割引率は最低でも17%
中国でネット通販が盛り上がる時期がやってきました。一番有名なのは11月11日の「ダブルイレブン(双十一、独身の日)」ですが、もう一つは6月18日の「618商戦」です。前者はアリババ(Tモールやタオバオなど)が手掛けており、後者は京東(JD)が創立記念日に合わせて行う一大イベント。最近、スマホを見る頻度が高くなり、ネット通販関連の広告を多く見るようになった気がします。
アリババと京東が手掛けていると言いましたが、ネット通販の日は彼らだけの専売特許ではありません。ダブルイレブンの際にも京東はセールを行い、逆もまた然り。火付け役の両社だけでなく、蘇寧(スーニン)や新興のピンドゥオドゥオ(PDD)などの通販プラットフォームに加え、小米(シャオミ)や網易厳選などのブランド及びセレクトショップなども自身の公式オンラインショップで販促セールを行います。いわば「618」という掛け声(ムーブメント?)にうまく乗っかり、販売を拡大していく戦略です。
割引率は以前ほど大きくないと言われますが、それでもお得な買い物ができます。本家本元の京東は「299元購入で50元割引」を掲げています。単純計算で値引き率は約17%。このほか、店舗や商品ごとに様々な割引システムがあり、実際は定価の3~5割引きなどで購入できるケースも多々あります。
値引きシステムは、キャッシュバックではなく「いくら購入でいくら割引」と掲げているのがポイント。例えば250元の商品を購入カートに入れると、「あと49元買うと割引が受けられますよ」という類のメッセージが出てきます。こうなると買物意欲に火が付くのが人の性(私だけではないでしょう!)。もっとも、49元ちょうどの商品など簡単には見つからず、いくらか足が出てしまい、気が付くとあれもこれもと買ってしまうのがオチですが……。
ちなみに、アリババ系の天猫(Tモール)は「300元購入で50元割引」ですから、割引率は京東とほとんど同じです。私は夏に向けて炭酸水をケース買いしようと思い、スマホ上でこの2社のアプリを眺め、商品や価格を比べています。価格はほぼ一緒なのですが、なぜか「1元でも安く!」という気持ちが強くなってしまいます。
PDDの好調要因は?
さて、中国ではアリババ、京東にピンドゥオドゥオを加えた3社がネット通販の“御三家”として君臨しています。上場企業の売上高を比較可能な時期及び項目で比べるとこうなります。
◆京東集団(JDドットコム、09618)
22年12月期売上高:929,929百万元
※「商品収入」部門
◆アリババ集団(09988)
23年3月期売上高:582,731百万元
※「中国小売り」部門
◆ピンドゥオドゥオ(PDD)
22年12月期売上高:102,721百万元
※「ネットマーケティングサービス他」部門
一方、四半期ベースでの成長率を見ると、直近ではピンドゥオドゥオの一人勝ちの様相です。23年1~3月期の増収率(前年同期比)は、京東が4.3%減、アリババが2.7%減と不振だったのに比べ、ピンドゥオドゥオは49.7%増と高成長を遂げました。22年も四半期順に29.0%増、39.2%増、58.4%増、38.1%増でしたが、このハイペースを足元でも維持していると言えます。
同社の好調要因は様々ありますが、恐らく新型コロナ禍に伴う封鎖生活の影響が大きかったのだろうと思います。昨年の上海ロックダウンや各地の都市封鎖などでネット通販の注目度が高まりましたが、これまで使ったことがない人、あるいはソフトユーザーだった人が意外と“ハマる”ケースも伝えられました。特に、「ネット通販はタオバオ(アリババ系)か京東」と思っていた人が、ロックダウン時にピンドゥオドゥオの存在を知り、「あれ? すごく安い!」と感じた人も多いそうです。
かつては、偽物の多さや配送不備などでお世辞にも評価が高いとは言えなかったピンドゥオドゥオ。しかし、ここに来てサービス面の向上と市民の節約志向の高まりを受け、「格安商品の共同購入」を前面に出す点が注目されてきました。
中国人の知り合いは、生活用品(キッチン用品やバストイレタリーなど)は必ずピンドゥオドゥオで買っています。スナック菓子や飲み物などの軽食類も豊富なので、ついつい手を伸ばしてしまうということでした。もう一人の知り合いは、昨年までピンドゥオドゥオを使っていませんでしたが、私がヘビーユーザーであることに影響を受けたのか、最近は低価格の服を多く買っているということです。「こんな安いサイトがあったのか!」と感謝すらされました。
昨年、小売売上全体に占めるネット通販比率が27.2%まで高まった中国。各業界で「量より質」というキーワードが叫ばれて久しいですが、ここに来てデフレ懸念も台頭しており、「安さ重視」という点も見逃せないところです。