紅包を渡すタイミングは・・・
「百年好合!(末長くお幸せに)」「早生貴子!(早くお子さんを)」ーー。式場にお祝いの言葉が響き渡ります。先日、久しぶりに参加した中国人の結婚式。新型コロナ禍の中、2回の延期を経て3度目の正直でついに開催されました。新郎新婦や親族、参列者の誰もがホッとした笑顔。結婚市場にようやく春到来といった趣です。
日本と同じく、コロナの影響で各種イベントや宴席、催し物などの延期が相次いでいた中国。ゼロコロナ政策の解除と大規模感染(&集団免疫の獲得)を経て、これまで溜まっていたニーズが戻ってきました。結婚式のほか、商品展示会やビジネスマッチングなどのイベント、各種会議やフォーラムなどのリアル開催が目立ちます。4月には上海モーターショーが開催予定で、イベント熱はますます盛り上がっていきそうです。
さて、私が参加した中国の結婚披露宴の様子を紹介してみます。各地で風習が異なるので特徴は様々ですが、それでも日本から見たらびっくりすることも多々起きます。
披露宴は日本と同じくホテルや結婚式場の大広間で行われることが多いです。もしくはレストランなどを貸し切りにして開く場合もあります。今回は大型ホテルで行われましたが、平日夜にも関わらず3組の披露宴が入っており、なかなかの賑わいでした。
円卓は30卓用意されていました。1卓当たり10人が座るので、およそ300人規模の宴会です。会場の真ん中にはファッションショーのようなランウェイ(花道)が設けられるなど、いかにも派手好きな中国人らしい雰囲気です。
紅包(ホンバオ=ご祝儀)は会場受付で渡す場合もありますが、今回は受付自体がなかったので少々戸惑いました。どうしようかなぁと思っていたところ、会場内で新婦の父に遭遇。普通ではない作法かもしれませんが、周りの人に聞きながらその場で直接渡しておきました。様々な風習や習慣があるので、こればかりは現地の人のやり方を真似るのが得策です。もっとも、披露宴が始まった後、新郎新婦が各テーブルを回ってお酒を乾杯するタイミングで彼らに直接紅包を渡している人もいました。ここまでくるとマナー云々より、とにかく渡せばいいのだな、と感じて力が抜けてしまいましたが・・・。
式場は抽選会で大盛り上がり
中国の結婚披露宴では、各テーブルに高級酒とタバコが用意されているのが“お約束”。今般の式では四川省の高級白酒「五糧液」と高級タバコの代名詞「中華」がありました。五糧液は1399元(約2万7000円)の限定版。普段はなかなか飲まないお酒に参加者の心が弾みます。
テーブルには白酒のほか、ワイン、ビール、ソフトドリンクなどがあらかじめ用意されています。何を飲むかは自由ですが、地方で行われた式だったため、地場色が強い白酒をチョイスする人が多かった気がします。フランス産のワインより四川産の五糧液。何とも中国らしい光景です。
盛大な式では参加者を巻き込んだ大抽選会が行われることもあります。最近の流行りは、会場内の大画面にイベント専用のQRコードが映し出され、それをスマホでスキャンして抽選参加の申し込みをするシステムです。それを元にランダム抽選し、当選者を決めて随時発表。スマホシェイク(端末を揺らしたり振ったりする)のゲーム方式が採られることもあり、会場は大盛り上がりです。
景品は、家電製品やおもちゃ、生活雑貨などが定番。布団や食用油などが用意されることもあります。知人は家電大手の美的の電子レンジをゲットしていました。また、引き出物は出る時と出ない時がありますが、「記念品」というよりは「日用品」が多いイメージです。
料理は基本的に中華の豪華大皿料理ですが、牛肉のステーキやサーモンの刺身なども出てきました。特に形式張ることはなく、自由に食べ、飲み、語らう姿が各テーブルで見られました。結婚式に限りませんが、「料理をふんだんに振る舞う」のがホスト側の務めなので、どうしても量が多く食べ残しが増えてしまいます。中国では数年前から食べ残しを諌めるキャンペーンが行われており、各種スローガンも掲げられていますが、現場レベルでは正直言って関係ありません。あまりに無駄が多いため、今後改善の余地が大いにあると思います。
いずれにせよ、新型コロナ禍で自粛されていた集まりや宴席ニーズの復活を強く感じました。宴席では豪華な酒や食事が提供され、抽選会では家電製品などが当たるなど、各業界の販売の後押しにもなるでしょう。今回驚いたのは、紅包が新郎の両親から参加者に渡されたこと。お返しの意味もあるのでしょうが、包まれていたのは200元。お金を送り合うというのは、これまた中国らしいです。そこで損得勘定する訳ではないですが、実際にお金をもらうと何だか得した気分になるもの。このような行為の積み重ねが市民の消費マインドを後押しし、中国経済の下支え材料になる気もしています。