中国現地Now!

空港着いたらライドシェア専用乗り場へGO!

直接電話でピックアップ場所を微調整?


中国の国内出張で飛行機に乗り、目的地の空港に着いた後、真っ先にやることがあります。それは、スマホを開き、配車(ライドシェア)のアプリを立ち上げること。車を呼ぶのはたやすいですが、大事なのはピックアップ場所です。到着ロビー前、出発ロビー階、地下駐車場、タクシー乗り場の片隅……などいろいろあります。これをチェックしてから車を予約しないと乗車場所で迷ってしまいます。広い空港では移動も大変なので、効率よくスマートに車と落ち合いたいものです。


先日訪れた青島。2021年に開港したばかりの新空港「青島膠東国際空港」に降り立ちました。例のごとくスマホを立ち上げようとしましたが、その前に「網約車はこちら」という看板が目に入りました。網約車、すなわちネット予約車(=ライドシェア)専用の乗り場があるのです。タクシーやバスとはもちろん別のところで、駐車場最上階の一角にありました。


中国のライドシェアはよく言えばカジュアル、悪く言えば適当です。私が初めて使った2015年のこと。ビルの入り口で予約したのですが、ドライバーから電話が入り「ごめん。そこまで行けないや。ちょっと歩いて、●●路まで出てきてくれる?」とのこと。軽くはない荷物を持ちながら通りに出て、なんとかたどり着きました。


このような電話での微調整は時々経験します。互いに駐車しやすい・乗りやすい場所を提示しながら、“落としどころ”を探ります。もちろん、地図上で乗り場がはっきりしている時は特別なコミュニケーションも不要で、車がスッと来てくれますが、電話相談も結構多いのが私の印象です(フランクな雰囲気が漂う地方中小都市に行くことが多いからなのかもしれませんが……)。


かつての深セン空港。ターミナルビル出発階の道路は大混雑でした。これから旅に出る客を乗せて到着する自家用車やハイヤー、タクシー、そしてバス、さらには逆に到着客をピックアップする車など。なぜか到着階ではなく出発階に車が集中していた時期がありました。車がひっきりなしに来ては停まり、また出発していくカオス的な3車線ほどの道。予約したライドシェアの車と落ち合うのは困難を極めました。ドライバーに電話して「もうすぐもうすぐ!」「ナンバープレートを見逃さないで」「こっちこっち!」などと時折ジェスチャーも交えながら話します(もちろん中国語です)。車に乗る、いや探すだけで疲れてしまいました。


ただ、2016年に専用乗り場ができてから、その様子は一変。車さえ予約できれば、大きな混乱もなくスムーズにピックアップと相成ります。このようなシステムは各地の空港のみならず鉄道駅でも見かけるようになりました。


 


4億人超が利用


成長著しい中国のライドシェア業界。すでに生活シーンの一部になり、成熟期入りしたとも言えそうです。


ライドシェア産業に従事するドライバーは全国で2000万人とも3000万人とも言われます。一方、CNNIC(中国インターネット情報センター)によると、22年末時点でのユーザー数は4億3708万人。ネットユーザー全体の40.9%がライドシェアを利用しています。業界最大手はもちろん滴滴出行(DiDi)で、シェアは80~90%とされています。


ドライバーは、DiDiなどのプラットフォーム企業と専属契約する(労働契約を結ぶなど正式な雇用関係にある)人もいますが、大多数は乗客とのマッチングのためにアプリを利用するだけです。ある意味、フリーターのようにドライバー稼業に勤しむ人や、空いた時間を利用して小遣い稼ぎ感覚で働く人、はたまた定年後の仕事にする人もいらっしゃいます。以前利用した車のドライバーは50代の女性。「年金の足しにしようと思ってDiDiを始めたの」と屈託なく笑っていました。


