です。ところが、同期間にハンセン指数は1.29倍になっています。


1年前の水準割れ、遠のくナスダックの背中

ナスダック総合株価指数との比較でも、ハンセンテック指数の値動きは期待外れでした。過去1年の推移をみると、2025年10月までは両指数がおおむね歩調を合わせて上昇していましたが、その後はハンセンテック指数の下落基調が続きます(グラフ参照)。今年2月28日に米国とイスラエルがイラン攻撃を開始するとナスダック総合株価指数も下げていきますが、3月末に底入れし、上昇に転じます。結果、ハンセンテック指数は水をあけられました。


6月に入り、ナスダック総合株価指数が史上最高値圏を更新したのとは対照的に、ハンセンテック指数は1年前の水準を割り込んで推移しています。どうしてここまで差がついてしまったのでしょうか。


米国と中国の経済状況の違いが影響しているのはもちろんですが、ハンセンテック指数の主要企業がAIテーマへの投資を取り込めていないことが痛手となっています。言葉を換えれば、ハンセンテック指数の主要構成銘柄はAI相場に乗り切れていない、ということです。



AI相場に乗り切れない中国ネット大手

ナスダック総合株価指数では、AI普及に伴って需要が急拡大するインフラを手掛ける企業が主要な構成銘柄になっています。AI向けGPU(画像処理半導体)のエヌビディア、AIアクセラレーターのAMD、さらにグーグルやアンソロピックなどにカスタムチップを供給するブロードコムという半導体大手が代表的です。また、マイクロソフトが自社クラウドサービスのデータセンターを増設し、アルファベットは傘下のグーグルを通じて独自AI半導体「TPU」を開発しています。


一方、ハンセンテック指数でウエートが大きい銘柄は美団(03690)、SMIC(00981)、BYD(01211)、アリババ集団(09988)、ネットイース(09999)、小米集団(01810)、テンセント(00700)、JDドットコム(09618)です。半導体受託製造のSMICを除けば、AIインフラ銘柄とは言い難く、インターネット・プラットフォーム企業の株価が指数に大きく影響する構造になっています。


インターネット・プラットフォーム企業のなかでも美団、アリババ集団、JDドットコムはフードデリバリー事業での過当競争で「内巻」と呼ばれる消耗戦を繰り広げ、業績が圧迫された上に中国当局から指導を受ける始末でした。実は、アリババ集団とテンセント、さらに百度(09888)などは独自に大規模モデルや半導体チップを開発しています。ただ、現時点では米国のAIインフラ大手ほどには市場から評価されていないようです。


ミニマックスと北京智譜華章科技、8日付でハンセンテック指数に採用

株価指数を運営するハンセン・インデックシズは、ハンセンテック指数の押し上げにつながりそうな手を打ってきました。大規模モデルを開発する中国新興企業のミニマックス(00100)と北京智譜華章科技(02513)を同指数の構成銘柄に採用すると5月22日発表したのです。2銘柄とも約5カ月前に香港市場へ新規上場した後、株価が大きく上昇しました。


ミニマックス(00100)のスマホサイト(AAストックス)


1月8日上場の北京智譜華章科技は6月4日終値が1426.00HKドルと、公開価格比1127%高。1月9日上場のミニマックスは6月4日終値が663.50HKドルと、公開価格比302%高となっています。2銘柄とも2025年12月本決算は赤字が前年比で拡大していますから、将来の成長期待で買われてきたことは明らかです。また、当面は投資を続ける段階にあることでも共通しており、そろって上海証券取引所のハイテク新興企業向け市場「科創板」での上場を検討すると6月1日までに表明しました。


入れ替わりにハンセンテック指数から除外されたのは、業務ソフトウエアを手掛ける金蝶国際ソフト(00268)とキングソフト(03888)でした。AIモデルが進化を続ける裏側で、従来型のソフトウエア・アズ・ア・サービス(SaaS)は駆逐されてしまうという「SaaSの死」を反映した決定のようです。


銘柄入れ替えの発効は6月8日です。果たしてハンセンテック指数の持ち直しにつながるのか、注目していきたいと思います。

この連載の一覧
第86回 ハンセンテック指数:ナスダック追走へ、AIモデル開発2社を採用
第85回 中国自動車業界(その2):EVで狙う北米・日本市場
第84回 ハンガリー政権交代:中国企業の欧州進出に逆風か
第84回 オープンクロ-: 中国AI市場のゲームチェンジャー、テンセントに追い風
第83回 HALO:AIブームからの逃避先、中東紛争で脚光
第82回 ステーブルコインは統制可能か、香港が挑む「実験」
第81回 中国自動車業界、輸出から海外生産へシフト
第80回 「閉じる、は即ち開放」海南自由貿易港の逆説
第79回 香港ステーブルコイン:ネット大手と金融機関が免許争奪戦
第78回 香港ステーブルコインの裏表
第77回 中国映画:官民で描く国産作品の成長シナリオ
第76回 中国本土の投資家が香港市場で買った銘柄トップ10
第75回 「国家隊」その3:対トランプ戦線に参画、中国株ETFを買い増し
第74回 銀髪経済:攻守一体の長寿ビジネス
第73回 全固体電池:車載開始は27年、30年に量産化へ
第72回 中国の家電 その2:DeepSeekがゲームチェンジャー
第71回 ヒューマノイド:2025年は量産元年
第70回 ディープシーク その2:米中プラットフォームが続々提供
第69回 ディープシーク:トランプ氏コメントがまともな理由
第68回 人民元の先安観が消えない理由
第67回 2025年の消費:若者がこだわる6つの新潮流
第66回 新中式飲食業:若者を引き付ける「ネオ中華」消費トレンド
第65回 中央政治局会議 その2:金融政策を「緩和」に転換
第64回 「氷雪経済」が熱い!25年に1兆元突破へ
第63回 中国製ゲーム:世界で勝負、先兵は孫悟空
第62回 観光業界: 25年は休日が2日増加、国内旅行ブーム到来か
第61回 鉄鋼業界:経営統合に再点火、業界団体が政策主導を要望
第60回 少子化:「出産・育児しやすい社会」目指す総合措置を発表
第59回 自動運転業界、「スパイ活動疑惑」にヒヤリ
第58回 伝統の「白酒」:ネット世代は「飲まずに投資」
第57回 中央政治局会議:市場が大歓迎した「3つの異例」
第56回 名月も陰る中国景気、月餅も「お手頃価格」が主流
第55回 中国の家電:勝負の分かれ目は海外、ブランドを世界展開
第54回 中国の金融政策 その2:なぜ中央銀行は独立しているべきなのか
第53回 「高配当株」その2:香港市場、主役はバリュー株に交代か
第52回 中国の金融政策:大胆な利下げに踏み出せない事情
第51回 250日移動平均:香港市場に帰ってきた「ベア」
第50回 米大統領選:香港の投資家を悩ます二重の不確実性
第49回 香港市場の「もしトラ」:米インフレ再燃を予想、金融セクターに「買い」
第48回 「肥満症薬」:先発薬の特許切れにらみ、国内企業が参入ラッシュ
第47回 「国家隊」その2:異例の香港入場、6月に中央企業指数ETFを買い入れ
第46回 「水素サプライチェーン」:2025年にFCV5万台、業界は振興策を要望
第45回 「不動産発展の新モデル」その4:地方政府の住宅在庫買い取り、人民銀が支援
第44回 「高配当株」:中国ならではの買われる理由
第43回 「不動産発展の新モデル」その3:中国指導部、住宅在庫の消化策検討を指示
第42回 「国9条」:配当利回り重視の投資戦略に脚光、注目銘柄は国有企業
第41回 「啓航企業」:国有企業のゆりかごでユニコーンは育つか
第40回 「kimi」:市場を沸かせる中国ユニコーンの生成AI
第39回 「不動産発展の新モデル」その2:痛みを伴う改革に踏み込めるか
第38回 期待は高い「低空経済」:eVTOL離陸に投資家も浮き立つ
第37回 「洋上風力発電」:低迷を脱するか、行方は政策の風向き次第
第36回 「24年の香港IPO」: 地位回復に向け中国本土、米国と競り合い
第35回 「辰年の投資戦略」:一押しは日本株、A株市場には慎重
第34回 「美麗中国」:習近平氏肝いりの“生態文明”建設事業
第33回 内巻、寝そべり、潤学、献忠学:ネットに見える若者の本音
第32回 住宅神話と「発展の新モデル」: 待ったなし、中国不動産市場の構造改革
第31回 「十不青年」: 家を買わない中国の若者、投資にも興味なしか
第30回 「国家隊」:株式相場を「実弾」で支える官製チーム、その実力は?
第29回 「生成AI」:中国市場を制する一般向けサービスはどれか
第28回 資本市場の活性化と逆行する「IPO抑制」
第27回 消えた「房住不炒」、投資家を走らす
第26回 医薬品業界に嵐を呼ぶか「反腐敗」
第25回 「ハンセンテック指数」3周年を機に巻き返しなるか
第24回 地方歳入増の妙案になるか「城中村」の改造
第23回 中国通信株の未来を担う「工業インターネット」
第22回 「ハンセン指数」上昇シナリオ実現の根拠と条件
第21回 株式市場を揺るがす「人民元相場」
第20回 習近平氏の肝いり「郷村振興戦略」
第19回 習近平色に染まるシン「新型都市化」
第18回 上半期のネット通販王者を決める「618」開幕
第17回 中国の株式相場を動かす「中特估」とは?
第16回「医薬品ネット通販」アリババとJDがしのぎを削る成長市場
第15回「半導体の国産化」(その3) 腐敗は一掃、戦略を再設計へ
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中国株情報部

村山 広介

日本の出版社や外資系出版社に勤務したほか、シンガポールの邦字新聞社でビジネスニュース編集を経験。 2011年8月、T&Cフィナンシャルリサーチ(現・DZHフィナンシャルリサーチ)に入社。

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