中国現地Now!

「元旦快楽」で辰年スタート、2024年の中国はどうなる?

年初から重大イベント目白押し


2024年がスタートしました。中国では春節(旧正月、今年は2月10日)が重視されるため、本格的な「新年快楽!(あけましておめでとうございます!)」は1カ月ほど先になりますが、それでもニューイヤー感は出ています。街では「元旦快楽」と書かれた装飾が多く見られ、SNSやチャット上でも「元旦快楽」という言葉が飛び交っていました。今年は辰年。まさに「龍の如く」、そして「昇り龍」のように、生活もビジネスも上向きになるよう願っています。


さて、2024年の中国をめぐる出来事やスケジュールをカレンダー風にまとめていきたいと思います。


まずは1月。13日に注目の台湾総統選が行われます。三つ巴の戦いになっていますが、注目点はもちろん、与党民進党の3選なるか、国民党の8年ぶりの政権奪還なるかでしょう。各種報道や分析で伝えられている通り、中国としては国民党政権の方が様々な意味で好ましいと思われます。


いわゆる「台湾有事」の議論は他の専門家に任せたいですが、私がずっと気になっていたのは「台湾の選挙の多くは土曜日が投開票日」ということ。台湾に住んでいた時、何度もこのパターンを経験してきました。ご存じのように、台湾は選挙に関して「超アツい」ことで有名。家族の間で支持政党が異なれば喧嘩になり、街でも候補者や支持者同士のバッシングが繰り広げられます(最近は幾分大人しくなりましたが……)。そのような事情もあり、選挙選は金曜日で終了、土曜日は投開票日で悲喜こもごも、日曜日はクールダウンして、心を整えてから新しい週に臨む……。こんな“選挙ルーティン”があると勝手に考えています。


続いて1月17日には中国の23年主要マクロ統計が発表されます。GDP(国内総生産)成長率は、政府の当初目標の「5.0%前後」を達成できると見られていますが、これをどれだけ上回ってくるかに注目です。


前述の通り、春節は2月10日です。今年は17日までの8連休となります(9日の大晦日は平日扱いですが、政府は各方面で有給休暇取得を勧めています。18日の日曜日は振替出勤日です)。中国では大きなイベントや長期休暇を前にして各種政策発表が行われることもあります。今回の注目点はズバリ、金融緩和です。最優遇貸出金利(LPR、ローンプライムレート)や預金準備率の引き下げが行われるかどうかがポイントになるでしょう。昨年12月に開催された中央経済工作会議でも、「社会の総合的な資金調達コストの引き下げ」に言及していました。


3月5日には全国人民代表大会(全人代)が開幕します。今年の政策方針や成長目標などが示され、24年の政治や経済が本格的に始動します。同26日には海南島で「博鰲(ボアオ)アジアフォーラム年次総会」が開幕します。


4月25日には北京モーターショーが始まります。上海との隔年開催ですが、今年は北京の番。5月4日まで行われる予定です。引き続き新エネルギー車が注目されそうですが、中でも「テック系のEV進出」がさらに本格化しそうです。華為技術(ファーウェイ)、アリババ集団(09988)などに続き、今年は小米集団(シャオミ、01810)、珠海市魅族科技(吉利集団傘下)、上海均瑶集団(上海吉祥航空傘下)などがファーストモデルを投入予定。過当競争も危惧されますが、まさに新エネ車業界で数多くのプレーヤーが入り乱れ、弱肉強食の「戦国時代」となっていきそうです。


5月は何と言っても労働節連休。今年は1日から5日までの5連休です。観光業界にとっては、春節、国慶節と並ぶ書き入れ時。昨年も同じ5連休で、期間中の国内旅行者数は延べ2億7400万人でした。前年同期比で70.8%増、19年同期比でも19.1%増。“コロナ前”を上回った形です。一方、国内観光収入は1480億5600万元で、前年同期比で128.9%増加したものの、19年同期比では0.7%増にとどまりました。今年は観光収入がどこまで戻ってくるかがカギでしょう。



五輪であの中国企業のロゴが登場!


