美団と餓了麼が2強
中国のフードデリバリー市場が右肩上がりで拡大しています。2021年の市場規模は1兆元を突破。前年比では50%を超える成長率です。中国全体の飲食業収入が約4兆7000億元なので、単純計算するとおよそ21%が出前市場になります。
中国では出前は「外売(ワイマイ)」と呼ばれており、スマホ注文が一般的です。08年設立の餓了麼(ウーラマ)がビジネスモデルの原型とされ、同社と美団(メイトゥアン)が業界の2強。前者がアリババ系、後者がテンセント系なので、ネット大手2社の代理対決とも言えます。市場シェアは美団が約7割、餓了麼は約3割とされています。
使い方は簡単。アプリ上で食べたい物やレストランを検索し、メニューを選びます。届け先を入力し、キャッシュレスの支払い画面をタップ。すると受注状況やおおよその配送所要時間が示されるほか、GPSを駆使してバイクスタッフの現在位置が分かる地図もリアルタイムで更新されます。評価システムも備えられ、料理や配送時間、スタッフの態度などの良否がスマホ上で入力可能。非常に便利で、今や生活になくてはならないサービスです。
かくいう私もヘビーユーザー。昼食も夕食も大いに助けてもらっています。好物の回鍋肉(ホイコーロー)と麻婆豆腐は、スマホ上で「お気に入り」に登録してしまうほど。いつも頼むレストランはマンションの真下で、徒歩30秒もかかりません。それでも、1人で店に行くのは億劫ですし、配送料は100円にも満たない程度なので、ついついスマホ注文に頼ってしまいます。家族や友達同士で頼めば、様々な料理を皆で楽しむことができます。
もちろんオフィスでも重宝されています。以前はドア・ツー・ドアで手渡ししてくれるなど便利でしたが、コロナ禍の現在は非接触配送がスタンダード。多くの会社が入居するオフィスビルでは1階のエントランス脇に出前棚や出前ボックスが置かれている光景をよく目にします。配送スタッフは注文品をそこに置き、受取人は自分の注文番号を手掛かりにランチを探したり取り出したりします。サービス開始当初は取り間違いもあったそうですが……。
私も先日、注文品とは異なる料理が届いたことがありました。焼きビーフンとチャーハンを注文したのに、袋を開けてみるとお粥のみ。レストランに電話すると「うちの責任ではない」。デリバリースタッフ(バイク便)に電話すると「私は知らない」。にっちもさっちもいきません。運営プラットフォームの美団に連絡したところ「これはもう仕方ないです。すいません。次回以降に使える割引券をプレゼントしますので」とよく分からない解決となりました。ちょっと残念な気持ちでお粥を食べたのですが、逆にお粥を注文したつもりが焼きビーフンとチャーハンのガッツリ系が届いたお客さんもビックリしたことでしょう。このようなケースは頻繁ではないですが、時々発生します。
レストランでも外から出前?
出前は様々な生活シーンに浸透しています。以前、北京のホテルのロビーで、バスローブとスリッパ姿の男性がエレベーターから降りてくる姿を見ました。そして、黄色いヘルメット姿の配送スタッフから弁当らしきものを受け取ると、再びエレベーターに乗り自室に戻っていきました。場所は五つ星ホテルのシャングリ・ラ。大変奇妙ですが、今日の中国でよく見られます。
また、レストランで食事中に出前を頼む人もいます。さすがに食事は頼まないですが、ミルクティーなど飲み物の注文が多いよう。配送スタッフが注文品をレストランの店員に渡し、店員が客のテーブルまで届けるシュールな光景。お店にはミルクティーなどのドリンクメニューもあったのですが、そんなのお構いなしという傍若無人な出前活用法です。行きつくところまで行ってしまったような気もしますが……。
いずにせよ、現代の中国においてなくてはならない存在となったフードデリバリー。出張や旅行先でもフル活用しています。以前訪れた地方都市はひどい大気汚染で、外出モチベーションがゼロ。そんな時でも、スマホで気軽に地元の名物料理を頼み、部屋で堪能できるのはこの上ない幸せでした。出前に頼り過ぎなのは良くないかもしれませんが、時や場合に応じてうまく付き合って行きたいものです。