速乾タイプの人気が上昇
中国のドライヤー市場で“新風”が吹いています。これまではフィリップス、パナソニック、中国系の飛科(フライコ)などが定番で、市場シェアでも上位を占めてきました。ところが近年、高級化や差別化が進み、ダイソンが販売を伸ばしてきたほか、小米(シャオミ)や徠芬(ライフェン)などの地場系ブランドも存在感を高めています。
市場調査会社の奥維雲網(AVC)によると、中国の2022年ドライヤー販売台数は前年比0.2%増の2771万台に上ったと見られます。21年は0.3%増でしたので、よく言えば安定、悪く言えば頭打ちとでもなるでしょうか。ただ、金額で見ると、21年は前年比10.7%増の53億8000万元、22年はさらに11.5%増加して60億元前後になったもようです。単純に考えれば単価が上がり、高級化がやや進んでいると分析できるでしょう。
この背景には、高速回転ファンを備えた速乾タイプの製品、いわゆる大風量ドライヤーが増えてきたことがあるようです。22年5月以降、市場ではこのタイプの製品が全体の50%を超えています。基準は不明瞭ですが、中国では一般的に最大風速が秒速15~20メートル以上のタイプを指すことが多いようです。
AVCがまとめた市場シェア(売上高ベース、22年1~9月)は、ダイソンが29%で1位となり、ライフェンが18.7%で2位、パナソニックが9.7%で3位でした。以下、小米、康夫(CONFU)、飛科などと続きます。
抖音や小紅書で“バズる”ブランド
出所:タオバオのサイトより
さて、成長著しい地場系のライフェン。動画サイトのビリビリなどでスマホ広告をよく見かけます。2017年に誕生した中国の新興ブランドで、スタイリッシュな外観と洗練された広告が特にZ世代を中心とした若者に受けています。「ガールフレンドへのプレゼントに最適」とのキャッチコピーもあり、若年層にうまく訴求できているようです。
外観はダイソンと同じ筒形。コピー品と言っては失礼ですが、誰もが「中国版ダイソン」と思うことでしょう。タイプにもよりますが、価格は500元程度が多くなっています。本家のダイソンは3000元前後なので、それよりはだいぶお得感があります。
ライフェンの風量は秒速22メートル。ダイソンは41~50メートル/秒なのでかなり劣ります。ただ、ライフェンはそれでも大風量を売りに巧みなマーケティングを行っており、安さと利便性を前面に出しています。ショート動画の抖音(ドウイン=TikTok)、EC機能もあるSNSアプリの小紅書(RED)などで露出を高め、「若者のドライヤーのファーストチョイス」というポジションを強調してきました。
22年の売上高は15億元に達したとされます。市場規模が60億元と見込まれるので、単純計算でシェア25%。昨年、大きく躍進した新興家電ブラントと言えるでしょう。
中国ではこれまで、化粧品や家電製品、雑貨などの市場では大手企業や外資系企業が中心でした。ただ、小米が家電ブランドに進出したり、網易(ネットイース)が小物・雑貨・デジ製品などの独自ブランド「網易厳選」などを立ち上げたりと、新興プレーヤーが増えています。ライフェンの登場と活躍もその流れの延長線上で考えられるでしょう。「ネットやスマホでバズらせる」「ターゲットは若者層」が大きなポイント。これからも様々な業界でこれまで目にしなかったブランドが出てくると思われます。