スマホで簡単にクリーニング予約
「冬物クリーニング39.9元」「クーラー掃除109元」「ペットのシャワーサービス158元」……。いずれもスマホ上で紹介されている便利な出張サービス。これらを展開するのは、アリババ系のネットスーパー、盒馬鮮生(フーマー)です。モノを売るだけでなくサービスを提供するビジネスモデルが市民生活にじわり浸透してきました。
盒馬鮮生のアプリを開くと商品がジャンル別に並んでいます。スーパーなので、「野菜・果物」「肉類」「海鮮・水産物」などが定番ですが、それらの中に「生活服務(生活サービス)」というアイコンも見られます。その名の通り、生活シーンで役に立つ出張サービスを手掛けているのです。
細かくなりますが、スマホ上で示される主な生活サービスを挙げてみます。
◇家電清洗(家電クリーニング)
◇家庭保潔(掃除)
◇深度清潔(掃除グレードアップ版)
◇専業洗衣(衣服クリーニング)
◇靴類洗護(靴クリーニング)
◇収納服務(収納サービス)
◇保姆鍾点工(お手伝いさん)
◇搬家/除甲セツ(引っ越し/フォルムアルデヒド除去)
◇数碼維修(デジタル製品のメンテナンス及び修理)
◇寵物服務(ペットサービス)
このうち、私がよく活用するのは衣服のクリーニングです。例年、冬物をまとめて洗ってもらいます。1着当たり39.9元で、注文は最低3着から。コートやダウンジャケット、セーターなどが対象です。サービスは72時間以内で完了。一応、「2000元以下の衣服に限る」との注意書きがありますが、細かくはチェックされません。
また、重宝するのが靴のクリーニングです。中国は季節や場所によっては埃っぽいこともあり、お世辞にも清潔とは言えない道も少なくないので、知らない間に靴が汚れてしまうケースが多々あります。靴は自分で洗うこともできますが、ここはプロに任せたいところ。スニーカーなら1足29元からです(最低3足の注文)。5足オーダーすると、1足当たり19.8元まで割り引かれ、お得感も出てきます。
いずれのサービスも、盒馬鮮生で生鮮品を買うのと同じ要領でスマホ上でオーダーします。希望のサービスをタップして買い物かごに入れ、その場でキャッシュレス決済。その後、受け取り&お届け時間の画面が出てくるので、希望時間を入力して完了です。中国語ではこのような出張サービスを「上門取送」と言います。
きめ細かいサービスも充実
私が利用したことがあるのは、今のところ服と靴のクリーニングだけですが、いつもながら感心するのはそのサービスのきめ細かさです。受け取りとお届けの時間厳守は当たり前ですが、スタッフは慣れた手つきで服や靴を回収し、スマホのシステム上でさっと手続きを済ませます。ムダがないので、わずか1~2分ほどで終わります。
また、クリーニングスタッフから電話やチャットで連絡が来ることもあります。「コートの袖に小さなほつれがありましたが、気を付けて洗います」「スニーカーの汚れのシミが残ってしまうかもしれませんが、できるだけ落とします」の類のメッセージです。後日、「なんできれいに洗ってくれないんだ」のようなクレームが入らないための事前注意喚起(自己防衛の狙いもあるでしょう)と言えますが、それでもここまで気を使ってサービスを行ってくれるので、気分は悪くありません。日本では当たり前のことでしょうが、中国と関わり始めて20年以上が経つ者として、「ここまでサービスレベルが上がったのか」と感慨深くなってしまいます。
その他の出張サービスも人気があります。家電クリーニングは季節の変わり目の定番ですし、引っ越し時の入居前に「家全体のクリーニング」をオーダーする人もいると聞きます。フォルムアルデヒド除去のサービスもありますが、市民が生活環境を意識するようになってきた現れでしょうか。デジタル製品関連では、スマホの電池交換などがよく使われているようです。
盒馬鮮生だけでなく、同様の生活関連サービスを手掛けている業者は無数にあります。私の知人は以前、ワンルームマンションのちょっとした改修工事をネット上でオーダーしました。下見や見積もりはスマホのチャットやビデオ通話で完結。ちょうど1週間ほどの旅行で家を空けるタイミングで作業をお願いし、旅から帰るときれいに仕上がっていたそうです。貴重品の管理やカギの受け渡しもあるので、信頼できる業者でないとスムーズにはいかないかもしれませんが、それでも注文から施工まで全てリモートでこなした手際の良さに感心したものです。
中国ではネットビジネスが独自の発展を遂げていますが、最後は人の手も必要になってくるため、「リアル+ネット」の融合が非常に重要です。人口減や就職難が進んでいるとはいえ、まだまだ豊富な労働力を持つ中国は、「リアル+ネット」のビジネスモデルをさらに進化、そして深化させる余地が多分にあると言えるでしょう。人手不足の日本から見ると羨ましいくらいの環境かもしれません。