中国現地Now!

2年連続で前年割れ、人口減社会に直面する中国

「人口世界一」の座をインドに譲る


1月17日に公表された中国のマクロ統計では、2023年の国内総生産(GDP)は前年比5.2%増となり、当初目標の「5%前後」を達成しました。このほか各種経済データが発表されましたが、その中でも人口動態が注目されています。昨年7月の当コーナーでも同じトピックを扱いましたが、人口や出生者数などのデータをアップデートしながら中国の行く末を見ていきたいと思います。


中国国家統計局によると、中国の23年末の総人口は14億967万人でした。前年比では208万人の減少。これで2年連続での人口減となります。22年は85万人減だったので、減少数は拡大しました。総人口でもインド(14億2500万人)に抜かれ、「世界一の人口大国」の座を明け渡しています。


中国の人口は05年に13億人、17年に14億人を突破し、ここ20年間で1億2000万人以上増えてきました。ただ、少子化と共に10年ほど前から人口減少への懸念が出ていたのも事実。そして、ここに来て2年連続での減少です。今後、再び増加に転じることはやや難しいかもしれません。


「中国人口予測報告2023版」(23年2月)には、中国の人口が30年に13億7399万人、50年に12億3034万人、70年に9億7605万人、そして2100年には6億2524万人まで減少するとの予測があります(元データは育カ人口研究智庫)。これらはいずれも中位推計ですが、低位推計では2100年になんと4億7940万人……という衝撃的な数字もありました。ちなみに、同じ2100年では、インドの人口は約14億5000万人、米国は約4億3000万人という予測があります。


中国の人口減少が続く根拠の一つが深刻な少子化です。23年の出生数は902万人で、前年比54万人の減少。これで7年連続の前年割れです。16年は1883万人でしたが、わずか7年で新生児が半減してしまいました。これは素人目にも由々しき事態ということが分かります。


少子化の背景には、「子育てよりも個人の自由を重視する」というライフスタイルの変化、医療費や教育費の高騰など様々な要因があるとされます。若者の間からは「子育てはコスパが良くない」との声も聞かれるほどです。中国の21年の合計特殊出生率(15歳から49歳までの女性の年齢別出生率の合計)は中国全体では1.09ですが、他国・地域と同じように都市部で低くなっています。上海は0.7とされ、東京の1.04(日本全国で最も低い値)を大幅に下回っているようです(いずれも22年)。



婚姻数は9年で半減


他のデータも使いながらさらに分析を進めてみます。


なぜ出生数が少ないのでしょうか。前述のようにライフスタイルの変化によるものが大きいと思われますが、それは婚姻数の減少にも現れています。中国の22年の婚姻数は683万3000組で、前年から10.5%減少しました。直近ピークだった13年の1346万9000組からほぼ半減です。23年のデータはまだ出揃っていませんが、1~9月までで569万組に上っていたので、もしかしたら前年の683万組を上回ったかも……。これは明るいニュースになるでしょうか。


若者の間で結婚の動機や意欲の減退が広がっていることを現地でも感じます。これまでの分析と変わりませんが、両親や周りの大人が、子育てやマンション購入(多額のローン返済)、果ては不仲や離婚などで苦労している姿を見て、将来の結婚生活に大きな期待を持てない人も増えているよう。異性の友人と老いるまで一緒に仲良く暮らすことで満足という人もいるほどです。


そして高齢化も進展しています。中国の高齢化率(65歳以上の人口割合)は14年に10%を超え、22年は14.9%まで上昇しました。そして23年は15%を突破して15.4%に上っています。ちなみに日本は29.1%です(23年)。


一般的に、この比率が7%を超えると高齢化社会、14%超で高齢社会、21%超で超高齢社会とされています。これに基づくと、中国はすでに高齢社会に入ったことになります。前述の「中国人口予測報告2023版」によると、この数字は低く見積もっても32年に20%を超えるそう。50年には32.54%で、人口ベースで3億8200万人に増加するとされます。その後も60年に40.17%、78年に50.39%まで高まる予想。ここまで来ると「2人に1人は65歳以上」という想像すらできない高齢化社会となってしまいます。


人口減少と少子高齢化――。中国が抱える将来の懸念が、ここに来て一気に広く意識されてきた形です。この流れを変えるのは困難ですし、恐らく変わらないでしょう。これらのデータや現状を踏まえ、我々も中国への見方や既成概念を様々な意味で調整していく必要があるでしょう。


ただ、今年は出生数の増加を期待できるかもしれません。なぜなら、辰年だから! 「辰年生まれの子は大成する」との伝統的な考え方もあり、それにあやかろうとするカップルが増えるかも……というロジック。果たしてどうなるでしょうか。


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東洋証券株式会社 上海駐在員事務所 所長

奥山 要一郎

東洋証券株式会社 上海駐在員事務所 所長 上智大学外国語学部イスパニア語学科卒。通信社、コンサルティングファームを経て、2007年東洋証券入社。本社シニアストラテジストを務め、2015年より現職。中国現地で株式動向のウォッチや上場企業取材などを行い、中国株情報の発信・レポート執筆を手がける。

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