地下鉄乗客は半分以下に
2022年の師走。上海の街から人の姿が消えています。12月中旬頃から賑わいが徐々に失われ、ガラガラの商業施設やレストランが目立ってきました。地下鉄の乗客は急減し、車の量も減っています。スーパーでの買い物客は見られますが、肝心の野菜や肉の多くは売り切れ状態。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、市民が外出を避けているのです。「ゼロコロナ政策を行わなくても各自の自粛で行動規制ができるではないか」という皮肉の声も聞かれます。
上海の地下鉄の乗客数推移を見てみましょう。路線が増えているため単純比較はできませんが、“コロナ前”の平日は概ね1000万人程度でした。今年は都市封鎖(ロックダウン)が誤算でしたが、その後は800万人から900万人ほどまで回復しています。12月12日も975万3000人に上っていました。ただ、その後に右肩下がりとなり、同16日には688万8000人まで減りました。
19日からの週は、19日が474万7000人(前週比で51.3%減)、20日が405万7000人(同55.9%減)、21日が346万6000人(同59.1%減)、22日が294万7000人(同62.2%減)といった具合です。前の週に比べて乗客が5~6割減っています。朝夕のラッシュ時でも余裕で座れる状態でした。感染者の自宅隔離・療養の増加、各企業のリモートワーク推進、感染を避けた外出控えなどが背景にあります。
上海市の公式発表では1日当たりの感染者数は数十人から100人程度ですが、実態とかなりかけ離れているのは明白です。ビッグデータによる推計値は、毎日数十万人以上、多いときは100万人以上。陽性報告義務も実質的になくなっており、セルフ抗原検査で陽性が出た場合は自主隔離をするというのが一般的です。隔離施設などに強制移送されていた先月までとは全く異なる世界になりました。
ネットスーパーの配送は5時間遅れ
在宅生活がメインになる中、頼りになるのはフードデリバリーやネットスーパーですが、こちらも一筋縄ではいきません。配送スタッフの多くが新型コロナに感染してしまい、配送力が格段にダウンしているのです。美団(メイトゥアン)や餓了麼(ウーラマ)などの出前アプリを経由して店に注文できても、肝心の配送バイクが捕まらない(アレンジされない)ことも起きています。私も先日、アプリ上でオーダーに成功し、安心して届くのを待っていましたが、1時間近く経っても何の音沙汰もありませんでした。そうこうしているうちに店から直接、電話がかかってきました。「すいません。配送スタッフが手配できないようでして……。注文キャンセルをお願いできますか」とのこと。いやはや、どこも大変なようです。私の知り合いの中には、注文品が届くまで3時間以上かかったという人もいました。危うくランチが夕食になってしまうところだったとボヤいていましたが、これも致し方ないかもしれません。
アリババ系のネットスーパー、盒馬鮮生(フーマー)も配送面で苦戦を強いられています。12月17日に私が購入した品は予定時刻からおよそ5時間遅れて届きました。その後も早い者勝ちで配送枠が埋まってしまう事態が続出しています。今では、6時、11時30分、16時30分の3回に注文開始時間を分け、それぞれの配送枠を設けて対処しているよう。私は早起きして6時スタートの買い物タイムに参戦していますが、それでも客が殺到して15分ほどで配送上限に達してしまうため、まさに奪い合いの状態です。フーマーは実店舗での買い物を呼び掛けていますが、品不足のため欲しいものを買えるとは限らないようです。
さて、日本でも伝えられているように、中国では日本製の風邪薬に注目が集まっています。鎮痛薬の「イブ」や風邪薬の「パブロン」などを「神薬」として取り上げるネットの声もあり、元々あった人気がさらに上昇しています。私も中国の知人から「持っていたら分けて下さい」「日本で注文して送ってくれない?」と求められました。即効性や体に優しい成分が入っていることなどが安心感を増しているよう。決して中国製の薬が劣っているわけではないと思いますが、“爆買い”で日本製品の良さに目覚めた中国人ならではの行動のようです。