先日、地方都市で乗ったライドシェアもなかなか奇妙なものでした。予約した車に乗り込むと、男性ドライバーの横の助手席には女性が座っていました。「あれ?乗り合いタイプを頼んだかな……?」と思いながら車は進みましたが、どうやら車内の雰囲気からその2人は夫婦かカップルのようです。週末の外出やデートの途中で、ライドシェアによる小遣い稼ぎをしていたのでしょうか。女性の方が若干不機嫌だったのが気になりましたが……。


ちなみにドライバーのお財布事情を少々。当然ながら、1日の稼ぎが全て自分のものになるわけではなく、プラットフォーム企業に使用料を取られ(企業などにもよりますが、稼ぎの20~30%前後が相場らしいです)、ガソリン代も自前。働けば働くほど車にガタがきて、メンテナンス代もかさんでしまうとのこと。例えば、1日500元を稼げば(500元は多い方です)、1カ月毎日働いて1万5000元。ここから使用料やガソリン代などを引くと、手元に残るのは6000元ほど。実質的な手取り額は稼ぎ全体の40%程度まで減ってしまうらしいです。さらに自分で各種保険料などを払うとなれば……。ライドシェアもなかなか厳しいようです。


この連載の一覧
不動産価格は下落見込み、中銀アンケートから市況を読む
大卒者の就職率は55.5%、厳しさ続く雇用市場
外食各社の業績低迷、価格に敏感な一般市民
プリペイドにはご用心、突然の閉店で泣き寝入りも
進む少子高齢化と人口減少、三中全会での対策は?
中国で高まる節約志向、大都市でも消費不振
ホントに静か? 中国の「クワイエット・カー」に乗ってみた
「中国式」で独自に発展中、ネット配車最前線
中国人はアリババ株を買えないの?
マオタイ価格が急落、株価も連れ安でプチ混乱
便利な出張サービス、「ネット+リアル」で進化中
住宅在庫の消化は進む? あの手この手で業界支援
観光業を支えるレッドツーリズム
「デジタル+アナログ」で発展する中国スマホ社会
中国はこれから卒業シーズン、1179万人が就職市場へ
ティードリンク市場がアツい! 上場予備軍も続々
不動産市場にまつわるエトセトラ
アンケートから景況感を探る! 貯蓄志向は依然高め
「消費降級」で明暗、外食チェーンの激しい争い
何はなくともカップ麺、鉄道旅のマストアイテム
アジア最大の家電見本市、スマート化に注目
大学生にゲーム規制? 全人代の提議あれこれ
ジェットコースター相場、波乱の1月と2月
変わる中国新エネ車業界、テック系が続々進出
春節前の政策相場、底打ち機運の中国株
朝から「メンクイ」、好みの麺をご賞味あれ
“ポスト・コロナ”の中国、外国人の目にはどう映る?
2年連続で前年割れ、人口減社会に直面する中国
“コロナ前”の水準回復へ、中国旅行市場の現地温度感
「元旦快楽」で辰年スタート、2024年の中国はどうなる?
並ぶのも一苦労、中国ならではの行列事情
ネット通販の主役交代? 好調続くPDD
頼りになる「即時配送」、旅先でも気軽にデリバリー
中国人のリアルボイス、不動産や就職事情を聞いてみた
「有軌電車」でGO! 着々広がる中国の都市交通網
白酒値上げのカラクリ、マオタイの時価を探れ
火鍋を語ろう、中国発のナベトーーク!
スマホオーダーで気軽に一杯、中国コーヒー最新事情
交通規制は突然に、中国式厳戒態勢
中国に「デフレ」という言葉はない?
行楽シーズン到来! 中国のオススメ観光地を大紹介
大型連休がやって来る! 9億人が大移動
ライバル逆襲と使用禁止令、中国でiPhoneはどうなる?
政策後押しで復活なるか、中国の不動産最前線
「水問題」で非難一色の中国、日本バスケで思わぬ展開に?
アリババ&テンセント、進む人員削減とスリム化
イベント消費で経済を回せ、政府も積極支援中
