雨や雷での遅延は“お約束”
中国の国土は日本の約25倍の大きさを誇ります。それゆえ、出張や旅行の際は飛行機を使うことが多いのですが、夏場、特に雨が多い時期になると悩まされることが一つあります。そう、遅延です。空港で何時間も待たされるケースを何度も経験し、様々な出来事に遭遇してきました。
先日、河南省洛陽から上海へのフライトを利用した際のこと。洛陽はその日、結構な雨が降っていました。憂鬱な気持ちで空港に向かい、とりあえずチェックイン。早めに搭乗ロビーに行くと、折り返し便となる前のフライトが順調に到着したとの一報があり、ほっと胸をなでおろしました。とりあえず“乗る機体”はあります。
しかし、予定時刻になってもなかなか搭乗が始まりません。乗客の間で動揺の声が広がりました。その後、目的地である上海は大雨と雷という情報が入ってきました。間髪入れずアナウンス放送が流れ、「申し訳ございませんが、遅延のお知らせです……」といういつものフレーズが聞こえてきます。搭乗ロビーでは大きなため息がもれました。私の隣にいた人は「上海からの乗り継ぎに間に合わないかも……」と心配した顔でつぶやいていました。
中国は夏になると、雨や雷はもちろん、竜巻が発生したり雹が降ったりと荒れた天気になることがよくあります。その影響を受け、フライト遅延や欠航が頻繁に発生するのは夏の“お約束”です。
中国民用航空局によると、2022年のフライト平均遅延時間は4分で、前年より6分短くなったということです。5年前の17年は24分だったので、かなり改善したことになります。 ただ、感覚的にはかなり異なります。全体平均ではわずか4分の遅延かもしれませんが、遅れるときはとことん遅れるからです。2~3時間ほどの遅延を幾度となく経験しているため、このような公式発表は参考にも気休めにもなりません。
中国では飛行機の出発時間は「ドアが閉まった時」とされています。航空会社は記録上の遅延を避けるため、天候が悪くてもとりあえず乗客を乗せてドアを閉め、そのまま機内で長時間待たせるという荒業を時々行っていました(最近は少なくなりましたが……)。以前、搭乗したはいいものの、大雨の中で駐機場にとどまったままで、飛ばない機内で機内食を食べたこともありました。
怒れる乗客をなだめる対処法とは?
さて、天候の影響でフライトが遅れ、いつ出発するかも分からないまま搭乗ロビーに取り残された乗客たち。待ちぼうけを食らったイライラ感が募り、地上係員に鬼気迫る顔で文句ををぶちまける人も必ず出てきます。しかし、航空会社側も慣れたもの。乗客の怒りがピークに達しそうなとき、ワゴンでさっと食事が運ばれてきます。これがまた絶妙なタイミングなのです。
その気配を察した乗客たちは、それまでの怒りやイライラをあっという間に捨て去り、素直に列を作って弁当(配給品)をゲットします。その穏やかな顔と言ったらこの上ありません。怒り心頭だった人たちの表情はここまで変わるのでしょうか……。
弁当の定番と言えば、かつては「鶏排飯(鶏の骨付き肉のぶっかけ飯)」だったような気がします。私も何回か食べたことがあります。これにコーラ(もしくはスプライト)とバナナが付けば最高。みんな揃ってニコニコ弁当タイムと相成ります。
最近はしっかりした食事が提供されることもあります。重慶の空港で食べたのは、おかず5品ほどからなる弁当。シュウマイや野菜炒めに加え、重慶らしい辛い味付けの肉も付いており、お腹一杯になりました。一方、スナック菓子やミネラルウォーターだけの“ハズレ”も多いです。
冒頭の洛陽空港で提供されたのは、カップ麺とビスケット、それにエナジードリンクという微妙な組み合わせ。それでも配給コーナーに列ができ、カップ麺にお湯を注いで食べる光景が広がりました。搭乗ロビーには瞬く間に中華風の濃い味付けの匂いが漂いました。
時には航空会社からのお詫びとしてキャッシュバックがあることも見逃せません。数年前、山東省威海でおなじくフライト待ちぼうけを食らったときのこと。8時間待ってやっと離陸と相成ったのですが、搭乗前に乗客全員に一律200元(約4000円)が配られました。弁当と同じく、皆笑顔で現金給付コーナーに列をなします。もっとも、目的地に着いたのは深夜2時過ぎ。そのお金がタクシー代に消えたのは言うまでもありません。