中国現地Now!

中国現地Now!中国入国時の“ガチ隔離”を見てみよう

「14+7」「7+3」って何のこと?

 

日本をはじめ、世界各地で新型コロナウイルスの感染者が増えています。全数把握を行っていないところや、感染の「波」から見て最悪期を脱したかに見える地域もありますが、新規感染者が毎日出ていることに変わりはありません。この状況の中、多くの国・地域が共存論、いわゆる「ウィズ・コロナ」に向けて動いていますが、中国は頑なに「ゼロ・コロナ」政策を堅持しています。政策のキモである水際対策は「史上最も厳しい隔離措置」として知られ、中国入国者の高いハードルとなっています。

 

中国は新型コロナの感染拡大初期である2020年初頭から、国内の移動制限・行動規制と共に水際対策を始めていました。入国後の隔離措置は当初、感染が増えていた国・地域からの入国者のみが対象でしたが、同年3月下旬から全ての入国者に義務付けられました。一時認められていた自宅隔離もできなくなり、ホテルなどでの集中隔離に変更。基本的にはこの状況が今も続いています。

 

日本の隔離措置は、入国時検査で感染が確認されない限り、自宅などでの自主隔離が認められていました(現在では隔離はおろか検査そのものを行わないケースが増えていますが)。一方、中国は“ガチ隔離”。空港に到着し、所定のPCR検査、入国審査、荷物ピックアップなどを終えるとバスで隔離施設に強制護送されます。自由行動の余地は全くなく、もちろん逃れることもできません。私も数回経験していますが、バスに乗せられるたびに童謡「ドナドナ」が脳内再生されるほどです。どこに連れて行かれるのか、不安でいっぱいです……。

 

入国者の隔離期間は当初、最低でも14日間でした。地域によって異なり、北京のように21日間の隔離が課せられていたところもあります。上海の場合は14日間の集中隔離後、自宅での7日間の健康観察期間がありました。これを俗に「14+7」と呼びます。この7日間は外出可能ですが、公共交通機関の利用や人が密集した場所への訪問などは認められません。地域によっては「14+14」など独自ルールを設けている都市もあります。

 

隔離期間は今年6月末に短縮され、集中隔離7日間と自宅健康観察3日間の「7+3」となりました。短縮自体は悪くないニュースで、当時は「中国もいよいよゼロ・コロナ政策を見直しか」と報じるメディアもありました。しかし、集中隔離自体は継続しており、実感としてはピンときません。ホテルや施設の部屋からは一歩も出られず、ネットでの買い物制限も厳格なまま。レストランなどからの出前も基本的にNGです。強制護送という「ドナドナ状態」は続いているのです。


 

お楽しみは1日3回の“隔離メシ”

 

かくいう私も、この原稿を中国のとある都市の隔離先ホテルで書いています。部屋の環境はまずまずで、ネットがスムーズに繋がるだけマシな方。上海などでは、空港での隔離先の振り分けを“ホテルガチャ”とも呼びますが、ハズレを引いてしまった人からは不満の声もよく聞かれます。

 

隔離先では、1日3回の食事提供、午前と午後の検温、数日おきのPCR検査などタイムスケジュールが決まっており、比較的健全な生活を送ることができます。ただ、夕食提供時間が17時半なので、食後の夜が長く感じてしまいます。お酒の購入はできないので、左党の方にはややつらい生活かもしれません。

 

唯一の楽しみと言ってもいい“隔離メシ”ですが、都市やホテルによって差があるようです。時間になると部屋のドア前に弁当が置かれ、「今日は何かな?」とちょっとした期待をもって蓋を開きます。当たり外れは運と個人の好み次第。中華オンリーのところもあれば、かつ丼やカレーなどの日本食が用意されるところもあります。味は問題ないとモグモグ食べる人もいれば、「全く合わなかった」とこぼして“隔離ヤセ”する知人もいました。

 

隔離をめぐるネタやエピソードは尽きず、情報交換も盛んです。これから来る人の参考にもなるでしょう。もっとも、隔離なしで気軽に日中間を移動できる時が一日も早く来てほしいものです。

