中国現地Now!

日中間の移動がスムーズに! 国際線の増便・復便進む

北京・上海便は毎日運航体制へ


日本と中国を結ぶ国際線フライトの増便・復便の動きがようやく進んできそうです。中国のゼロコロナ政策の解除や水際対策の緩和、査証発行の正常化などに加え、3月下旬の航空スケジュールの夏ダイヤへの変更に伴い、航空各社が積極的に運航便数を増やしてきます。日中間の人の流れが戻り、ビジネス面での利便性が徐々にアップしていくと思われます。


東京~上海間のフライトを例に挙げてみます。日本航空(JAL)は3月26日から毎日3往復体制にすると発表しました。羽田~上海浦東、羽田~上海虹橋、成田~上海浦東便をそれぞれ1往復ずつ運航。これまでは1週間で2.5往復体制だったので、大幅な増便となります。全日空(ANA)は4月以降、東京~上海間を少なくとも毎日2往復体制とし、曜日によっては3往復運航。また、両社は東京~北京便も毎日運航とします。


日本側から見ると、ビザの問題はまだ残りますが、中国へのアクセスが格段に向上します。これまでは便数が少なく、航空券価格も通常より割高で、また昨年までは中国到着後に強制隔離もあったため、中国渡航のハードルはかなり高かったです。ところが、毎日運航となると一気に視界が広がり、「中国行き」がより現実的に感じられるでしょう。


中国に住む者にとっても同様です。これまでは両国の厳しい水際対策、隔離などによる時間的ロス、割高な航空券、移動時のコロナ感染懸念などが大きなネックとなり、一時帰国を断念する人も多数いました。しかし、ここに来て状況が一変。これまでの3年の鬱憤を晴らすべく、「リベンジ帰国」のようなムードになるかもしれません。


特に上海在住者にとっては、虹橋空港の国際線復活が超朗報です。上海には浦東と虹橋という二つの国際空港がありますが、市内からの距離で見ると、前者は成田、後者は羽田と例えられます。虹橋~羽田便が復活すれば、「朝に上海を出ればランチを東京で食べられる」という、まさに夢のような(少々大袈裟ですが……)プランも実現可能です。もっとも、“コロナ前”はこれが普通だったのですが……。


もう一つの注目点は、羽田⇒上海浦東の夜行便が復活すること。ANAは羽田を22時30分に発ち、上海浦東に0時35分に到着する便を運航予定です。時間を節約したいビジネスマンや旅行者にとっては最適な時間帯になるでしょうか。ただ、疲れが増すのが玉に瑕。私は以前、この便を利用したことがありますが、「東京での仕事終了⇒同僚と懇親会(飲み会)⇒早めに切り上げて羽田空港に直行⇒そのまま夜行便に搭乗」というややハードなスケジュールでした。「午前様で帰宅途中の同僚より私の方が上海に早く到着してしまう」という“逆転現象”すらあったほどです。便利は便利ですが、ややタイトな行程と翌日の体調を考えるとあまりおススメできません。私はできれば遠慮したいのがホンネです。


国際線需要の復活で上海が恩恵?


 


中国全体の航空需要を見てみます。“コロナ前”の19年の航空旅客数は、国内線は5億8600万人、国際線は8532万人を数えていました。これが22年には前者が2億5000万人、後者が233万人まで激減。ゼロコロナ政策の影響が最も大きかった業界と言えるでしょう。


ただ、同政策の解除に伴い、今年は国内線は4億6000万人(19年の78.5%水準)、国際線は4500万人(同52.7%水準)程度まで戻ってくると見られます。国際線旅客の回復ペースはやや緩慢で、本格的な復活は来年以降に持ち越しになりそうです。それでも最悪期から見ると改善の余地が大きいとプラスに捉えたいものです。


空港別に見ると、国際線の増便・復便は上海が最も恩恵を受けそうです。主要空港の19年データをまとめると、上海浦東空港の国際線利用客数は全体の42.6%、広州白雲空港は24.5%、北京首都国際空港は23.9%でした。22年はいずれも1~5%程度まで大きく低下しましたが、国際線が徐々に増えていくことで比率も上がっていきそうです。元々国際線比率が高かった上海では、中国からの海外旅行客や訪中外国人の姿を目にする機会が段々と増えてくるでしょう。



