中国現地Now!

現金要らずの連休旅行、何でもスマホとキャッシュレス

観光地にはスマホで入場


中国に旅行熱が戻ってきました。先の労働節連休中(4/29~5/3)における国内旅行者数は前年同期比70.8%増の2億7400万人に上りました。これは“コロナ前”の19年同期を19.1%上回る数字。人気観光地はどこも多くの人で賑わい、観光施設や飲食店などには長蛇の列ができました。鉄道や飛行機も軒並み満員で、まさに“民族大移動”的な雰囲気も感じられるほどです。


私もこの流れに乗り、中国国内を旅行してきました。その際に改めて感じたのは、キャッシュレスやスマートフォン社会があらゆるシーンで浸透していることです。数日間の旅行中、現金を使う場面はゼロ。観光地の入場券、レストランでの食事、ホテルやタクシー料金の支払いは全てスマホキャッシュレスで済ませました。内陸部を訪れたので、念のため現金を少しだけ持って行ったのですが(それでも日本円で数千円程度)、幸か不幸か出番はなし。全てスマホに頼りっぱなしでした。


最近は観光地のチケットをスマホで購入するケースが多くなっています。訪問客は事前に観光施設の公式アカウントにアクセスし、チケット申し込みと支払い(もちろんキャッシュレス)を済ませます。すると自分用のQRコードが生成され、それを入り口のゲートでかざす方式が一般的です。中国人の場合は、申込時の実名承認で名前と身分証番号などが全て紐づけられるので、身分証カードをかざして入場できることもあります。日本で例えれば、マイナンバーカードで出入場を管理するというイメージになるでしょうか。やや違和感があると思いますが、中国ではごく普通に行われています。


問題点は、スマホ予約が外国人に対応していないケースがあること。個人情報の入力ページは中国人の身分証にしか対応しておらず、パスポート番号を入れてもエラーが出て弾かれてしまいます。以前、とある博物館でこの件を窓口に申し出たところ、初老の係員から「うーん……、スマホで登録しないと入場できないのが決まりなんだ。今回は諦めてくれ」と言われました。まさかの外国人お断り? さすがに理不尽なので、現金で払うから入れてくれ、あなたにスマホ送金するから代わりに登録してくれ、などと解決策を出しながら交渉しましたが、どうしてもダメの一点張り。結局、知り合いの中国人が代わりにチケット購入してくれて、何とか入場できましたが……。便利なのかどうかよく分かりません。


 


電波が届かないエリアでは……


外国人対応という意味では鉄道駅もユニークです。今やほとんどの改札が自動化されていますが、中には中国人の身分証対応のみでパスポートは不可というものもあります。一番端にパスポート対応のマルチ改札機があることが多いのですが、読み取り機がうまく作動せず、あきれた係員から「もういいです。行って良し!」と指示されることが何回もありました。


以前、山西省の田舎の駅に行った時の話。待合室で座っていると、駅のスタッフから「外国人の方ですか?」と声を掛けられました。何かと思って話を聞くと、「試しに改札機にパスポートをかざしてみてください」とのこと。恐らく、自動改札機の設置から間もないため、パスポートがうまく読み取れるか心配だったのでしょう。つまり、私は実験台というワケです。結果、無事読み取りに成功し、周りにいた複数の係員から安堵の声がもれました。様々なことが起きるものです。


さて、スマホ社会の話に戻りますが、多くの人が疑問に思うのは「電池が切れたらどうする」「電波が届かないところでは何もできない」などの点でしょう。先日も同じような問題に遭遇しました。


とある建物の地下にあった飲み物の自動販売機。中国でよく見る、現金お断りでスマホ支払いのみ対応の機械です。スマホをかざすのではなく、自販機に出てくるQRコードを読み取りながら支払うやや面倒なものですが、もう慣れてしまいました。ところが、地下ということもあり電波が繋がりにくく、うまく購入できません。


仕方なく、横にあった売店で購入しようと思いましたが、こちらもキャッシュレス支払いが基本なので難儀します。隣の買物客はスマホが繋がらずかなりイライラしており、「もう、現金で払うよ!」と叫びながらポケットから紙幣を出してしまいました。これはレアケースですが、中国は現場レベルで小さな矛盾をはらみながら、とにかくデジタル化に邁進しています。


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東洋証券株式会社 上海駐在員事務所 所長

奥山 要一郎

東洋証券株式会社 上海駐在員事務所 所長 上智大学外国語学部イスパニア語学科卒。通信社、コンサルティングファームを経て、2007年東洋証券入社。本社シニアストラテジストを務め、2015年より現職。中国現地で株式動向のウォッチや上場企業取材などを行い、中国株情報の発信・レポート執筆を手がける。

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