デフレ懸念も何のその、ホテル料金が上昇中
街に活気戻り売上が回復中、中国外食産業の現在地
人口と婚姻数が減少中、中国の若者の人生観とは
空港着いたらライドシェア専用乗り場へGO!
待ちぼうけはつらいよ、夏場のフライトあるある
「貯蓄重視で投資は控え目」、中国人のお金はどこへ向かう?
家族連れで賑わう場面も、端午節のプチ旅行
今年も猛暑? 早くも節電の呼びかけ
「618商戦」がやって来る! ネット通販で買い物三昧
キーワードは「頭文字C」、注目される国有企業の行方
中国でコロナ感染再拡大、それでも市民の多くはノーマスク
中国の若年失業率は20%超、雇用確保が優先課題に
現金要らずの連休旅行、何でもスマホとキャッシュレス
大盛況の上海モーターショー、中国地場系の躍進目立つ
「スラムダンク」が中国でも大人気、初日興収18億円!
「ラストワンマイル」はアナログリレーで解決?
火鍋チェーンの「呷哺呷哺」、一人鍋で存在感
ドライヤー市場に新風来たる、Z世代に人気の新興ブランド
日中間の移動がスムーズに! 国際線の増便・復便進む
復活する消費市場、北京の街に賑わい戻る
復活中の結婚式ニーズ、動き始めたヒト・モノ・カネ
改札時間は15分ジャスト! 中国の鉄道事情あれこれ
酒と言えば白酒! 宴席需要でニーズ増へ
たかが発票、されどファーピャオ
春節映画からの岳飛ブームと聖地巡礼
ノーマスクで新年快楽!? 中国春節の珍プレー好プレー
深夜の配車2時間待ち、春節前ならではの事情とは
中国で旅行ブーム再燃か、海外渡航はそろりスタートへ
賑わい消えた師走の上海、配送バイクも不足気味
中国現地Now!政策緩和と感染急増、混乱する中国市民
中国現地Now!コロナ規制見直しも感染拡大を警戒する中国
中国現地Now!上海デモの最前線、市民の反応と後始末
中国現地Now!政策と実態に大きな矛盾、「中の人」から見た中国コロナ対策
中国現地Now!スマホで気軽にグルメ堪能、中国“ワイマイ”市場最前線
中国現地Now!生活に欠かせない中国の“スーパーアプリ”とは
中国現地Now!Go To 海南!Go To 免税!
中国現地Now!波に乗れない中国消費、逆風下で盛況の飲食店は?
中国現地Now!上海で「水騒動」勃発! パニック買いの背景とは……
中国現地Now!屋台経済が中国を救う? 上海で復活の兆し
中国現地Now!日系外食が苦戦、中国人の胃袋をつかむ戦いは続く
中国現地Now!「映える」火鍋料理、極上の牛肉麺
中国現地Now!円安の恩恵はいずこ? 中国人の海外旅行は夢のまた夢
中国現地Now!中国入国時の“ガチ隔離”を見てみよう
中国現地Now!猛暑と干ばつで電力不足、今年の夏はキツい!
中国現地Now!訪問先で隔離リスク、中国国内旅行は綱渡り状態
中国現地Now!新エネ車が快走中、550万台市場へ視界良好
中国現地Now!勝ち組と負け組で明暗、上海の外食産業の現在地
中国現地Now!上海はその後どうなった? “ポスト都市封鎖”のリアル
中国現地Now!ナイキとアディダスの牙城を崩す中国ブランド
中国現地Now!復権なるか、中国のシェア自転車最新事情

東洋証券株式会社 上海駐在員事務所 所長

奥山 要一郎

東洋証券株式会社 上海駐在員事務所 所長 上智大学外国語学部イスパニア語学科卒。通信社、コンサルティングファームを経て、2007年東洋証券入社。本社シニアストラテジストを務め、2015年より現職。中国現地で株式動向のウォッチや上場企業取材などを行い、中国株情報の発信・レポート執筆を手がける。

奥山 要一郎の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております