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第151回 今後のNZドル米ドル見通し、下値確認でトレンド転換なるか

今回解説していく通貨はニュージーランド(NZ)ドル米ドルです。2025年の前半はトランプ米政権による関税・貿易政策に振らされる相場となっていましたが、市場の目線が少しずつ各国の金融政策へと向きつつあるため、今後はNZ準備銀行(RBNZ、中央銀行)の金融政策にも注目が集まるでしょう。

一方で、テクニカル的には目先の下値を確認したことによる反動が進み、今度は2021年来の下落トレンドが転換する可能性も出てきました。では、チャート上でもNZドル米ドルの状況を確認していきましょう。


2025年現在のNZドル米ドルの相場 4月の荒い値動き一巡後は上値を試す

NZドル米ドルは2025年の初めから上下に振らされる展開となり、次第に値幅を伴った荒い値動きとなりました。4月に入るとさらに値動きが不安定となり、0.54米ドル台から0.60米ドル台で大きく上下。もっとも、下値を確認したとの見方が広がると次第に下値を切り上げ、0.6100米ドル手前まで値を上げています。

 


4月上旬からの荒い値動きはトランプ米大統領の相互関税を始めとする、米関税政策に振らされた結果です。ただ、ニュージーランド製品への米相互関税率は10%のみと相対的に低い水準に抑えられており、4月以降のNZドルはニュージーランド経済への影響で動意付いたわけではありません。世界的な貿易戦争と景気減速への懸念によって、投資家のリスク志向に敏感に反応しやすいNZドルが影響を受けた面が大きかった印象です。

そのため、4月以降に米中間で貿易紛争の解決へ向けた協議が行われ、米相互関税の上乗せ分が延期されると、市場全般のリスク回避姿勢が後退したため、NZドルも買い戻される格好となりました。


今後のNZドル米ドルの相場焦点 米関税政策や中東情勢、NZ中銀の金融政策にも注目

NZドル米ドル相場ですが、今後はニュージーランド内外両面に注意が必要となってくるでしょう。足もとでは米関税政策に対する市場の反応は鈍くなっていますが、米相互関税の上乗せ部分の停止期限が7月9日に迫っており、期限が迫るにつれて市場の注目を再び集めることも予想されます。


さらに直近で大きな相場の材料となった中東を巡る地政学リスクについても引き続き注意が必要です。執筆時点(24日)ではイスラエルとイランが停戦で合意したと報じられていますが、これが無期限の停戦に至るかの判断は難しいとの指摘も聞かれています。

ニュージーランドに対する直接的な影響は乏しいものの、前述したようにNZドルは市場全般のリスク選好度に左右されやすい面を持っているため、今後も外部要因に振らされる可能性には留意しておくべきです。

 

一方で、ニュージーランド国内の状況にも今後は注目しておきましょう。NZ準備銀行(RBNZ、中央銀行)は現在6会合連続での利下げを実施していますが、ホークスビーRBNZ総裁が「金利は中立水準に近い」と言及したように、利下げ局面の終わりも近づきつつあるようです。一時は関税・貿易政策ばかりに注目していた市場も最近では各国の金融政策に再び目を向け始めており、年後半は金融政策が相場を主導する展開へと回帰するかもしれません。


NZドル米ドルの週足分析 下値確認で2021年来の下降トレンドラインを試しにいくか

下図のチャートはNZドル米ドルの週足チャートになります。前回の分析時(4月2日)らの推移を確認すると、4月9日に0.5486米ドルまで下押す場面がありましたが、その後は急ピッチで下値を切り上げる展開となり、6月16日には0.6088米ドルまで上値を伸ばしました。

 


直近の下押しは0.54米ドル台後半までにとどまり、2022年10月安値の0.5512米ドルおよび2020年3月安値の0.5470米ドル(いずれもチャート上の赤丸で囲った分)付近で三度下値を確認した格好となりました。その後の買い戻しで前回に戻りの注目水準として指摘した昨年8月5日安値の0.5850米ドル、昨年4月19日安値の0.5852米ドル(いずれもチャート上の青色実線)を上抜け。

今度は一転して2021年2月高値を始点とする下降トレンドライン(チャート上の黄色実線)を試しにいく可能性が高まっています。ただ、2021年からの下落トレンドが本格反転したと判断するには最低でも2024年9月高値の0.6379米ドル、理想的には2023年2月高値の0.6538米ドル(いずれもチャート上の青丸で囲った分)を上回っておきたいところです。

 

なお、チャート下部に追加した「DMI」で確認すると+DI と-DIは直近で交差を繰り返しており、やや方向感を欠いた状況。トレンドの強さを示すADXも失速しており、現在のトレンドレスの状態を支持しています。


NZドル米ドルの日足分析 0.58米ドル半ばがレジスタンスから一転サポートに

今度は短期的なチャートから相場の流れを改めて確認していきましょう。下図は日足チャートです。チャート上の黄色実線および青色実線は週足分析で紹介したものと同じです。

 


注目すべきは青色水準を巡る攻防。4月中旬に同水準を上抜けると、5月以降は一転して同線がサポートとして機能していることが分かるかと思います。こうした過去のレジスタンスがブレイク後はサポートへと転換することはテクニカル分析でよくある状況です。

さらに今回のチャートに追加した「一目均衡表」によると、転換線と基準線こそ同値にありますが、遅行スパン>価格線、価格線>抵抗帯(雲)が成立しています。今後一目雲がサポートとして機能し、下値を切り上げていけば0.61米ドル乗せの再トライ、さらには転換線>基準線の成立によって強い買いシグナルとされる「三役好転」が点灯する可能性も期待できそうです。


今後の取引材料・変動要因をチェック NZ中銀の金融政策、総裁人事にも注目

最後に今後1カ月間の重要イベントも確認しておきます。期間内に米連邦公開市場委員会(FOMC)は予定されておらず、注目はNZ準備銀行(RBNZ、中央銀行)の金融政策決定会合となるでしょう。RBNZが公表した金利見通しでは今後少なくとも0.25%の利下げがあることが示唆されていますが、その後の中銀当局者からは追加利下げに慎重な意見も聞かれているため、結果は当然として今後の金融政策方針にも注目が集まるでしょう。

 

さらにRBNZに関しては次の総裁人事についても気になるところ。3年の任期を残して突如辞任したオア前総裁ですが、その後に中銀の運営予算削減案をめぐって財務省と意見が合わなかったための辞任であったことが明らかになっています。

その一方でオア前総裁は現在のニュージーランド国民党政権から、パンデミック後のインフレ急騰と景気後退につながった高金利は同氏の責任だと非難を受けていた経緯があります。4月8日に6カ月間の任期で総裁に就任したホークスビー氏も政府からの圧力を受ける可能性があり、今後どのような舵取りをするか注目されます。なお、ホークスビー総裁の任期ですが、最大で3カ月延長される可能性があるとのことで、早ければ今年10月、遅くとも来年には新総裁が選出される見込みです。

その他のイベントは以下の通りとなります。

 

今後1カ月の重要イベント

6月27日 米国 5月PCEコア・デフレーター

7月3日 米国 6月米雇用統計

7月9日 NZ NZ準備銀行(RBNZ)、金融政策

7月15日 米国 6月消費者物価指数(CPI)

