中国現地Now!

中国現地Now!猛暑と干ばつで電力不足、今年の夏はキツい!

上海でも最高気温40度は当たり前? 


中国各地で猛暑が続いています。今年の夏は、日本や欧米でも例年以上の暑さと伝えられていますが、中国もそれに負けずとも劣らない猛暑、いや酷暑ぶり。上海も最高気温35度以上は当たり前で、40度に達しても驚かなくなってしまいました。


中国では暑さが厳しい時期を「三伏」と呼んでいます。暦によって毎年微妙にずれますが、7月中旬から8月上旬の30~40日間を指します。今年は7月16日から8月24日までの40日間という長丁場。初伏(10日間)、中伏(20日間)、末伏(10日間)に分かれています。今年の中伏は7月26日から8月14日に当たり、上海ではこの20日間のうち、最高気温37度以上が11日、40度以上が3日もありました。一番涼しかったのは7月30日の32.3度ということです。夜9時過ぎでも30度以上の日が多く、とても夕涼みどころではありません。


この記録的な猛暑は中国全土で見られ、各地で電力不足が伝えられています。特に深刻なのが四川省。家庭用電力の供給を優先するため、企業など法人を対象に計画停電を実施しています(当面は8月15日から20日まで)。省当局は、操業停止になる製造企業には特別休暇を実施するよう助言したとのことです。


四川省の省都・成都は、水が豊富で作物がよくできる肥えた土地が多いことなどから「天府の国」と呼ばれてきました。ところが、折からの猛暑で、冷房使用の増加による電力不足、長江流域での干ばつに伴う水力発電能力の低下という問題が浮上。一般家庭でも一部停電となっています。成都に住む私の知り合いは、停電でクーラーが使用できない室内をあきらめ、テーブルを外に持ち出して夕食を食べる姿をSNS上に投稿していました。また、夜になると「暑くて眠れない……」とも話しています。思ったよりもかなり深刻な状況です。


電力使用の制限による余波は他都市にも広がっています。重慶市は、最高気温40度以上の日が10日間続いたことを受け、市内の企業に対して8月下旬までの一時休業を要請しました。四川省も同じですが、自動車やIT製品・部品の製造業者など幅広い産業が影響を受けそうです。浙江省寧波市、江蘇省南京市や徐州市などでも計画停電が実施されているということです。



 

求められる安定的な電力供給


思い返してみれば、一昨年の2020年には中国各地で大雨による水害が相次ぎ、「三峡ダムが決壊するのでは」と話題になりました。長江流域の平均降水量(6~7月中旬)は1961年以降で最多となり、被災者は約4000万人。一時、上海にも浸水や洪水の影響が及ぶのでは、と警戒されたほどです。今年は打って変わって猛暑と干ばつ。落差が激しくてなかなかついていけません。


また、昨年秋口には電力不足による停電や節電が相次ぎました。特に遼寧省や吉林省など東北地方で、信号機が止まったり水道施設のポンプが動かず断水に陥ったりと散々な状況でした。石炭価格の高騰により発電会社が積極的に電力供給に動かなかった(電力料金は容易に引き上げられないので、発電すればするだけ赤字になる)のが一因とされますが、とにかく市民生活に大きな影響が出たのは事実です。


もちろん冬も油断できません。2020年冬には寒波を背景に各地で電力不足となりました。湖南省からは「停電でエレベーターが動かず、階段で20階のオフィスまで上った」、浙江省からは「(地方政府の通達により)気温が3度以下でないと暖房をつけてはダメ」などの実態が伝えられました。温州(浙江省)に住む知人は「送電制限で工場の通常稼働ができない」と嘆いていたほどです。今年の冬はどうなるのでしょうか……。


経済の回復を目指し、製造業もフル稼働が求められる現在。ところが、それを支える電力供給が滞っています。ロックダウン(都市封鎖)の影響で市民の消費マインドが冷え込み、作っても売れないという状況も指摘され、「泣きっ面に蜂」の現場もあるようです。

 

中国は広く、経済状況も様々なので、「電力不足が大問題!」とは一概には言えません。ただ、生活やビジネスの基盤となる電力インフラの安定は誰もが求めるところ。問題ははっきりしていますので、今後は新エネルギーの拡大や効率的な送電網の拡充を含めた電力の足回り強化が進むことを期待したいです。

この連載の一覧
不動産価格は下落見込み、中銀アンケートから市況を読む
大卒者の就職率は55.5%、厳しさ続く雇用市場
外食各社の業績低迷、価格に敏感な一般市民
プリペイドにはご用心、突然の閉店で泣き寝入りも
進む少子高齢化と人口減少、三中全会での対策は?
中国で高まる節約志向、大都市でも消費不振
ホントに静か? 中国の「クワイエット・カー」に乗ってみた
「中国式」で独自に発展中、ネット配車最前線
中国人はアリババ株を買えないの?
マオタイ価格が急落、株価も連れ安でプチ混乱
便利な出張サービス、「ネット+リアル」で進化中
住宅在庫の消化は進む? あの手この手で業界支援
観光業を支えるレッドツーリズム
「デジタル+アナログ」で発展する中国スマホ社会
中国はこれから卒業シーズン、1179万人が就職市場へ
ティードリンク市場がアツい! 上場予備軍も続々
不動産市場にまつわるエトセトラ
アンケートから景況感を探る! 貯蓄志向は依然高め
「消費降級」で明暗、外食チェーンの激しい争い
何はなくともカップ麺、鉄道旅のマストアイテム
アジア最大の家電見本市、スマート化に注目
大学生にゲーム規制? 全人代の提議あれこれ
ジェットコースター相場、波乱の1月と2月
変わる中国新エネ車業界、テック系が続々進出
春節前の政策相場、底打ち機運の中国株
朝から「メンクイ」、好みの麺をご賞味あれ
“ポスト・コロナ”の中国、外国人の目にはどう映る?
2年連続で前年割れ、人口減社会に直面する中国
“コロナ前”の水準回復へ、中国旅行市場の現地温度感
「元旦快楽」で辰年スタート、2024年の中国はどうなる?
並ぶのも一苦労、中国ならではの行列事情
ネット通販の主役交代? 好調続くPDD
頼りになる「即時配送」、旅先でも気軽にデリバリー
中国人のリアルボイス、不動産や就職事情を聞いてみた
「有軌電車」でGO! 着々広がる中国の都市交通網
白酒値上げのカラクリ、マオタイの時価を探れ
火鍋を語ろう、中国発のナベトーーク!
スマホオーダーで気軽に一杯、中国コーヒー最新事情
交通規制は突然に、中国式厳戒態勢
中国に「デフレ」という言葉はない?
行楽シーズン到来! 中国のオススメ観光地を大紹介
大型連休がやって来る! 9億人が大移動
ライバル逆襲と使用禁止令、中国でiPhoneはどうなる?
政策後押しで復活なるか、中国の不動産最前線
「水問題」で非難一色の中国、日本バスケで思わぬ展開に?
アリババ&テンセント、進む人員削減とスリム化
イベント消費で経済を回せ、政府も積極支援中
デフレ懸念も何のその、ホテル料金が上昇中
街に活気戻り売上が回復中、中国外食産業の現在地
人口と婚姻数が減少中、中国の若者の人生観とは
空港着いたらライドシェア専用乗り場へGO!
待ちぼうけはつらいよ、夏場のフライトあるある
「貯蓄重視で投資は控え目」、中国人のお金はどこへ向かう?
家族連れで賑わう場面も、端午節のプチ旅行
今年も猛暑? 早くも節電の呼びかけ
「618商戦」がやって来る! ネット通販で買い物三昧
キーワードは「頭文字C」、注目される国有企業の行方
中国でコロナ感染再拡大、それでも市民の多くはノーマスク
中国の若年失業率は20%超、雇用確保が優先課題に
現金要らずの連休旅行、何でもスマホとキャッシュレス
大盛況の上海モーターショー、中国地場系の躍進目立つ
「スラムダンク」が中国でも大人気、初日興収18億円!
「ラストワンマイル」はアナログリレーで解決?
火鍋チェーンの「呷哺呷哺」、一人鍋で存在感
ドライヤー市場に新風来たる、Z世代に人気の新興ブランド
日中間の移動がスムーズに! 国際線の増便・復便進む
復活する消費市場、北京の街に賑わい戻る
復活中の結婚式ニーズ、動き始めたヒト・モノ・カネ
改札時間は15分ジャスト! 中国の鉄道事情あれこれ
酒と言えば白酒! 宴席需要でニーズ増へ
たかが発票、されどファーピャオ
春節映画からの岳飛ブームと聖地巡礼
ノーマスクで新年快楽!? 中国春節の珍プレー好プレー
深夜の配車2時間待ち、春節前ならではの事情とは
中国で旅行ブーム再燃か、海外渡航はそろりスタートへ
賑わい消えた師走の上海、配送バイクも不足気味
中国現地Now!政策緩和と感染急増、混乱する中国市民
中国現地Now!コロナ規制見直しも感染拡大を警戒する中国
中国現地Now!上海デモの最前線、市民の反応と後始末
中国現地Now!政策と実態に大きな矛盾、「中の人」から見た中国コロナ対策
中国現地Now!スマホで気軽にグルメ堪能、中国“ワイマイ”市場最前線
中国現地Now!生活に欠かせない中国の“スーパーアプリ”とは
中国現地Now!Go To 海南!Go To 免税!
中国現地Now!波に乗れない中国消費、逆風下で盛況の飲食店は?
中国現地Now!上海で「水騒動」勃発! パニック買いの背景とは……
中国現地Now!屋台経済が中国を救う? 上海で復活の兆し
中国現地Now!日系外食が苦戦、中国人の胃袋をつかむ戦いは続く
中国現地Now!「映える」火鍋料理、極上の牛肉麺
中国現地Now!円安の恩恵はいずこ? 中国人の海外旅行は夢のまた夢
中国現地Now!中国入国時の“ガチ隔離”を見てみよう
中国現地Now!猛暑と干ばつで電力不足、今年の夏はキツい!
中国現地Now!訪問先で隔離リスク、中国国内旅行は綱渡り状態
中国現地Now!新エネ車が快走中、550万台市場へ視界良好
中国現地Now!勝ち組と負け組で明暗、上海の外食産業の現在地
中国現地Now!上海はその後どうなった? “ポスト都市封鎖”のリアル
中国現地Now!ナイキとアディダスの牙城を崩す中国ブランド
中国現地Now!復権なるか、中国のシェア自転車最新事情

東洋証券株式会社 上海駐在員事務所 所長

奥山 要一郎

東洋証券株式会社 上海駐在員事務所 所長 上智大学外国語学部イスパニア語学科卒。通信社、コンサルティングファームを経て、2007年東洋証券入社。本社シニアストラテジストを務め、2015年より現職。中国現地で株式動向のウォッチや上場企業取材などを行い、中国株情報の発信・レポート執筆を手がける。

奥山 要一郎の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております