駅の広告は白酒だらけ
新型コロナウイルスの感染が一段落し、久しぶりに訪れた中国の鉄道駅。増えていたのは旅行客や出張客だけではありませんでした。構内を見渡すと白酒(パイチュー/バイジウ)関連の広告がズラリ。いずれも派手で巨大で、見たくなくても目に入ってきます。酒需要が増える春節(旧正月)シーズンの名残だったのかもしれませんが、それにしてもたくさんあるものです。
元々、空港や駅などの公共施設では酒関連の広告が多い中国。広告規制がやや緩いせいかもしれませんが、とにかくお酒が目立ちます。ビールやワイン、紹興酒などを抑え、中国では酒と言えばやはり白酒。そこまで需要があるか不思議に思ってしまうほど、とにかく白酒ワールドが広がっています。
白酒は中国発祥の蒸留酒。アルコール度数は50度以上が多いですが、30~40度前後の低度酒も増えてきました。原料は穀物で、高粱(コーリャン)、トウモロコシ、小麦、もち米、うるち米、ジャガイモ、サツマイモなどが用いられます。おちょこのようなミニグラスで乾杯するのが定番。中国語で「干杯(ガンベイ)」と言いますが、文字通り「飲み干す」のが一応の礼儀及び習慣になっています(チビチビ飲むのは御法度です!)。
消費者の特徴は、「年齢層が若干高め」「男性が全体の75%」「国有企業や政府関係者が多い」などと言われます。確かに中年男性がグビりと飲み干している姿をよく見かけます。また、宴席や結婚式で飲まれることが多いのも特徴。大勢で飲み交わし、親睦や友情を深めるツールとして白酒は最適です。招待側は“メンツ”重視で高級酒を用意することもあります。“家飲み”は決して多くはないものの、白酒の本場の四川省や重慶市、貴州省では、スーパーやコンビニに大きな白酒売場があり、樽売りもしています。
延期された結婚式、これから復活
一方、近年は中国の白酒生産量が減っています。実は2022年まで6年連続で減産中。22年は前年比5.6%減の671万2000キロリットルで、16年実績の約半分に過ぎませんでした。この背景には、もちろん消費者の嗜好の変化が挙げられるのですが、業界で大手や高級酒への集約が進んでおり、その過渡期にある事情もあるようです。
白酒業界の主要5社の生産量はまずまずで、21年実績は16年比で17.4%増でした。この5社の生産量が業界全体に占める比率は、16年の4.7%から21年には10.4%まで上昇しています。確かに広告を見ても大手や高級タイプのものが目立ちます。白酒業界ではメーカーやブランドの選別及び淘汰が進んでいるようです。
ちなみに白酒主要5社は、貴州省の貴州茅台酒、四川省の宜賓五糧液と瀘州老窖(ろしゅうろうこう)、江蘇省の江蘇洋河酒廠、山西省の山西杏花村汾酒廠(フェンジウ)。いずれも中国の上海・深セン株式市場に上場している優良企業です。
さて、白酒業界は今年、復活の年になると言われています。ゼロコロナ政策の解除を受け、これまで控えられていた宴席や結婚式の増加が予想され、それに伴い白酒のニーズが膨らむと見られるからです。私も3月に中国人の結婚式に招待されており、恐らく贅沢なお酒が振る舞われることでしょう。まだまだ先ですが、夏にはもう一つの結婚式に参加予定です。いずれも昨年の予定が厳しいゼロコロナ政策によって延期されていました。この反動で今年は「リベンジ宴会」「リベンジ結婚式」が多く見られるとおもいます。久しぶりに「干杯!」の声が響き渡りそう。同時に、お酒を飲む準備と覚悟も必要になってきますが……。