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中国現地Now!政策と実態に大きな矛盾、「中の人」から見た中国コロナ対策

4週間で12倍、コロナ感染急拡大


中国で新型コロナの感染が再拡大しています。11月24日には全国で3万2695人の新規感染者が確認されました。これは1日当たりで過去最高の数字。10月31日は2719人でしたので、4週間ほどで約12倍に増えたことになります。日本と同じく、オミクロン株が猛威を振るっています。


中国政府は11月11日にいわゆるゼロコロナ政策の一部緩和を発表しました。濃厚接触者や海外からの入境者の隔離期間を10日間から8日間に短縮し、コロナ感染の二次接触者の判定を取り止めることなどが決まっています。ただ、現地の感覚からすると、これを「緩和」と呼ぶのは違和感があります。日本では「ゼロ政策解除に道筋」などの論も出ているようですが、今回の政策はあくまで「調整」レベル。しかも「一部調整」程度に感じています。陽性でなくても濃厚接触者というだけで隔離施設に強制連行という現実は少しも変わっていないからです。


皮肉なことに、11月11日の政府発表から約2週間で感染者数は約3倍に拡大してしまいました。今回の感染拡大の特徴は全国に面で広がっていることです。今年4月13日に新規感染者数が2万9317人(これまでの最高記録)に上ったことがありましたが、このうち94.5%はロックダウン真っ只中の上海に集中していました。ただ、直近の感染者は広東省、重慶市、河北省、北京市、四川省など大都市から地方都市まで至る所で確認されています。中国政府は、駅や空港、高速道路出口などでのPCR検査を徹底し、省(及び市・街)を跨ぐ移動の際の感染者捕捉を強化中です。


「封城」と「第●波」はNGワード


 


さて、中国ではメディアなどで「ロックダウン(都市封鎖)」(中国語では「封城」)という言葉が使われなくなりました。今年4月と5月の上海ロックダウンの際は再三用いられていましたが、言葉の響きがネガティブに捉えられるのを恐れてでしょうか、内部で「禁句令」が出ているのかもしれません。同様に、日本などでよく聞くコロナの「第●波」という言葉も中国では全く聞きません。これも、「第何波まで続くのだろうか」という市民の恐怖や懸念を煽らないためなのでしょうか。ただ、感染の統計や推移を見る上で参考になる表現がなかなか出てこないので、全体の流れがよく分からないというデメリットもあります。


現地で重視されているのは「社会面」という言葉です。市中感染と言い換えられるでしょう。感染者数の増加は仕方ないとして、まずは市中感染率を下げることに重きが置かれています。中国のゼロコロナ政策の根幹は「早期発見・早期隔離」に尽き、濃厚接触者など疑わしき者は即隔離。その隔離内での感染確認は市中感染にはカウントされません。よって市中感染率は低下し、感染拡大が一定程度防げるというロジックです。


11月下旬時点で事実上のロックダウン下にある重慶市では、同月上旬の市中感染率が60%超に上ったことがありました。ただ、直近では10%を切る水準まで低下。隔離を進めて感染予備軍を閉じ込めていったのが功を奏したとも言えます。これが「隔離=正義」とされる所以です。ただ、前述のように感染していなくても隔離の憂き目に遭うことは変わりません。


中国のコロナ対策の現実は、海外からはなかなか見えてこないのが実情です。私は中国に住む「中の人」として、できるだけフラットに情報を発信していますが、理解されないことも多くあります。それは仕方ありません。世界は共存論に動いているのに、中国はそれとは逆の道をひたすら走っているのですから。「中国はまだゼロ政策を続けているのですか?」。これは常に聞かれる質問です。答えは一つ。「はい。そうなんです」……。


前述のような政策の一部調整が公表された後、私の心の中には「もしかして様々なことが前進するかも」という淡い期待が浮かびました。しかし、数日後、私の住むマンションが突然、48時間の時限ロックダウンと相成りました。そのワケは、住人の中にコロナの濃厚接触者が1人確認されたから。「いやいや、政策と違うじゃないか……」。このようなことを言っても後の祭り。大きな覚悟と小さな希望を持って暮らしていくのが関の山のようです。


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東洋証券株式会社 上海駐在員事務所 所長

奥山 要一郎

東洋証券株式会社 上海駐在員事務所 所長 上智大学外国語学部イスパニア語学科卒。通信社、コンサルティングファームを経て、2007年東洋証券入社。本社シニアストラテジストを務め、2015年より現職。中国現地で株式動向のウォッチや上場企業取材などを行い、中国株情報の発信・レポート執筆を手がける。

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