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キーワードは「頭文字C」、注目される国有企業の行方

市場でよく聞かれる「中字頭」とは


中国経済の発展や企業の成長を見る際、近年はテック系を中心とする民間企業、半導体やAIなどのハイテク企業が注目されてきました。ただ、各種規制や法改正、米中対立など様々な要因が重なり、ここ3年ほどは民間部門の勢いが削がれ、逆に国有企業が重視される傾向にあるのも事実。いわゆる「国進民退」という流れです。経済の現場で何が起きているのでしょうか。 


最近、中国株式市場では「中字頭」というキーワードが話題になっています。今年春先以降、ニュースなどでよく見かけるようになった気がします。


「中字頭」は一般的に、社名に「中国」「中」を冠する国有企業を指します。中国銀行、中国工商銀行、中国人寿保険などの金融株のほか、中国石油天然気(ペトロチャイナ)、中国神華能源、中国建築などオールドエコノミー銘柄が多くなっています。「比較的高い配当利回り」「安定した業績」「割安なバリュエーション」などが特徴となります。


これに類似する「中特估」(ちゅうとくか)という銘柄群も注目されています。これは中国語の「中国特色估値体系」の略で、「中国の特色あるバリュエーション体系」とでも訳されます。中国証券監督管理委員会(CSRC)の易会満主席が22年11月に行われた講演内で提起した概念。「中字頭」と同じくその内実は大型国有企業群とされますが、定義は必ずしもはっきりとしていません。


情報ベンダーの同花順が算出する「中字頭」指数(A株銘柄で構成)は昨年後半から徐々に上向きになり、騰勢を強めています。これまでは上海総合指数と同じような値動きでしたが、直近では大きくアウトパフォームしています。新型コロナ禍の中ではデジタル経済やスマート社会などが注目され、新興企業株が多い深セン市場が賑わいましたが、ここに来てハイテクやAI、ITセクターの買いが一巡し、投資資金がディフェンシブセクターに回帰しつつあるとも見られます。



「量から質へ」の移行進むか


さて、証券会社主催の投資フォーラムでも、「中字頭」あるいは「中特估」を扱う場面が増えてきました。6月1日に招商証券が開催したフォーラムでは、冒頭のメインテーマが「中特估」でした。国有資産監督管理委員会(国資委)の元幹部による基調講演に続き、大手国有企業や投資ファンドの幹部、証券会社のアナリストなどが国有企業の現状分析などを行いました。様々な視点が披露されましたが、大きな方向性は国有企業改革の延長線上にあるようです。


国有企業改革という投資テーマはこれまでにも見られましたが、今回はより中長期的に続くとの見方もありました。これは、中国共産党中央委員会の改革深化委員会を中心に進められてきた「国有企業改革 3 カ年行動計画(2020~2022 年)」が一段落したこととも関係がありそうです。今年1月31日に開かれた総括会議では、同計画の主な目標・任務はすでに達成したとされています。


達成内容は、やや概念的で説明が難しいですが、「国有企業における党の指導と企業管理の統一が力強く推進された」「企業などの市場主体としての地位が確保された」「中央企業のスリム化が秩序よく推進された」とでもなります。かなり意訳的かつ好意的に捉えれば、「内部体制の刷新や管理強化が進み、より稼げる企業体質に変貌した」と言えるでしょう。国資委による国有企業の評価体系が量(純利益)から質(ROE=自己資本利益率)に変更されるとの話も聞かれました。


いずれにせよ、国有企業の存在感は中国経済全体、さらに株式市場においても高まっていくことでしょう。キーワードは「頭文字C」。もちろんChinaの「C」です。市場では「困った時の国有企業株」と言われることもありますが、今後も投資テーマの一つとしてウォッチしていきたいです。


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東洋証券株式会社 上海駐在員事務所 所長

奥山 要一郎

東洋証券株式会社 上海駐在員事務所 所長 上智大学外国語学部イスパニア語学科卒。通信社、コンサルティングファームを経て、2007年東洋証券入社。本社シニアストラテジストを務め、2015年より現職。中国現地で株式動向のウォッチや上場企業取材などを行い、中国株情報の発信・レポート執筆を手がける。

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