上海と北京で外食産業がマイナス成長
中国の今年上半期(1~6月期)の経済統計がほぼ出揃いました。各種報道でも伝えられているように、国内総生産(GDP)成長率は前年同期比5.0%増。政府が掲げる通年目標「5%前後」と一致しており、今のところは順調に推移しています。1~3月期の5.3%成長に対して4~6月期は4.7%成長とやや減速したのが気になりますが、目標達成に向けて下半期に様々なテコ入れが行われるでしょう。
経済成長を自治体別に見ると、内モンゴル自治区が6.2%、重慶市が6.1%、江蘇・湖北・甘粛の各省が5.8%などと全国の数字を上回っています。沿岸部ではすでに「経済大省(市)」となっているところが多く、成長は限定的。北京市が5.4%、上海市が4.8%だったほか、広東省は3.9%にとどまりました。
項目別に見ると、全国の社会消費財小売総額は前年同期比3.7%増でした。昨年上半期の7.2%増から大きくスローダウン。昨年はゼロコロナ政策撤廃後の最初の年で、リバウンド効果が大きく単純比較はできませんが、それでも今年の消費市場は波に乗り切れない感がします。
意外だったのは、上海や北京という大都市の消費が思わぬ不振に陥っている点です。上海は2.3%減、北京は0.3%減とマイナス成長。全国平均を下回るどころか、市場が縮小してしまいました。外食産業に絞ると、全国は7.9%増でしたが、上海は3.6%減、北京は3.5%減とこれまた不振です(上海は「ホテル・外食」という括り)。
あくまで上海のみですが、外食産業は必ずしも好調とは言えないものの、「悪くはない」「まあまあ」という実感があります。しかしながら、レストランごとの優劣がより鮮明になってきた印象も拭えません。人気店は行列が出来たり予約が満杯になるほどの盛況ぶりですが、一方で、いつ行っても閑古鳥が鳴いている店が増えている気がします。商業モールのレストラン街でも空きテナントがポツポツ見られます。以前は、ある店が閉店しても代わりの店がすぐに入居するという勢いでしたが、最近はそうでもありません。
また、一世を風靡した人気レストランの閉店も目立ちます。北京では「Opera BOMBANA」という高級イタリア料理店が今年4月に突然閉店しました。1人当たり消費額が1000元超の“バブリー”なレストランで、北京のミシュランガイドで一つ星の評価も受けていました。ただ、最近は資金繰りが厳しくなり、取引先から苦情が出るほど各種支払いに困っていたようです。
上海ではカジュアルイタリアレストラン「Osteria」の閉店が話題になりました。オイスター料理に定評があり、1人当たり消費額は500元程度でしたが、外食市場の低迷という波には抗えなかったよう。中華料理の「玉芝蘭」という店も営業を取り止めました。市中心部にあるプライベートキッチン的要素を備えたレストランで、2000元を超えるコースもあったようですが、ここにも大きな逆風が吹いています。
市民の普段の生活を見ても、節約志向の高まりを感じることが多くなりました。外食の回数を減らしたり、財布に優しいレストランを選んだり、様々な工夫をしているようです。正確な数字は知る由もないですが、最近は職場にお弁当を持ってくる人が増えた気がします。生活インフラの一つであるフードデリバリーでも、コストパフォーマンスが良い店の人気が高まっています。私も限定クーポンを活用して、「半額チャーハン」をオーダーすることがあります。「早い者勝ち!午前11時までの注文に限る」のような売り文句もあるため、10時過ぎには頭の片隅でランチ戦略を考えてしまうことすらあるのですが……。
安売店・割引セールを求めて
街を歩いていると安売店の存在感が大きくなっていることを感じます。先日訪れたのは、ドイツ発のディスカウントストアチェーン「ALDI」。野菜や果物、牛乳、焼き立てパンなどが比較的安価で買え、欧米系の客の姿も目立ちました。トイレタリー用品などの生活雑貨も安いです。思わず注目してしまったのは格安酒。なんと白酒(500mlタイプ)が9.9元、紹興酒(500mlタイプ)が5.9元で売っていました。よく見るとALDIのプライベートブランド。紹興酒までオリジナルか……と思ったものですが、中国現地では調理酒として使う場面が多いため、これくらい手軽かつ手頃なものがいいのかもしれません。ちなみに私が訪れた時、9.9元の白酒は完売で、棚は空っぽでした。
山崎製パンが展開するベーカリーは現地でも人気ですが、このたび、上海進出20周年を記念した割引セールを行いました。7月25日は全商品8.5折(15%OFF)、26日は同8.8折(12%OFF)。中国の知人はこれはチャンスとばかりに、会社が終わるとすぐに近くのベーカリーに向かいました。「1週間分のパンをゲットした!」と成果(収穫)をアピールされました……。
中国ではデフレ懸念が高まっていると言われ久しいです。これをどう捉えるかは統計の見方によって様々な意見がありますが、少なくとも市民の間で節約志向が高まっていることは事実でしょう。商店やレストランも、新しい消費スタイルに対応した経営が迫られており、競争がますます激しくなっていきそうです。