BYDの高級ブランド車に大注目
4月18日から27日まで上海国際モーターショーが開催されました。2年に一度、北京との隔年開催となる世界的な自動車見本市。会期中の来場者は90万人を超え、各社が発表した次世代EV(電気自動車)や高級セダンなどを中心に会場は熱気に包まれていました。
日本でも各ニュースで伝えられていますが、改めてポイントをまとめると、
◇来場者数は延べ90万人超(19年は100万人、21年は81万人)
◇出展車両数は1413台(21年は1310台)、うち世界初公開は93台
◇中国系でEVへの注力姿勢が目立つ
◇日系やドイツ系などはEVでやや出遅れ感
などとなるでしょうか。
中でも特に注目を集めたのはBYD(01211)のブースです。新型コンパクトカーの「カモメ(Seagull)」、高級ブランド車の「仰望(ヤンワン)」を大々的に発表。会場随一の賑わいを誇り、今回のモーターショーの圧倒的な「勝ち組」と言えるでしょう。
特に「ヤンワン」の展示コーナーは入場制限が行われるほどの混雑ぶりでした。注目はもちろん、ファーストモデルの「U8」(オフロードSUV)と「U9」(スポーツカータイプ)。前者は109万8000元(約2140万円)という大胆な価格設定です。9月以降に納車開始となりますが、果たしてどれほどの売れ行きとなるでしょうか。
BYDは技術力の向上も目覚ましいものがあります。今回、「雲輦(うんれん)」という制御システムが披露されました。車両の垂直方向の動きや姿勢変化を効果的に制御し、横転リスクを低減。3輪走行やダンス、ホッピングなどのハイエンド機能も備えており、現場でも関心が高かったです(興味ある方はYouTubeなどでご覧いただれば幸いです)。
地場系の活躍が目立った上海モーターショー。広州汽車集団(02238)傘下の新エネ車ブランド「埃安(Aion)」は、中国発のEVスーパーカーとされる「Aion Hyper SSR」を発表しました。大きな羽を付けたモデルが登場したこともあり、来場者が殺到する場面も見られました。新興EVメーカーの“ビッグ4”も新型車を投入。理想汽車(02015)の「L9」、小鵬汽車(09868)の「G6」、NIO(09866)の次世代SUV「ES6」、ナタ汽車の「GT」はどれも感心するほどスタイリッシュなデザインでした。
今回はアイス騒動、ハプニングは恒例行事?
さて、様々なハプニングが起きるのもモーターショーの“お約束”。前回21年はテスラのブースで同社に対する抗議パフォーマンスが見られました。ある女性が展示されていたテスラ車の上に立ち、大声でシュプレヒコールをするという……。関係ないとは思いますが、今年のモーターショー、テスラは不参加でした。
今回話題になったのはBMW です。「Mini」のブースでアイスクリームの無料提供がありましたが、中国人には配らず外国人のみに渡していた動画がSNS上で拡散。「中国人を差別するな!」「なんで外国人を優遇するんだ!」的な非難の声が一部で高まりました。これを受けてBMW側はアイスの提供を停止した上で謝罪。ブースを担当していた中国人女性2人を解雇扱いにしています。
この騒ぎが収まると、今度はアイスを大量に持った一般人が現れ、皆に無料で配るという便乗パフォーマンスまで繰り広げられました。SNS動画での“バズり”を狙った行為のようですが、このような場外戦が繰り広げられるのもモーターショーの魅力(?)一つです。
各メーカーのブースに話を戻すと、やはり中国地場系の集客力は高いものがありました。音楽をガンガンにかけたり、若者のダンスパフォーマンスを大々的に行い、とにかく集客に注力。遠慮せずに“目立ってナンボ”的な精神が強く感じられました。吉利汽車系では、ハイエンドブランド「領克(Lynk&Co)」、高級EVブランド「ZEEKR(ジーカー)」などが特に派手。ディスコやクラブのような照明の中、大音量の音楽が鳴り響き、隣の人との会話もできないくらいでした。
これに対し、日系メーカーのブースはかなり大人しいもの。技術力やブランド力を地道にアピールし、それなりの評価を得ていたようですが、いかんせん地味に見えてしまいます。新モデルが少ないという事情もあったと思いますが、それでも地場系や他の外資系との勢いの差が如実に感じられました。会場では日本からの出張者と思しき業界関係者の方も多数見かけました。この現場から何を感じ取り、中国における日本車メーカーのさらなる活躍に繋げるのか。期待を持って見守りたいと思います。