夏になると、オリンピックの話題で盛り上がるでしょう。パリ夏季五輪は、オリンピックが7月26日から8月11日、パラリンピックが8月28日から9月8日の日程で行われます。競技はもちろんですが、経済の観点から注目したいのは企業広告です。中国系では、国際オリンピック委員会(IOC)スポンサーとして中国蒙牛乳業(02319)とアリババ集団、IOCサプライヤーとして安踏体育用品(アンタスポーツ、02020)が“参加”予定。IOCスタッフのウェア上にアンタのロゴが見られることでしょう。宣伝効果は抜群です。


そして秋のビッグイベントは、何と言っても11月5日の米大統領選です。米中関係の行方を占う上でも、民主党政権の継続なるか、共和党が巻き返すかに俄然注目が集まります。結果によっては地政学リスクなどが意識されやすくなり、経済や株式市場にとって大きな変数になるでしょう。同じ11月には恒例の中国国際輸入博覧会が開催されるほか、ネット通販の日「ダブルイレブン」も迎え、何かとイベント尽くしの秋になります。そして年末の12月20日はマカオ返還25周年の記念日となります。


最後に株式市場、特に香港市場で注目されそうなIPO(新規株式公開)を見ておきましょう。今年IPOを目指している主な企業は以下の通りです。


◇菜鳥(ツァイニャオ、アリババ集団傘下の物流事業)

◇冪源科技控股(車載用電池大手)

◇星紀魅族集団(吉利集団傘下のスマホ事業)

◇滴滴出行(DiDi、中国最大の配車アプリ)

◇順豊控股(中国の物流大手) ※中国A株との重複上場

◇美的集団(中国の家電大手) ※同

◇寧徳時代新能源科技(CATL、車載用電池最大手) ※同


昨年は経済も株式もなかなか理想通りには行かない1年でした。今年こそは……と思っている人は中国でも日本でも多いことでしょう。今年のイベントカレンダーを見ながら、事業計画やスケジュールを立てていきたいものです。祝大家新年快楽!