7月21日 NZ 4-6月期CPI

この連載の一覧
第151回 今後のNZドル米ドル見通し、下値確認でトレンド転換なるか
第150回 今後のメキシコペソ円見通し、レンジ継続も上抜けチャンスが到来
第149回 今後の豪ドル円見通し、調整が深まるか直近安値の維持が焦点に
第148回 今後のユーロ円見通し、貿易リスクはあるがチャート上では上昇期待も
第147回 ドル円相場見通し、一段の円高へと向かうリスク 2025年中に120円台もあり得るか
第146回 NZドル円(nzdjpy)相場予想、追加利下げ濃厚も下落トレンドは終了か?
第145回 トルコリラ円(try/jpy)相場予想、過去最安値更新で止まらぬ下落
第144回 ユーロドル為替相場予想、トレンド反転の判断は慎重に
第143回 南アフリカランド円相場予想、一目雲下限を維持できるか注目
第142回 豪ドル米ドル相場予想、下降トレンドへの移行で下押し圧力も増すか
第141回 ポンド円、下押し圧力を警戒すべき局面
第140回 NZドル米ドル、下落トレンド転換のチャンス到来か
第139回 メキシコペソ円、反発に向けたラストチャンスか
第138回 豪ドル円、調整局面入り
第137回 ユーロ円、昨年8月安値が再び焦点に
第136回 ドル円、短期的な下値リスクに要注意
第135回 NZドル円、さらなる下値余地拡大に注意
第134回 トルコリラ円、過去最安値更新が視野に
第133回 ユーロドル、2023年来のレンジ相場を下方ブレイク
第132回 ランド円、直近の下げ加速なら2020年来のトレンドも怪しく
第131回 豪ドル米ドル、レンジブレイクを回避できるか
第130回 ポンド円、ダブルトップの完成が迫る
第129回 NZドル米ドル、一転下落で下値目標も迫る
第128回 メキシコペソ円、現状は7円台のレンジ相場
第127回 豪ドル円、穏やかな上昇トレンドながら下値リスクもちらり
第126回 ドル円、ポジティブな状況だがあまり強気に立ち回ると・・・
第125回 ユーロ円、直近安値の維持がポイントに
第124回 NZドル円、新たな下落トレンドがスタートか
第123回 トルコリラ円、週足でのトレンド転換はまだまだ遠く
第122回 ユーロドル、下値余地拡大の可能性に注意
第121回 豪ドル米ドル、慎重な判断が求められる局面
第120回 ランド円、一目均衡表の雲上限が今後のポイントに
第119回 米大統領選後のシナリオ別相場展望
第118回 米大統領選のアノマリー
第117回 米大統領選の直前特集、FX初心者向けガイド
第116回 ポンド円、上昇トレンドチャネルが維持できれば・・
第115回 NZドル米ドル、「三角保ち合い」は上方ブレイクで決着
第114回 ドル円、1年半続いた上昇トレンドが終了して今後は?
第113回 ポンドドル、10年来の下げ相場転換に向けて
第112回 メキシコペソ円、一段の下値余地拡大に注意
第111回 豪ドル円、4年続いたトレンドが終了
第110回 トルコリラ円、売り材料豊富で買い向かうには・・
第109回 NZドル円、相対的な上値の重さが目立つ
第108回 ユーロ円、はたして「ダマシ」だったのか
第107回 ランド円、週足は上昇トレンド崩れたが月足は?
第106回 豪ドル米ドル、保ち合いか下落トレンドか
第105回 NZドル米ドル、「三角保ち合い」のブレイクを見極めたい
第104回 ドル円、上昇トレンドは崩れていない
第103回 ポンド円、順調に上値試しを継続
第102回 メキシコペソ円、2022年からの上昇トレンドは終了?
第101回 ユーロドル、現在の下落基調でレンジブレイクなるか
第100回 トルコリラ円、週足ベースでも変化の兆し
第99回 豪ドル円、10数年ぶりの高値の視野に
第98回 NZドル円、ますます上昇トレンドが明瞭に
第97回 ポンドドル、短期的には上方向へ
第96回 ユーロ円、ユーロ導入来高値更新で未知の領域へ
第95回 ランド円、10数年来の相場転換となる可能性も
第94回 ドル円、急落後も上昇トレンドを維持
第93回 メキシコペソ円、上昇トレンドは健在だが・・
第92回 トルコリラ円、大きなチャンス到来か
第91回 豪ドル米ドル、上方向は攻めづらい
第90回 NZドル米ドル、トレンド転換につながる注目ポイントに接近
第89回 ユーロドル、ヘッド・アンド・ショルダーズの完成なるか
第88回 ドル円、5月中にも上方向へブレイクか
第87回 豪ドル円、上昇トレンド継続に黄色信号
第86回 NZドル円、上昇トレンド継続も目先は調整リスク
第85回 ポンドドル、長期下降トレンドの転換は間近?
第84回 ランド円、上昇トレンドは本物か
第83回 メキシコペソ円、レンジブレイクのチャンス到来
第82回 ユーロドル、レンジ相場脱却の手掛かりは乏しい
第81回 トルコリラ円、昨年8月以来のチャンスをものにできるか
第80回 ドル円、上昇トレンドを維持も上値追いは慎重に
第79回 NZドル米ドル、長期下落トレンドのブレイクは失敗か
第78回 豪ドル米ドル、依然として下落トレンド
第77回 ポンド円、来年以降の下値リスクに警戒
第76回 ランド円、ヘッドアンドショルダーズの可能性高まる
第75回 メキシコペソ円、レンジ相場がしばらく継続か
第74回 ユーロドル、メインシナリオはレンジ相場
第73回 ドル円、ポイントは一目均衡表雲の維持
第72回 低迷ぶりが際立つトルコリラ円、反発の可能性は?
第71回 豪ドル円、上値トライのチャンスだが力強さを欠く
第70回 NZドル円、いよいよ過去最高値も視野入りか
第69回 ユーロ円、月足チャートでは不安なし 週足では?
第68回 ポンドドル、一目雲に接近で正念場に
第67回 ランド円、ヘッドアンドショルダーズの懸念消えず
第66回 NZドル米ドルに反発のチャンス到来?
第65回 好調なメキシコペソ円に失速の気配
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第62回 リラ円、一目雲を数年来上抜けできず
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第39回 ダウ理論とエリオット波動(3)
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第36回 ローソク足(3)
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第33回 一目均衡表(4)
第32回 一目均衡表(3)
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第6回「誰にでもわかるチャート教室」 移動平均線~その2
第5回「誰にでもわかるチャート教室」 移動平均線~その1
第4回「誰にでもわかるチャート教室」チャネルラインと外国為替市場の独自性
第3回「誰にでもわかるチャート教室」相場の方向性が一目瞭然、トレンドライン
第2回「誰にでもわかるチャート教室」相場のトレンドを探る
第1回「誰にでもわかるチャート教室」 相場が不安定だからこそ、チャート分析に頼りたい

為替情報部 アナリスト

岩間 大祐

大学卒業後の2004年に国内証券会社に入社。 外国為替証拠金取引業務に携わった後、金融情報サービス会社にて個人投資家向けの為替情報配信業務を担当。市況サービスのほか、テクニカル分析を軸にした情報を配信する。 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト。

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