中国現地Now!

火鍋を語ろう、中国発のナベトーーク!

SNSでバズる店を求めて


先日、久しぶりに火鍋を食べに行きました。日本でも「ガチ中華」関連で知名度が上がってきた火鍋。中国語では「フゥオグゥオ」と発音し、外食の定番です。どの街にも専門店があり、大規模チェーンから小規模独立店まで様々。家族、友人同士、会社の同僚、カップルなど、どの層にも受けがいい料理です。「外食は火鍋以外は食べない」と豪語する知人もいるほどです(やや極端かもしれませんが……)。


さて、私は上海で火鍋レストランを常時ウォッチしていますが、先日訪れたのは「后火鍋(ホウフゥオグゥオ)」という重慶火鍋の専門店。最近流行りの店で、いつも行列ができています。ランチもディナーも整理券(番号)方式で予約を受け付けています。整理券と言っても、実際に紙の券が配られるわけではなく、スマホのアプリ上で番号が発行される流れ。この番号を取ることを「取号」と言います。今回の場合、ランチは10時に取号スタート、11時の開店と共に呼び出しが始まります。ディナーは、まず16時から16時30分までは店頭のみで番号を発行、16時30分からはアプリ上での取号も解禁されます。人気店の場合はこの「取号の技術」で何時に入店できるかが決まるので超重要ミッションです。当然のことながら、番号呼び出し後、既定時間内に店に現れないとキャンセル(スキップ)になってしまうので要注意。


さて、前置きが長くなりましたが、后火鍋は確かに本格派の火鍋でした。ほとんどの客は鍋が真ん中で仕切られた「鴛鴦鍋」をオーダーしています。一方に激辛スープ、もう一方にマイルドな味付けのスープを入れて注文するのが定番。辛いのが苦手な人も問題なしです。もっとも、私はいつも辛いスープだけの鍋、すなわち「全辛鍋」をチョイス。まさにストロングスタイルで火鍋に挑んでいます。


具材の定番は、まずは肉でしょうか。牛肉や羊肉がメインになります。また、腸や胃袋など内臓系具材(いわゆる「モツ」)が多いのも特徴。中には「豚の脳味噌」というゲテモノもあります。食感は、柔らかい豆腐やプリンのような……。人気メニューの上位は、「毛肚(牛の胃袋)」や「鴨血」など。後者はアヒルの血を固めて作ったゼリー状の一品です。また、酥肉(スーロウ)と呼ばれる唐揚げも人気。ぜひお腹を空かせて臨みたいものです。



おススメは「姐シリーズ」、現地で人気の火鍋店


火鍋と言えば激辛鍋を連想しますが、元々は広く鍋料理を指しており、様々な味付けがあります。ご当地グルメ的な位置付けでもあり、各地で独特の鍋を味わうことができます。代表的なものを挙げると、冬の定番の「北京羊しゃぶしゃぶ」、牛肉のあらゆる部位を食べ尽くす「潮汕牛肉火鍋」、ココナッツ味がクセになる海南島の「椰子鶏火鍋」、東北地方でよく食べられる「酸菜白肉火鍋」、雲南エリアの「野生菌(キノコ)火鍋」などになるでしょう。


もっとも、一番人気は重慶火鍋などの激辛タイプです。いわゆる「麻辣(マーラー)火鍋」。トウガラシや花椒(ファージャオ)、各種香辛料が入った真っ赤な鍋底(スープ)は見るだけで食欲をそそり、汗が噴き出してきます。


さて、何の役に立つかは分かりませんが、上海でおススメの火鍋店、SNSでバズっている火鍋レストランを紹介したいと思います。私の独断と偏見ですので、万人受けするかは保証できませんが……何らかのヒントとネタになれば幸いです。


まずは「杉姐(シャンジエ)」。重慶火鍋の大人気店で、いつも行列ができています。夕方の予約開始のタイミングが少しでも遅れるとすぐに2~3時間待ちになってしまうほどです。店構えや店内はアットホームな雰囲気。照明や調度品などから昔ながらの雰囲気が漂ってきます。鍋はもちろん「牛油」を使った香ばしい激辛タイプが一番人気。辛さ抑えめの「微辣」でもかなりスパイシーなのでご用心。「鴨腸」などのモツ系や、写真に映えるスイーツ系ドリンクも充実しているので、若者客が多いのも特徴です。


この店と合わせ、店名に「姐」を冠する「姐シリーズ」が私のお気に入りです。代表的なところでは、「鴻姐(ホンジエ)」「珮姐(ペイジエ)」「金姐(ジンジエ)」など。いずれも伝統的な重慶火鍋を出す店で、気取らない雰囲気も二重丸。コクのある激辛スープもたまりません。「杉姐」同様、これらの人気店は2~3時間待ちも当たり前なので、覚悟して出かけたいところです。


毛肚を極めるなら、こだわりの一品を味わえる「巴奴(バーヌー)毛肚火鍋」、6種の毛肚の食べ比べができる「九鼎軒」がおススメ。鴨血が売りの「譚鴨血」、腰片(豚の腎臓)がイチ押しの「周師兄」も外せません。北京しゃぶしゃぶの王道「東来順」、老舗の「小肥羊(シャオフェイヤン)」も根強い人気があります。


ヘビーな辛さで攻めるなら「徳庄」「坎爺(カンイェ)」「高老九」などになるでしょうか。辛さのあまり息苦しくなることもあるので要注意。台湾系の煮込み鍋が美味しい「熬八年(アオバーニェン)」、インフルエンサーに人気の“映える”火鍋店「朱光玉火鍋館」、カエル肉が定番の「哥老官重慶美蛙魚頭」なども評判が高いです。このほか、「蜀大侠」「小龍坎(シャオロンカン)」「朝天門」「渝利火鍋」「劉一手」「大龍●(●は炎が2つ:ダーロンイー)」などクセが強い火鍋店が数多くあります。


中国株の上場企業では、業界最大手の海底撈国際控股(ハイディーラオ、06862)、1人鍋タイプもある呷哺呷哺餐飲管理(シャブシャブ、00520)、そのサブブランドの「湊湊(ツォウツォウ)」などがあります。中華料理ファストフード店の九毛九国際控股(09922)は、多角化経営の一環として重慶火鍋の「慫(ソン)」を立ち上げました。ポップで賑やかな店構えで気さくなスタッフも多く、若者の支持を得ています。


これから寒くなり、本格的な火鍋のシーズンになります。お気に入りの鍋を見つけ、寒い冬を乗り切っていきたいものです。


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東洋証券株式会社 上海駐在員事務所 所長

奥山 要一郎

東洋証券株式会社 上海駐在員事務所 所長 上智大学外国語学部イスパニア語学科卒。通信社、コンサルティングファームを経て、2007年東洋証券入社。本社シニアストラテジストを務め、2015年より現職。中国現地で株式動向のウォッチや上場企業取材などを行い、中国株情報の発信・レポート執筆を手がける。

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