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中国株、あのテーマはどうなった?

第88回 AI関連が上場ラッシュ、トップモデルは誰だ

1-5月のAI企業上場は62社、前年同期比113%増


連載の前回(6月5日)で「ハンセンテック指数の主要構成銘柄は人工知能(AI)相場に乗り切れていない」と書きました。ハンセンテック指数の状況は今も変わってはいませんが、実は香港市場全体でみれば、AI銘柄の上場ラッシュといえる状態です。


香港証券取引所のデータによると、2025年12月初旬から2026年5月末までに香港で新規上場した企業は計62社となり、前年同期の33社から113%増えました。調達額は前年同期比114%増の1668億HKドルに達しています。うち、AIバリューチェーン関連企業によるIPO調達額は計979億HKドルと、香港IPO市場全体の調達額の55%を占めています。


香港市場に「AIバリューチェーン」形成


『香港経済日報』によると、香港取引所のグローバル上場サービス部門責任者である徐経緯氏は6月10日、「AIバリューチェーンのさまざまな分野にまたがる企業が相次いで香港上場を果たした。もはや香港のAIセクターは単一のテーマや概念にとどまらず、より厚みのある上場セクターとエコシステムを形成している」と述べました。


ここでいう「AIバリューチェーン」とは、プラットフォームおよびモデル、アプリケーション、インフラの3層にまたがって付加価値を生み出す業種のつながりを指します。うち、プラットフォームおよびモデル層で最も市場の注目を集めているのが大規模モデルの開発企業。代表的銘柄であるミニマックス(00100)と北京智譜華章科技(02513)は、前回ご紹介した通り、1月初旬に新規上場して以降株価が急騰し、6月8日にはハンセンテック指数の構成銘柄に採用されました。



AI企業70社が上場待機、6月下旬に5銘柄


AI関連企業の上場の勢いはしばらく収まりそうもありません。徐経緯氏は「現在、AIバリューチェーンに属する企業70社が上場を待っている」と明らかにしました。実際、6月下旬だけでも5銘柄が香港メインボードに新規上場します。22日には独自開発の「智源オリジン大規模モデル」を使ったAIプラットフォームサービスを手掛ける深セン海清智元科技(01392)が上場し、初日終値は公開価格比270.8%高となりました。


26日にはAI端末向け精密部品メーカーの広東領益智造(01688)、意思決定インテリジェンスOSを使ったAIサービスを提供する北京中科聞歌科技(01956)、半導体製造装置の合肥芯碁微電子装備(09630)が同時に上場。なかでも広東領益智造は、調達予定金額(仮条件の上限で計算)がミニマックスと北京智譜華章科技を上回るだけに、初日の株価推移が注目されます。29日には、北京海光芯正科技(01191)が上場の予定です。同社はAIデータセンターの高速データ伝送を支えるオプトエレクトロニクス製品の開発・製造を手掛けています。


躍り出る「AI六小虎」、残り4社がIPO準備か


上場候補としてさらに注目度が高いのは、中国「AI六小虎」と呼ばれる新興企業でしょう。実は、今年1月に上場を果たしたミニマックスと北京智譜華章科技は「AI六小虎」6社に含まれています。残り4社は月之暗面(Moonshot AI)、階躍星辰(StepFun)、百川智能(Baichuan AI)、零一万物(01.AI)です。すでに月之暗面と階躍星辰を巡っては、中国当局がレッドチップ企業の香港上場に対する審査を強化したことに対応し、同構造を解消することで香港での新規株式公開(IPO)を目指す方針と伝わっています。


月之暗面は第40回でご紹介した通り、DeepSeekとほぼ同時期に発表された生成AI「kimi」で知られています。最近は資金調達を活発に行っており、最新ラウンドで最大20億米ドルの資金調達を目指していると『香港経済日報』が6月8日に報じました。実現すれば、過去6カ月で3回目の資金調達となります。


階躍星辰はAGI(汎用人工知能)の実現を掲げ、高度な論理推論やマルチモーダル処理を得意とする大規模モデル「Step」を開発しました。テンセント(00700)が出資していることでも知られ、『香港経済日報』によれば5月に実施した最新ラウンドにもテンセントが参加しました。


百川智能(Baichuan AI)は医療向け大規模言語モデルの開発を手掛けており、今年1月13日に最新版の「Baichuan-M3」を発表しました。その際、同社の創業者である王小川・最高経営責任者(CEO)は、2027年にIPOを開始する見通しを明らかにしました。企業情報サービス「企査査」によると、百川智能は2023年の設立以来、3回の資金調達で累計約75億元を調達し、企業価値は200億元を超えています。


零一万物も、独自の大規模言語モデル(LLM)技術を基盤に「Yi」シリーズを開発しています。2023年5月の設立からわずか8カ月で企業評価額が10億米ドルを突破。2024年のシリーズAラウンドでは数億米ドル規模の資金を調達しました。2025年には、アリババクラウドと共同で産業向け大規模モデルの共同研究所を設立しました。


