「消費降級」とコスパ重視が追い風
4月23日、ティードリンクチェーンの「茶百道」(ChaPanda)を運営する四川百茶百道実業(02555)が香港市場にIPO上場を果たしました。茶飲料業界では、21年に上場した奈雪的茶控股(02150)に続く動きとして注目されています。しかしながら、取引初日の終値は公開価格比26.9%安の12.8香港ドル。場中では一時38.3%安になるなど散々なスタートとなってしまいました。相場全体の地合いは悪くなかったものの、もしかしたら賞味期限の偽装疑いで叩かれた一件が影響したのかもしれません。3月15日の「消費者権利デー」に合わせてテレビ放送された「315晩会」(企業の製品の品質やサービスの問題点を指摘する番組)で同社がやり玉に挙げられていたのです。ともあれ、今回の上場を通じてティードリンク市場への注目度がさらにアップしたことは間違いなさそうです。
中国の2023年のドリンクスタンド市場(中国語で「現製飲品」=カウンターや簡易店舗方式で提供される出来立て飲料品)は、前年比22.8%増の5172億元に上ったもようです。このうち、ティードリンクはちょうど半分の2588億元市場(同21.1%増)。22~28年までの複合年間成長率(CAGR)は18.3%と予想され、今後も安定推移が見込まれています。コーヒー市場の成長も著しいですが、市場の約50%を茶飲料が占める構図に変わりはないと見られます。
中国の「現製飲品」(出来立て飲料品)の1人当たり年間消費量は22年時点で18杯。米国の322杯、EU及び英国の302杯、日本の167杯を大きく下回ります。ただ、28年にはこの3倍の52杯まで増加する見通しもあります。
ティードリンク市場は、高価格帯(単価20元以上)、中価格帯(同10~20元)、低価格帯(同10元以下)に分類されます。高価格帯は、冒頭の「奈雪的茶」や「喜茶(HEYTEA)」などの“映える”ブランドが代表格。中価格帯では、長沙(湖南省)発祥の「茶顔悦色」、台湾発祥の「CoCo都可」などが挙げられます。そして低価格帯と言えば、2元ソフトクリームでも有名な「蜜雪冰城(MIXUE)」が筆頭格です。
CAGRを見ると、17~22年は高価格帯が51.7%と最も高かったものの、22~27年には14.9%に減速する見通し。一方、中価格帯は23.1%、低価格帯は22.3%と安定的に成長すると見られます。
消費降級(消費のダウングレード)やコスパ重視の機運が高まる中国市場では、消費者の財布の紐が固くなりつつあります。ある調査では、ティードリンク市場の1人当たり消費額は15元以下が全体の81%を占めています。デフレ経済の兆候が見られる中、これまで以上に低~中価格帯の茶飲料が存在感を増していくと思われます。
地方市場を攻めよ!
ティードリンク店の地域別売上高では地方中小都市の比率が高まっています。三線級以下の地方都市の 23年売上高は前年比31.4%増の962億元に上ったもようで、市場全体の成長率(26.1%増)を上回りました。22~28年のCAGRは24.6%と予想され、他の都市レベル(15~20%程度)より高くなっています。市場全体に占める比率は、23年の45.4%(推計)から28年には51.5%までじわり上昇する見通し。地方消費の伸びしろはまだ健在と言えるでしょう。
この地方市場で勢力を伸ばしているのが低~中価格帯のブランドです。蜜雪冰城が展開する3万2180店舗のうち、三線級以下の都市にある店が56.9%を占めています。中価格帯(大衆的)の「古茗(Good me)」の店舗は48%、「茶百道」は39%、「滬上阿姨(Auntea Jenny)」は49%が同エリアにあります。一方、奈雪的茶は一線級及び新一線級都市の比率が69.5%に上っており、大都市展開が中心です。
各社の22年及び23年(予想)の売上高を見ると、蜜雪冰城、古茗、滬上阿姨がいずれも前年比プラスなのに対し、奈雪的茶は22年にマイナス成長となりました。店舗展開戦略だけの影響ではないでしょうが、「地方都市&低価格注力組」の勢いが増していることがうかがえます。
今年に入り、茶百道に続き、蜜雪冰城、古茗、滬上阿姨の母体企業が香港上場を目指して仮目論見書を提出してきました。上場日程は未定ですが、今後のIPO市場の大きな話題になってくるかもしれません。