足元販売は前年比2倍
中国の新エネルギー車市場が絶好調です。2022年上半期(1~6月)の販売台数は260万台。前年同期比で115.6%増加しました。自動車市場全体は同6.6%減の1205万7000台なので、その好調ぶりが目立ちます。昨年は352万台を売り上げましたが、今年は約56%増の550万台に上る見込みです。
中国では新エネ車はEV(純電気自動車)、PHEV(プラグインハイブリッド車)、FCV(燃料電池車)の3種類に大別されます。EVが新エネ車(乗用車)販売の約8割を占めています。一方、日系メーカーが得意なHV(ハイブリッド車)はこのカテゴリーに入っていません。よって新エネ車の購入補助金の対象外となり、政策的な恩恵は受けられていないのが現状です。
中国政府は新車販売に占める新エネ車比率を、25年に20%、30年に40%、35年に50%まで高める目標を掲げています。この比率、昨年は13.4%で、目標達成にはまだ長い道のりがあると誰もが思っていました。ところが、22年上半期には21.6%まで上昇。まだ途中経過で参考程度ですが、25年に20%という目標を前倒しで達成したことになります。
新車販売の5台に1台が新エネ車という中国市場。保有台数ベースではまだ3%程度ですが、街で新エネ車を見かけるのはもう当たり前のことになってきました。深セン市では公共バスとタクシーのEV化率はすでに100%。タクシー乗り場にはBYD製の車がズラリ並んでいます。また、大気汚染が深刻な内陸部でも環境対策の観点からEV化が進んでいます。石炭生産地として知られる山西省の省都・太原もEVタクシーが多く走っています。
進む充電設備の拡充
充電インフラの整備も進んできました。今年5月時点で全国に140万基の公共充電パイルがあるということです(統計の取り方によって数値は前後します)。毎月、前年比50%増の勢いで増加しており、EV普及を後押ししています。
南部の海南省は、30年までに新エネ車比率を100%にするという野望を掲げています。リゾート地の海南島を「クリーンエネルギー島」にする考えです。現在、同省での自動車保有台数に占める新エネ車比率は8.3%(22年4月末時点)にすぎませんが、これからアクセルをふかしていくことでしょう。2年前に海南島に行った際、街の中心部からかなり離れた小さな通りに、EV用の充電パイルが多数設置された公共駐車場を見ることができました。インフラ面も整い始めているようです。
一方、EV販売店のスタッフからは、新エネ車での長距離移動は必ずしもお勧めしないという声も聞かれます。「ガス欠」ならぬ「電気切れ」という充電面の懸念があるということ。充電スポットが豊富な街中、あるいは短距離での「チョイ乗り」は問題なさそうですが、ロングドライブは事前の準備(充電計画など)が必要なようです。
いずれにせよ、政府の力強いバックアップで急成長を遂げている新エネ車市場。完成車メーカーのみならず、電池、電池部材など数多くの産業に恩恵がもたらされています。ガソリン車では日米欧の後塵を拝した中国ですが、新エネ車市場での飛躍が始まりつつあります。