この連載の一覧
ティードリンク市場がアツい! 上場予備軍も続々
不動産市場にまつわるエトセトラ
アンケートから景況感を探る! 貯蓄志向は依然高め
「消費降級」で明暗、外食チェーンの激しい争い
何はなくともカップ麺、鉄道旅のマストアイテム
アジア最大の家電見本市、スマート化に注目
大学生にゲーム規制? 全人代の提議あれこれ
ジェットコースター相場、波乱の1月と2月
変わる中国新エネ車業界、テック系が続々進出
春節前の政策相場、底打ち機運の中国株
朝から「メンクイ」、好みの麺をご賞味あれ
“ポスト・コロナ”の中国、外国人の目にはどう映る?
2年連続で前年割れ、人口減社会に直面する中国
“コロナ前”の水準回復へ、中国旅行市場の現地温度感
「元旦快楽」で辰年スタート、2024年の中国はどうなる?
並ぶのも一苦労、中国ならではの行列事情
ネット通販の主役交代? 好調続くPDD
頼りになる「即時配送」、旅先でも気軽にデリバリー
中国人のリアルボイス、不動産や就職事情を聞いてみた
「有軌電車」でGO! 着々広がる中国の都市交通網
白酒値上げのカラクリ、マオタイの時価を探れ
火鍋を語ろう、中国発のナベトーーク!
スマホオーダーで気軽に一杯、中国コーヒー最新事情
交通規制は突然に、中国式厳戒態勢
中国に「デフレ」という言葉はない?
行楽シーズン到来! 中国のオススメ観光地を大紹介
大型連休がやって来る! 9億人が大移動
ライバル逆襲と使用禁止令、中国でiPhoneはどうなる?
政策後押しで復活なるか、中国の不動産最前線
「水問題」で非難一色の中国、日本バスケで思わぬ展開に?
アリババ&テンセント、進む人員削減とスリム化
イベント消費で経済を回せ、政府も積極支援中
デフレ懸念も何のその、ホテル料金が上昇中
街に活気戻り売上が回復中、中国外食産業の現在地
人口と婚姻数が減少中、中国の若者の人生観とは
空港着いたらライドシェア専用乗り場へGO!
待ちぼうけはつらいよ、夏場のフライトあるある
「貯蓄重視で投資は控え目」、中国人のお金はどこへ向かう?
家族連れで賑わう場面も、端午節のプチ旅行
今年も猛暑? 早くも節電の呼びかけ
「618商戦」がやって来る! ネット通販で買い物三昧
キーワードは「頭文字C」、注目される国有企業の行方
中国でコロナ感染再拡大、それでも市民の多くはノーマスク
中国の若年失業率は20%超、雇用確保が優先課題に
現金要らずの連休旅行、何でもスマホとキャッシュレス
大盛況の上海モーターショー、中国地場系の躍進目立つ
「スラムダンク」が中国でも大人気、初日興収18億円!
「ラストワンマイル」はアナログリレーで解決?
火鍋チェーンの「呷哺呷哺」、一人鍋で存在感
ドライヤー市場に新風来たる、Z世代に人気の新興ブランド
日中間の移動がスムーズに! 国際線の増便・復便進む
復活する消費市場、北京の街に賑わい戻る
復活中の結婚式ニーズ、動き始めたヒト・モノ・カネ
改札時間は15分ジャスト! 中国の鉄道事情あれこれ
酒と言えば白酒! 宴席需要でニーズ増へ
たかが発票、されどファーピャオ
春節映画からの岳飛ブームと聖地巡礼
ノーマスクで新年快楽!? 中国春節の珍プレー好プレー
深夜の配車2時間待ち、春節前ならではの事情とは
中国で旅行ブーム再燃か、海外渡航はそろりスタートへ
賑わい消えた師走の上海、配送バイクも不足気味
中国現地Now!政策緩和と感染急増、混乱する中国市民
中国現地Now!コロナ規制見直しも感染拡大を警戒する中国
中国現地Now!上海デモの最前線、市民の反応と後始末
中国現地Now!政策と実態に大きな矛盾、「中の人」から見た中国コロナ対策
中国現地Now!スマホで気軽にグルメ堪能、中国“ワイマイ”市場最前線
中国現地Now!生活に欠かせない中国の“スーパーアプリ”とは
中国現地Now!Go To 海南!Go To 免税!
中国現地Now!波に乗れない中国消費、逆風下で盛況の飲食店は?
中国現地Now!上海で「水騒動」勃発! パニック買いの背景とは……
中国現地Now!屋台経済が中国を救う? 上海で復活の兆し
中国現地Now!日系外食が苦戦、中国人の胃袋をつかむ戦いは続く
中国現地Now!「映える」火鍋料理、極上の牛肉麺
中国現地Now!円安の恩恵はいずこ? 中国人の海外旅行は夢のまた夢
中国現地Now!中国入国時の“ガチ隔離”を見てみよう
中国現地Now!猛暑と干ばつで電力不足、今年の夏はキツい!
中国現地Now!訪問先で隔離リスク、中国国内旅行は綱渡り状態
中国現地Now!新エネ車が快走中、550万台市場へ視界良好
中国現地Now!勝ち組と負け組で明暗、上海の外食産業の現在地
中国現地Now!上海はその後どうなった? “ポスト都市封鎖”のリアル
中国現地Now!ナイキとアディダスの牙城を崩す中国ブランド
中国現地Now!復権なるか、中国のシェア自転車最新事情

東洋証券株式会社 上海駐在員事務所 所長

奥山 要一郎

東洋証券株式会社 上海駐在員事務所 所長 上智大学外国語学部イスパニア語学科卒。通信社、コンサルティングファームを経て、2007年東洋証券入社。本社シニアストラテジストを務め、2015年より現職。中国現地で株式動向のウォッチや上場企業取材などを行い、中国株情報の発信・レポート執筆を手がける。

奥山 要一郎の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております