世界最大級の免税店がオープン
10月28日に海南省海口に世界最大級の免税モールがオープンしました。その名も「海口国際免税城」。巨大宇宙船のような建物は地上4階地下1階の構造で、売場面積は東京ドーム4個分の広さを誇ります。運営母体は、上海及び香港市場に上場する中国旅遊集団中免。開業初日は4万4000人の買物客で賑わい、売上高は6000万元(約12億円)を超えたそうです。私も入場を待つ長蛇の列に並び、現地の熱気に触れてきました。
中国最南端に位置する海南省の海南島は「中国のハワイ」と呼ばれ、リゾート地として高い知名度を誇ります。夏場はもちろん、春節前後にも“避寒旅行”と称して多くの観光客が訪れます。その中心は省都・海口や南部の三亜です。
この島では2011年から離島免税政策が行われています。その名の通り「海南島を離れる観光客に対して関税を免除する」というもの。中国現地の市民は海外旅行に行かずとも海南島で免税ショッピングを楽しめるのです。
実は政策開始当初はそれほど盛り上がっていませんでした。にわかに注目を集めたのはコロナ禍真っ只中の2020年。海外旅行がほぼゼロになり、中国人の免税品購入もほぼ途絶えましたが、その代替策として海南島への旅行&ショッピングニーズが高まったのです。この年の7月に免税品購入額が1人当たり年間3万元から10万元まで引き上げられたことも追い風になりました。1年間で約200万円の購入枠となります。スマートフォンや酒なども新たに免税対象に組み入れられました。
私は20年11月に海南島を視察したのですが、全国各地から観光客が訪れ、免税品をまさに買い漁っている光景に圧倒されたことを覚えています。当時は三亜の「三亜国際免税城」(東京ドームの約2.6倍の規模)が中心で、同島の免税消費の約75%がここに集中。海岸沿いに位置し、高級ホテルも近くにあるため、リゾート気分でショッピングを楽しむ老若男女で溢れかえっていました。21年の離島免税の売上規模は前年比80%増の495億元まで膨らんでいます。
逆風はコロナ、本格回復はこれから
ところが、今年に入ってこの流れが一変しています。主因は、3月頃から各地で頻発した新型コロナの感染拡大に伴う都市封鎖(ロックダウン)。全国的に市民の行動規制や移動自粛が広まり、海南島の観光客も伸び悩みました。また、海南島の中でも8月に三亜が都市封鎖となり、海口では期間限定のプチロックダウンが行われました。免税品販売額はピーク時には月間50億元以上に上るほどでしたが、今年8月と9月はそれぞれ10億元前後にとどまりました。
冒頭の海口国際免税城は、本来は9月下旬、国慶節連休の直前にオープン予定でしたが、コロナの影響で1カ月延期していました。この逆風下で開業を迎えたわけです。実際に現地を訪れるまでは、正直なところ「それほど盛り上がっていないだろうなぁ」と思っていましたが、蓋を開けてみると初日から大入り状態。地元住民の見物(ウィンドーショッピング)も多かったものの、高級ブランド店には長蛇の列もできており、久しぶりに中国の消費パワーを目の当たりにしました。
もっとも、現実はまだ厳しいです。海口には海口国際免税城に加え、郊外のアウトレットモール型や市内モール内及び空港内などに免税店が4カ所ありますが、いずれも閑古鳥が鳴くような閑散ぶりでした。店内には買物客が私1人だけで、スタッフの方が多いケースばかり。最後に立ち寄った空港免税店は、2年前は買物客で大いに賑わっていたものですが、今回の視察時はシーンとしていました。一部店舗縮小や閉店も見られ、コロナの影響はまだ続いているようです。
コロナによる移動規制などが少しでも緩和されれば消費ニーズは戻ってくると思われます。その日がいつになるかはまだ分かりませんが、とりあえずは来年1月の春節(旧正月)が一つのポイントになりそうです。