中国現地Now!

中国現地Now!日系外食が苦戦、中国人の胃袋をつかむ戦いは続く

うどん大手は事実上の敗北

 

最近、日系外食大手の中国市場からの撤退や事業規模縮小のニュースが相次いでいます。吉野家ホールディングスは先日、傘下の「はなまるうどん」が中国から撤退することを発表しました。また、トリドールホールディングスが運営する「丸亀製麺」も中国の全店舗を閉鎖したと伝えられました。新型コロナウイルスの感染拡大や外食産業全体の不振が、日本企業にも逆風となっているようです。

 

はなまるうどんは2011年に中国に進出しました。上海の繁華街・徐家匯のショッピングセンター「美羅城(メトロシティ)」に第1号店を開いています。その後、中国の店舗数は37店まで増えたということ。私もモール内のフードコートでよく見たことがあります。日本の店舗と同じく、天ぷらなどの揚げ物コーナーがあり、そこでトッピングをチョイスしてから好みのうどんをオーダーする流れです。

 

もちろん味は日本そのもの……と行きたいところですが、現地化を進める様々な工夫がありました。豚骨スープやトマト味、トムヤムクン風味などのオリジナル路線も目立ちました。現地の嗜好に合わせてか、うどんの茹で方がややユルめだった気もします。私は一時期、上海のフードコートの店舗で「トマトスープうどん」を連日のように食べていました。なかなか美味しかったのですが、3日も食べると飽きてしまったことを思い出します(この点は「はなまるうどん」さんに非はありませんが)。

 

中国ではうどん自体の知名度や人気は高い方で、食べたことがある人も多いです。ただ、麺の本場ではライバルも多く、蘭州牛肉面に代表される地場系ヌードルの存在感が目立ちます。豊富な具材、濃い目の味付け、ラー油などを入れてパンチ力増し増し……など、地元ならではの味や食べ方があり、どれも“キャラが濃い”面々です。それに比べると、あっさり系のうどんはやや見劣りしてしまい、食べるにしてもセカンドチョイス的な存在になってしまうのかもしれません。日本風居酒屋では醤油味の焼うどんが人気のお店もあるのですが……。

 

中国市場からの撤退発表後、上海のはなまるうどん第1号店を訪れてみました。平日昼間のランチ客の入りは決して多くはありません。従業員もなんとなく元気がない様子に見えてしまいます。お隣にあるラーメンの一風堂の店舗は結構賑わっており、なかなか対照的な光景でした。


 

中国で活躍する日式イタリアン?

 

さて、日本の外食企業が中国市場で活躍できないかと言うと、決してそんなことはありません。中国人の胃袋をしっかりとつかみ、ビジネス的に成功している企業も多くあります。

 

個人的なお気に入りはサイゼリヤです。2003年に海外第1号店を上海にオープンし、順調に店舗数を増やしてきました。上海で152店のほか、広州で136店、北京で85店を展開中(21年末時点)。現地では「安くて気軽に入れるおいしいイタリアン」と評判です。日本と全く同じ位置付けですね。定番の「ミラノ風ドリア」は15元(約300円)、「ミートソーススパゲッティ」が14元(約280円)となっています。私も1人でどうしてもピザが食べたくなったときはサイゼリヤに行くことがあります。店内は家族連れ、カップル、友達同士から私のような“1人メシ”の客まで様々。これも日本と同じ風景になるでしょうか。

 

以前、上海に住む知人(外国人)から「ついに中国で一番美味しいイタリアンの店を見つけた!」と話しかけられたことがあります。興味津々で聞いてみたところ、「いいか。よく聞けよ。サイゼリヤっていう店なんだ!」と嬉しそうに答えてくれます。なんだか不思議な感じもしますが、評価が高いのは事実。子供の頃に親が連れて行ってくれたなぁ、と懐かしむ世代も出てきました。日本の外食産業が中国でもたくましく成長しているのを感じる瞬間です。

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東洋証券株式会社 上海駐在員事務所 所長

奥山 要一郎

東洋証券株式会社 上海駐在員事務所 所長 上智大学外国語学部イスパニア語学科卒。通信社、コンサルティングファームを経て、2007年東洋証券入社。本社シニアストラテジストを務め、2015年より現職。中国現地で株式動向のウォッチや上場企業取材などを行い、中国株情報の発信・レポート執筆を手がける。

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