この連載の一覧
不動産価格は下落見込み、中銀アンケートから市況を読む
大卒者の就職率は55.5%、厳しさ続く雇用市場
外食各社の業績低迷、価格に敏感な一般市民
プリペイドにはご用心、突然の閉店で泣き寝入りも
進む少子高齢化と人口減少、三中全会での対策は?
中国で高まる節約志向、大都市でも消費不振
ホントに静か? 中国の「クワイエット・カー」に乗ってみた
「中国式」で独自に発展中、ネット配車最前線
中国人はアリババ株を買えないの?
マオタイ価格が急落、株価も連れ安でプチ混乱
便利な出張サービス、「ネット+リアル」で進化中
住宅在庫の消化は進む? あの手この手で業界支援
観光業を支えるレッドツーリズム
「デジタル+アナログ」で発展する中国スマホ社会
中国はこれから卒業シーズン、1179万人が就職市場へ
ティードリンク市場がアツい! 上場予備軍も続々
不動産市場にまつわるエトセトラ
アンケートから景況感を探る! 貯蓄志向は依然高め
「消費降級」で明暗、外食チェーンの激しい争い
何はなくともカップ麺、鉄道旅のマストアイテム
アジア最大の家電見本市、スマート化に注目
大学生にゲーム規制? 全人代の提議あれこれ
ジェットコースター相場、波乱の1月と2月
変わる中国新エネ車業界、テック系が続々進出
春節前の政策相場、底打ち機運の中国株
朝から「メンクイ」、好みの麺をご賞味あれ
“ポスト・コロナ”の中国、外国人の目にはどう映る?
2年連続で前年割れ、人口減社会に直面する中国
“コロナ前”の水準回復へ、中国旅行市場の現地温度感
「元旦快楽」で辰年スタート、2024年の中国はどうなる?
並ぶのも一苦労、中国ならではの行列事情
ネット通販の主役交代? 好調続くPDD
頼りになる「即時配送」、旅先でも気軽にデリバリー
中国人のリアルボイス、不動産や就職事情を聞いてみた
「有軌電車」でGO! 着々広がる中国の都市交通網
白酒値上げのカラクリ、マオタイの時価を探れ
火鍋を語ろう、中国発のナベトーーク!
スマホオーダーで気軽に一杯、中国コーヒー最新事情
交通規制は突然に、中国式厳戒態勢
中国に「デフレ」という言葉はない?
行楽シーズン到来! 中国のオススメ観光地を大紹介
大型連休がやって来る! 9億人が大移動
ライバル逆襲と使用禁止令、中国でiPhoneはどうなる?
政策後押しで復活なるか、中国の不動産最前線
「水問題」で非難一色の中国、日本バスケで思わぬ展開に?
アリババ&テンセント、進む人員削減とスリム化
イベント消費で経済を回せ、政府も積極支援中
デフレ懸念も何のその、ホテル料金が上昇中
街に活気戻り売上が回復中、中国外食産業の現在地
人口と婚姻数が減少中、中国の若者の人生観とは
空港着いたらライドシェア専用乗り場へGO!
待ちぼうけはつらいよ、夏場のフライトあるある
「貯蓄重視で投資は控え目」、中国人のお金はどこへ向かう?
家族連れで賑わう場面も、端午節のプチ旅行
今年も猛暑? 早くも節電の呼びかけ
「618商戦」がやって来る! ネット通販で買い物三昧
キーワードは「頭文字C」、注目される国有企業の行方
中国でコロナ感染再拡大、それでも市民の多くはノーマスク
中国の若年失業率は20%超、雇用確保が優先課題に
現金要らずの連休旅行、何でもスマホとキャッシュレス
大盛況の上海モーターショー、中国地場系の躍進目立つ
「スラムダンク」が中国でも大人気、初日興収18億円!
「ラストワンマイル」はアナログリレーで解決?
火鍋チェーンの「呷哺呷哺」、一人鍋で存在感
ドライヤー市場に新風来たる、Z世代に人気の新興ブランド
日中間の移動がスムーズに! 国際線の増便・復便進む
復活する消費市場、北京の街に賑わい戻る
復活中の結婚式ニーズ、動き始めたヒト・モノ・カネ
改札時間は15分ジャスト! 中国の鉄道事情あれこれ
酒と言えば白酒! 宴席需要でニーズ増へ
たかが発票、されどファーピャオ
春節映画からの岳飛ブームと聖地巡礼
ノーマスクで新年快楽!? 中国春節の珍プレー好プレー
深夜の配車2時間待ち、春節前ならではの事情とは
中国で旅行ブーム再燃か、海外渡航はそろりスタートへ
賑わい消えた師走の上海、配送バイクも不足気味
中国現地Now!政策緩和と感染急増、混乱する中国市民
中国現地Now!コロナ規制見直しも感染拡大を警戒する中国
中国現地Now!上海デモの最前線、市民の反応と後始末
中国現地Now!政策と実態に大きな矛盾、「中の人」から見た中国コロナ対策
中国現地Now!スマホで気軽にグルメ堪能、中国“ワイマイ”市場最前線
中国現地Now!生活に欠かせない中国の“スーパーアプリ”とは
中国現地Now!Go To 海南!Go To 免税!
中国現地Now!波に乗れない中国消費、逆風下で盛況の飲食店は?
中国現地Now!上海で「水騒動」勃発! パニック買いの背景とは……
中国現地Now!屋台経済が中国を救う? 上海で復活の兆し
中国現地Now!日系外食が苦戦、中国人の胃袋をつかむ戦いは続く
中国現地Now!「映える」火鍋料理、極上の牛肉麺
中国現地Now!円安の恩恵はいずこ? 中国人の海外旅行は夢のまた夢
中国現地Now!中国入国時の“ガチ隔離”を見てみよう
中国現地Now!猛暑と干ばつで電力不足、今年の夏はキツい!
中国現地Now!訪問先で隔離リスク、中国国内旅行は綱渡り状態
中国現地Now!新エネ車が快走中、550万台市場へ視界良好
中国現地Now!勝ち組と負け組で明暗、上海の外食産業の現在地
中国現地Now!上海はその後どうなった? “ポスト都市封鎖”のリアル
中国現地Now!ナイキとアディダスの牙城を崩す中国ブランド
中国現地Now!復権なるか、中国のシェア自転車最新事情

東洋証券株式会社 上海駐在員事務所 所長

奥山 要一郎

東洋証券株式会社 上海駐在員事務所 所長 上智大学外国語学部イスパニア語学科卒。通信社、コンサルティングファームを経て、2007年東洋証券入社。本社シニアストラテジストを務め、2015年より現職。中国現地で株式動向のウォッチや上場企業取材などを行い、中国株情報の発信・レポート執筆を手がける。

奥山 要一郎の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております