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観光業を支えるレッドツーリズム

聖地で見た「紅い」観光客


先日、貴州省の遵義を訪れました。遵義と言えば、1935年1月に中国共産党中央政治局拡大会議が開催されたことで有名です。「長征」の中で毛沢東が軍事指導権を確立する重要な転換点。現地では同会議の意義を象徴する「偉大転折」という大きな文字が至る所で見られました。


近年はこのような歴史的スポットや観光施設を巡る「紅色旅游(レッドツーリズム)」が存在感を増しています。革命聖地を旅する「聖地巡礼」といった趣です。“コロナ前”のデータですが、2019年の「紅色旅行者」は14億1000万人と、旅行者全体(60億600万人)のおよそ4分の1近くに上りました。直近のデータは不明ですが、少なくとも数億人レベルでの聖地巡礼観光客がいることは容易に想像できます。


遵義にある遵義会議紀念館でもたくさんの観光客を目にすることができました。ツアーガイドが国旗風の旗を持ちながら先導したり、ねずみ色の紅軍服と紅軍帽でコスプレした団体客がいたり、スタッフによる共産党の歴史解説を熱心に聞いたりという姿が目立っていました。


紅色旅游の概念は04年末に打ち出されました。政府部門の国家旅游局(現在の文化旅游部の前身)が専門部署を立ち上げ、「中国紅色旅游網」というホームページも開設し、宣伝活動に余念がありません。21年公表の第14次五カ年計画の要綱にも「紅色旅游を推進する」と盛り込まれ、立派な国策の一つと言えそうです。


観光資源は「長征」「抗日戦争」「解放戦争(国共内戦)」などに関連する施設や場所です。観光地リストには「抗日」「革命」「烈士」などの名前が目立ちます。北京や上海、西安などの大都市に加え、吉安(江西省)、延安(陝西省)、嘉興(浙江省)など歴史の教科書で出てきた地名も多く見られます。


 


意外と高い若者人気、その背景は?


レッドツーリズムでの人気スポットをいくつか挙げてみます。まずは「革命」や「起義」が起きた地。江西省南昌の「南昌八一起義紀念館」や、湖北省武漢の「辛亥革命武昌起義紀念館」などがあります。中国の歴史を語るのに欠かせない「起義」という言葉は武装蜂起などを指します。紀念館の中には歴史背景や意義などの説明パネルに加え、戦闘シーンのジオラマや武器の展示などもあり迫力満点です。


湖南省の韶山も有名です。長沙から高速鉄道で20分余りの、静かな丘陵地にある人口わずか12万人ほどの街。ここは中国建国の父、毛沢東の故郷で、常に中国各地からの観光客で賑わっています。生家を中心に博物館、毛沢東の巨大な銅像、湖南料理(辛い!)のレストランなどがあり、一帯の観光地化が進んでいました。


このほか、上海の「四行倉庫抗戦紀念館」、満州事変に関連する遼寧省瀋陽の「九一八歴史博物館」、日清戦争の激戦を伝える山東省威海の「甲午海戦紀念地」など、日本との関係性が深い地も多くあります。「長征」の出発点となった江西省于都も聖地のひとつでしょう。


各地でよく見るのは、賑やかに話しながら革命や戦争の展示を見て回る中高年の団体客です。特に形式ばらず、厳かな感じもそれほどありません。集合写真は皆笑顔。肩ひじ張らずにレッドツーリズムを楽しんでいます。


意外と若者人気もあります。関連観光地の年齢別訪問者数は、18歳以下が16%、18~25歳が20%、26~35歳が30%というデータもありました(23年上半期、オンライン旅行代理店の「途牛」まとめ)。おじさん・おばさんの懐古ツーリズムというだけでもなさそうです。ただ、若年・青年層が多い背景には、「革命の歴史を勉強し、愛国心を高めよう」という政府の思惑もあるのでしょう。学校の行事や企業(特に国有系)の研修でレッドツーリズムが(半ば強制的に)行われる場合もあると思います。


そう思うのは、前述の于都にある長征出発紀念館でのある光景を見たからです。紅軍服に身を包んだ研修団と思しき20代前半の若者グループ。熱心にガイドの説明を聞いている人もいる反面、後ろの方では欠伸をする者、スマホをいじる者、抜け出してタバコを吸う者が多数見られました。仕方なく連れられてきたのでしょうか……。これも現実なのでしょう。


ちなみに、何の自慢にもならないですが、私はここで挙げた観光スポットを全て訪れたことがあります。レッドツーリズム振興に外国人もわずかながら貢献しています。


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東洋証券株式会社 上海駐在員事務所 所長

奥山 要一郎

東洋証券株式会社 上海駐在員事務所 所長 上智大学外国語学部イスパニア語学科卒。通信社、コンサルティングファームを経て、2007年東洋証券入社。本社シニアストラテジストを務め、2015年より現職。中国現地で株式動向のウォッチや上場企業取材などを行い、中国株情報の発信・レポート執筆を手がける。

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