旅行はやや節約志向?
中国は早くも厳しい暑さが始まっており、上海でも最高気温35度を超える日が出てきました。北京でも6月下旬に連日の40度超え。南京、重慶、南昌、武漢などからも猛暑にウンザリという市民の声が聞こえてきます。一方、南部を中心に豪雨や洪水の被害も出ています。
このような厳しい気候の中、中国は6月22日から24日まで端午節の連休を迎えました。もちろん暑かったのですが、別の言い方をすれば旅行日和でもあり、各地で多くの観光客の姿を見ることができました。
端午節の3連休の観光データは以下のようになっています(中国文化観光省より)。
◇旅行者数:1億600万人 = 前年同期比32.3%増 コロナ前の19年同期比12.8%増
◇観光収入:373億1000万元 = 前年同期比44.5%増 19年同期比5.1%減
全体的には昨年実績を大きく上回りました。昨年はまだゼロコロナ政策が実施されており、移動や外出に二の足を踏む市民が多かったことに加え、上海ロックダウンが明けて間もない時期だったため、旅行ムードの盛り上がりもイマイチでした。それに比べると今年は雲泥の差です。一方、コロナ前の2019年と比べると、旅行者数は伸びているものの、収入(≒消費)は減っており、消費のグレードダウン(節約志向)がうかがえます。遠出よりも近場の旅行を選んだ市民が多かった、という分析も見られました。
私もつかの間の連休で旅行を楽しんできました。山西省に出かけたのですが、有名観光地はどこも観光客で混雑していました。大同郊外にある世界遺産の雲崗石窟。2年前に訪れた時は観光エリアも路線バスもガラガラだったのですが、今回は押すな押すなの混雑状態で、バスもギュウギュウ詰めの満員でした。かなりの人の多さに戸惑ったほどです。
また、子供連れが目立ったのも特徴でした。これもゼロコロナ政策の終了が影響しています。同政策の下では、学校側が実質的な「旅行禁止措置」を出すところが多く、家族旅行もままならなかったのです。「感染拡大エリアから戻ってきた生徒は数日間の隔離を経なければ登校できない」など、今から考えると理不尽なルールが多くありました。今は制限も規制もないので、ごくごく普通に旅行を楽しめます。観光地やホテルで多くの家族連れを見かけたほか、シニアツアーのような団体旅行客も多かったです。
エンタメ人気も健在
端午節連休でもう一つ盛り上がったのは映画です。前述のように、市民の間で節約志向が高まったため、「旅行は行かないけど近場のエンタメを楽しもう」という機運が膨らんだのかもしれません。
猫眼娯楽によると、同連休中の映画興行収入は9億900万元に達したとのことです。これは昨年実績の1億7800万元を大きく上回り、端午節連休としては18年に続く過去2番目の記録でした。観客動員数は延べ2248万6000人で、こちらも昨年実績の512万6000人を上回りました。最大のヒット作は6月22日に公開された「消失的●(女へんに也)」。興行収入は4日間で7億元に達したサスペンス映画です。
一方、気になったのは各地での事故や事件です。日本でも伝えられましたが、端午節連休の前夜に当たる6月21日、寧夏回族自治区の区都・銀川市の飲食店で大規模なガス爆発がありました。中国語で「焼●(火へんに考)」というバーベキューや串焼きのお店ですが、ここで液化石油ガス(LPG)のボンベが爆発し、30人以上の犠牲者が出てしまいました。私はこのちょうど数日前に銀川を訪れていたので、他人事ではありません。アクシデントを避けるのは難しいですが、各方面で安全対策を徹底してもらいたいものです。
様々なことがありますが、いずれにせよゼロコロナ政策が終わり、春節(旧正月)、労働節(メーデー)連休、そして今回の端午節連休を経て「制限なき旅行」に段々と慣れてきた、というか通常に戻ってきた感は大いにあります。以前は、駅でも空港でも観光地でも、至る所でスマートフォンの「緑コード」の提示が求められ、リスクエリアに行ったことがないかを証明していました。公衆トイレの利用時にスマホ提示が求められたことすらあります。また、旅行前や目的地到着後及び滞在中のPCR検査はマストでした。隔離覚悟で着替えや生活用品を多めに持っていったのも、今となっては笑い話になるでしょう。やっとのことで自由を謳歌できるようになった市民の旅行ムードは、夏から秋の観光シーズンに向けてますます高まると思われます。