この連載の一覧
第88回 AI関連が上場ラッシュ、トップモデルは誰だ
第87回 ハンセンテック指数:ナスダック追走へ、AIモデル開発2社を採用
第86回 中国自動車業界(その2):EVで狙う北米・日本市場
第85回 ハンガリー政権交代:中国企業の欧州進出に逆風か
第84回 オープンクロ-: 中国AI市場のゲームチェンジャー、テンセントに追い風
第83回 HALO:AIブームからの逃避先、中東紛争で脚光
第82回 ステーブルコインは統制可能か、香港が挑む「実験」
第81回 中国自動車業界、輸出から海外生産へシフト
第80回 「閉じる、は即ち開放」海南自由貿易港の逆説
第79回 香港ステーブルコイン:ネット大手と金融機関が免許争奪戦
第78回 香港ステーブルコインの裏表
第77回 中国映画:官民で描く国産作品の成長シナリオ
第76回 中国本土の投資家が香港市場で買った銘柄トップ10
第75回 「国家隊」その3:対トランプ戦線に参画、中国株ETFを買い増し
第74回 銀髪経済:攻守一体の長寿ビジネス
第73回 全固体電池:車載開始は27年、30年に量産化へ
第72回 中国の家電 その2:DeepSeekがゲームチェンジャー
第71回 ヒューマノイド:2025年は量産元年
第70回 ディープシーク その2:米中プラットフォームが続々提供
第69回 ディープシーク:トランプ氏コメントがまともな理由
第68回 人民元の先安観が消えない理由
第67回 2025年の消費:若者がこだわる6つの新潮流
第66回 新中式飲食業:若者を引き付ける「ネオ中華」消費トレンド
第65回 中央政治局会議 その2:金融政策を「緩和」に転換
第64回 「氷雪経済」が熱い!25年に1兆元突破へ
第63回 中国製ゲーム:世界で勝負、先兵は孫悟空
第62回 観光業界: 25年は休日が2日増加、国内旅行ブーム到来か
第61回 鉄鋼業界:経営統合に再点火、業界団体が政策主導を要望
第60回 少子化:「出産・育児しやすい社会」目指す総合措置を発表
第59回 自動運転業界、「スパイ活動疑惑」にヒヤリ
第58回 伝統の「白酒」:ネット世代は「飲まずに投資」
第57回 中央政治局会議:市場が大歓迎した「3つの異例」
第56回 名月も陰る中国景気、月餅も「お手頃価格」が主流
第55回 中国の家電:勝負の分かれ目は海外、ブランドを世界展開
第54回 中国の金融政策 その2:なぜ中央銀行は独立しているべきなのか
第53回 「高配当株」その2:香港市場、主役はバリュー株に交代か
第52回 中国の金融政策:大胆な利下げに踏み出せない事情
第51回 250日移動平均:香港市場に帰ってきた「ベア」
第50回 米大統領選:香港の投資家を悩ます二重の不確実性
第49回 香港市場の「もしトラ」:米インフレ再燃を予想、金融セクターに「買い」
第48回 「肥満症薬」:先発薬の特許切れにらみ、国内企業が参入ラッシュ
第47回 「国家隊」その2:異例の香港入場、6月に中央企業指数ETFを買い入れ
第46回 「水素サプライチェーン」:2025年にFCV5万台、業界は振興策を要望
第45回 「不動産発展の新モデル」その4:地方政府の住宅在庫買い取り、人民銀が支援
第44回 「高配当株」:中国ならではの買われる理由
第43回 「不動産発展の新モデル」その3:中国指導部、住宅在庫の消化策検討を指示
第42回 「国9条」:配当利回り重視の投資戦略に脚光、注目銘柄は国有企業
第41回 「啓航企業」:国有企業のゆりかごでユニコーンは育つか
第40回 「kimi」:市場を沸かせる中国ユニコーンの生成AI
第39回 「不動産発展の新モデル」その2:痛みを伴う改革に踏み込めるか
第38回 期待は高い「低空経済」:eVTOL離陸に投資家も浮き立つ
第37回 「洋上風力発電」:低迷を脱するか、行方は政策の風向き次第
第36回 「24年の香港IPO」: 地位回復に向け中国本土、米国と競り合い
第35回 「辰年の投資戦略」:一押しは日本株、A株市場には慎重
第34回 「美麗中国」:習近平氏肝いりの“生態文明”建設事業
第33回 内巻、寝そべり、潤学、献忠学:ネットに見える若者の本音
第32回 住宅神話と「発展の新モデル」: 待ったなし、中国不動産市場の構造改革
第31回 「十不青年」: 家を買わない中国の若者、投資にも興味なしか
第30回 「国家隊」:株式相場を「実弾」で支える官製チーム、その実力は?
第29回 「生成AI」:中国市場を制する一般向けサービスはどれか
第28回 資本市場の活性化と逆行する「IPO抑制」
第27回 消えた「房住不炒」、投資家を走らす
第26回 医薬品業界に嵐を呼ぶか「反腐敗」
第25回 「ハンセンテック指数」3周年を機に巻き返しなるか
第24回 地方歳入増の妙案になるか「城中村」の改造
第23回 中国通信株の未来を担う「工業インターネット」
第22回 「ハンセン指数」上昇シナリオ実現の根拠と条件
第21回 株式市場を揺るがす「人民元相場」
第20回 習近平氏の肝いり「郷村振興戦略」
第19回 習近平色に染まるシン「新型都市化」
第18回 上半期のネット通販王者を決める「618」開幕
第17回 中国の株式相場を動かす「中特估」とは?
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中国株情報部

村山 広介

日本の出版社や外資系出版社に勤務したほか、シンガポールの邦字新聞社でビジネスニュース編集を経験。 2011年8月、T&Cフィナンシャルリサーチ(現・DZHフィナンシャルリサーチ)に入社。

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