電力不足は解消されず?
中国各地で気温が上がり、本格的な夏の到来を感じる日々が続いています。上海では5月29日の最高気温が36.7度となり、5月の観測史上最高記録を更新。その後、暑さは一時和らぎましたが、30度を上回る日も多く、早くも猛暑の足音が聞こえてきました。
中国は昨年、久々の猛暑となりました。主要都市の夏場の平均最高気温は前年比で大きく上昇し、重慶では8月に40.2度を記録。「最高気温の平均」なので、ほとんどの日で最高気温40度超だったことになるでしょうか。上海でもうだるような暑さを経験しました。電力使用が急増したため、街のネオンを一部消すなど節電の工夫も見られたほどです。
今年はどうなるでしょうか。国家気候センターは、中国の大部分の地域で夏季(6~8月)の気温が例年より高くなると予想しています。華東や華中、新疆などのエリアでは最高気温35度以上の日が例年比でやや多くなるとのこと。また、日本の気象庁は6月、エルニーニョ現象が今春に発生したと見られると発表していますが、同現象は異常気象の原因となることもあり警戒が必要でしょう。中国ではすでに、雲南省一帯での干ばつ、河南省を中心とした豪雨など自然災害が相次いでいます。特に河南省では長雨が小麦の収穫に大きな影響を与えたことも話題になりました。これから夏本番を迎える中、気候変動への警戒感がより高まっていきそうです。
華南エリアでは6月中旬から気温上昇による電力不足が深刻化しており、地元政府による節電要請が早くも行われているようです。広東省の茂名市や江門市では電力使用ピーク時の節電が呼びかけられ、国有企業に対して室内のエアコンの温度設定を高めにすることなどが求められています。広東省の電力の3分の1は水力発電が盛んな雲南省からということ。その雲南省で前述のように干ばつが起きて発電に影響が出ているため、広東省は他の地域に先駆けて電力不足に直面しているとの解説もありました。
昨年、重慶市では一部の商業モールやデパートが昼間の営業を一時停止する事態も起きました。もちろん節電が目的。「暑くてやってられない」とでも言い換えられるでしょうか。「エアコンが効いていない」という顧客からのクレーム対応も面倒でしょうし、そもそも蒸し風呂のような場所には誰も寄り付かないかもしれませんね。
夏に盛り上がる定番産業
さて、株式市場ではサマーストックが賑わう時期になります。定番は「ビール・アイス・エアコン」の各セクターとなるでしょう。
ビールは例年、夏場に向けて生産量が増加する傾向にあり、いよいよシーズン到来です。昨年不振だった反動もあり、生産量は3月が前年同月比20.4%増、4月が同21.1%増と早くも盛り上がり始めています。ゼロコロナ政策の終了で外食産業に賑わいが戻っていることも後押し材料になりそう。老舗の青島ビール(00168)、「雪花」ブランドを展開する華潤ビール(00291)、バドワイザーAPAC(01876)などが代表的銘柄です。
もう一つの夏の風物詩はアイスクリーム。業界最大手は上海A株上場の内蒙古伊利実業集団 (600887)で、22年のアイス部門は前年比33.6%増収と好調でした。同じく33.3%増収と順調に伸びた中国蒙牛乳業(02319)にも注目していきたいです。全く関係ありませんが、私が好きなのは「可愛多」というコーン付きアイス。もう20年ほど食べ続けており、夏になると条件反射的に買ってしまいます。価格は以前は2元や3元程度だったと記憶していますが、今や6元まで上昇しました。
さて、猛暑の中の必需品でもあるエアコンは、3月頃から夏場にかけて販売が増加しやすくなっています。今年3月の販売台数は1844万台で、月次ベースでは19年以降の過去最高を更新しました。業界最大手は28年連続で販売トップの珠海格力電器(000651)。家庭用エアコンの22年市場シェアは33.9%でした。同じく大手では、「ハイアール」「casarte」ブランドなどを展開する海爾智家(600690)も挙げられます。
夏になるとイベントも増えてきますが、ビール関連では「青島国際ビール祭り」が有名です。今年は7月14日から8月6日まで開催予定。これに合わせて、青島市では「日中経営者対話」と銘打たれた交流会も開催されます。3年間にわたったゼロコロナ政策でやや盛り上がりに欠けていた各種イベントですが、今夏の本格復活を期待したいです。