この連載の一覧
ティードリンク市場がアツい! 上場予備軍も続々
不動産市場にまつわるエトセトラ
アンケートから景況感を探る! 貯蓄志向は依然高め
「消費降級」で明暗、外食チェーンの激しい争い
何はなくともカップ麺、鉄道旅のマストアイテム
アジア最大の家電見本市、スマート化に注目
大学生にゲーム規制? 全人代の提議あれこれ
ジェットコースター相場、波乱の1月と2月
変わる中国新エネ車業界、テック系が続々進出
春節前の政策相場、底打ち機運の中国株
朝から「メンクイ」、好みの麺をご賞味あれ
“ポスト・コロナ”の中国、外国人の目にはどう映る?
2年連続で前年割れ、人口減社会に直面する中国
“コロナ前”の水準回復へ、中国旅行市場の現地温度感
「元旦快楽」で辰年スタート、2024年の中国はどうなる?
並ぶのも一苦労、中国ならではの行列事情
ネット通販の主役交代? 好調続くPDD
頼りになる「即時配送」、旅先でも気軽にデリバリー
中国人のリアルボイス、不動産や就職事情を聞いてみた
「有軌電車」でGO! 着々広がる中国の都市交通網
白酒値上げのカラクリ、マオタイの時価を探れ
火鍋を語ろう、中国発のナベトーーク!
スマホオーダーで気軽に一杯、中国コーヒー最新事情
交通規制は突然に、中国式厳戒態勢
中国に「デフレ」という言葉はない?
行楽シーズン到来! 中国のオススメ観光地を大紹介
大型連休がやって来る! 9億人が大移動
ライバル逆襲と使用禁止令、中国でiPhoneはどうなる?
政策後押しで復活なるか、中国の不動産最前線
「水問題」で非難一色の中国、日本バスケで思わぬ展開に?
アリババ&テンセント、進む人員削減とスリム化
イベント消費で経済を回せ、政府も積極支援中
デフレ懸念も何のその、ホテル料金が上昇中
街に活気戻り売上が回復中、中国外食産業の現在地
人口と婚姻数が減少中、中国の若者の人生観とは
空港着いたらライドシェア専用乗り場へGO!
待ちぼうけはつらいよ、夏場のフライトあるある
「貯蓄重視で投資は控え目」、中国人のお金はどこへ向かう?
家族連れで賑わう場面も、端午節のプチ旅行
今年も猛暑? 早くも節電の呼びかけ
「618商戦」がやって来る! ネット通販で買い物三昧
キーワードは「頭文字C」、注目される国有企業の行方
中国でコロナ感染再拡大、それでも市民の多くはノーマスク
中国の若年失業率は20%超、雇用確保が優先課題に
現金要らずの連休旅行、何でもスマホとキャッシュレス
大盛況の上海モーターショー、中国地場系の躍進目立つ
「スラムダンク」が中国でも大人気、初日興収18億円!
「ラストワンマイル」はアナログリレーで解決?
火鍋チェーンの「呷哺呷哺」、一人鍋で存在感
ドライヤー市場に新風来たる、Z世代に人気の新興ブランド
日中間の移動がスムーズに! 国際線の増便・復便進む
復活する消費市場、北京の街に賑わい戻る
復活中の結婚式ニーズ、動き始めたヒト・モノ・カネ
改札時間は15分ジャスト! 中国の鉄道事情あれこれ
酒と言えば白酒! 宴席需要でニーズ増へ
たかが発票、されどファーピャオ
春節映画からの岳飛ブームと聖地巡礼
ノーマスクで新年快楽!? 中国春節の珍プレー好プレー
深夜の配車2時間待ち、春節前ならではの事情とは
中国で旅行ブーム再燃か、海外渡航はそろりスタートへ
賑わい消えた師走の上海、配送バイクも不足気味
中国現地Now!政策緩和と感染急増、混乱する中国市民
中国現地Now!コロナ規制見直しも感染拡大を警戒する中国
中国現地Now!上海デモの最前線、市民の反応と後始末
中国現地Now!政策と実態に大きな矛盾、「中の人」から見た中国コロナ対策
中国現地Now!スマホで気軽にグルメ堪能、中国“ワイマイ”市場最前線
中国現地Now!生活に欠かせない中国の“スーパーアプリ”とは
中国現地Now!Go To 海南!Go To 免税!
中国現地Now!波に乗れない中国消費、逆風下で盛況の飲食店は?
中国現地Now!上海で「水騒動」勃発! パニック買いの背景とは……
中国現地Now!屋台経済が中国を救う? 上海で復活の兆し
中国現地Now!日系外食が苦戦、中国人の胃袋をつかむ戦いは続く
中国現地Now!「映える」火鍋料理、極上の牛肉麺
中国現地Now!円安の恩恵はいずこ? 中国人の海外旅行は夢のまた夢
中国現地Now!中国入国時の“ガチ隔離”を見てみよう
中国現地Now!猛暑と干ばつで電力不足、今年の夏はキツい!
中国現地Now!訪問先で隔離リスク、中国国内旅行は綱渡り状態
中国現地Now!新エネ車が快走中、550万台市場へ視界良好
中国現地Now!勝ち組と負け組で明暗、上海の外食産業の現在地
中国現地Now!上海はその後どうなった? “ポスト都市封鎖”のリアル
中国現地Now!ナイキとアディダスの牙城を崩す中国ブランド
中国現地Now!復権なるか、中国のシェア自転車最新事情

東洋証券株式会社 上海駐在員事務所 所長

奥山 要一郎

東洋証券株式会社 上海駐在員事務所 所長 上智大学外国語学部イスパニア語学科卒。通信社、コンサルティングファームを経て、2007年東洋証券入社。本社シニアストラテジストを務め、2015年より現職。中国現地で株式動向のウォッチや上場企業取材などを行い、中国株情報の発信・レポート執筆を手がける。

奥山 要一郎の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております