定番の敦煌でプチシルクロード気分
中国は秋の大型連休の真っ只中です。今年は中秋節と国慶節が重なり、9月29日から10月6日までの8連休。期間中の旅行者数は9億人に上ると予想され、“コロナ前”の2019年を上回りそうです。
連休が始まる前の平日、9月27日早朝に上海虹橋空港を利用しました。朝6時にもかかわらず出発ターミナル前の道路は渋滞ができており、普段より15分ほど時間をロスしました。各地の有名観光地では早くも混雑が伝えられています。また、この休みを利用して実家に帰る人も多くいます。上海在住の知り合いは地元の福建省に帰省する予定ですが、「帰りは飛行機のチケットを取れたが、行きの高速鉄道がどうしても予約できない」と頭を抱えていました。「一票難求」と表現されるように、チケットは購入困難な状態が続きます。
さて、激混み必至の人気観光スポットをいくつか挙げてみたいと思います。私の経験から独断と偏見に基づくものですが、皆様の参考になれば幸いです。
まずは甘粛省敦煌。もう定番の人気観光地ですね。今年、上海からの直行便が運航を開始し、4時間強で行けるようになりました。これまでは西安や蘭州などで乗り換える必要があったため、だいぶ時間が短縮されます。
敦煌で誰もが訪れるのは、砂漠の中にある三日月型の湖「月牙泉」と「鳴沙山」でしょう。ラクダに乗ってゆっくり向かうのがオススメ。プチシルクロード気分を味わうことができます。また、世界文化遺産の莫高窟で壁画や仏塑像を鑑賞するのも外せません。玉門関と陽関という西域へのゲートウェイも必見で、古の使節団や商人、武将などに思いを馳せるのも一興です。さらに足を伸ばし、敦煌ヤルダン国家地質公園に行けば雨水や風蝕によって形成された奇岩群を見ることができます。
曹操、昭和ノスタルジー、ご当地グルメ
河南省安陽には三国志ファンにとってたまらない観光スポットが今年お目見えしました。ズバリ、曹操高陵(曹操の墓)です。08年に発見され、調査や整備が進み、やっと曹操高稜博物館として一般公開されました。19年に東京国立博物館などで開催された三国志展では曹操の墓が実寸大で再現され、来場者の関心を引いていました。曹操ゆかりの地の安徽省亳州(はくしゅう)、河南省許昌などとセットで訪れるのも最高です。
東北地方に目を移すと、レトロな街並みが印象的な吉林省長春が近年注目されています。旧満州国時代は「新京」と呼ばれ、「満州レトロ」という言葉が連想される街。ただ、中国では当然のことながら侵略の歴史の一部として捉えられています。とは言え、市内は当時の趣が色濃く残り、特に「八大部」と呼ばれる満洲国国務院の傘下部署の建物群が有名です。今では格好の観光スポットとなり、多くの観光客が訪れます。
また、偽満皇宮博物館(偽満州国皇宮)も必見スポット。荘厳かつやや古びた建物に入ると、日本人として昭和ノスタルジーを感じざるを得ないでしょう。まるで約80年前の「溥儀の時代」にタイムスリップしてしまう感も受けます。満州映画株式会社の流れをくむ長春電影制片廠も興味深いです。中国共産党関連の観光資源を巡る「紅色旅游」(レッドツーリズム)に絡められることもあり、観光客が多数訪れます。
南部の福建省では泉州をオススメします。ここで楽しむべきはご当地グルメ。特に泉州市の管轄下にある晋江の名前を取って「晋江小吃」と呼ばれることが多いです。「姜母鴨」(鴨肉をベースに生姜、酒、ごま油、数種類の漢方をブレンドして作られた鍋料理)、「海蛎煎」(牡蠣入り卵焼き)、「麺線糊」(とろみのスープで煮込んだ極細麺)などが代表的で、「魚丸」(フィッシュボール)や「肉粽」(ちまき)など日本人の口に合うものも多く見られます。海のシルクロードの拠点の一つだったこともあり、仏教寺院やイスラム寺院が混在する街並みも必見です。
最後は、“中国のハワイ”と称される海南島。三亜でリゾート気分に浸るも良し、海口で南国風のレトロな街並みを歩いたり、世界最大級の免税店を訪れるも良し。様々な楽しみ方があります。その中で私がイチ推ししたいのは、またもやご当地グルメの「清補涼」です。中華風デザート「糖水」の一種で、薬膳系スイーツとでも言えましょうか。甘い薬膳スープに地元産の椰子の実やタピオカ、タロイモ、小豆、緑豆、寒天などをトッピングして食べます。南国気候の中で食べるひんやりとした食感は格別です。
この一品を愛したのは、北宋の政治家として活躍した蘇軾(蘇東坡)。政治的争いに巻き込まれ、1097年に海南島に流されてしまった人物です。彼は文豪、そして食通としても知られますが、海南島で出会った清補涼をたいそう気に入り、毎日必ず食べていたそうです。
おやつにも食後のデザートにも適した清補涼。椰子の実には植物性タンパク質と必須アミノ酸が豊富に含まれ、さらにはビタミンEの補給にも適していることから、現地では健康食品とされることもあります。お店によって味やトッピングが異なるのも特徴。私は、南部の三亜でフローズンアイスが一緒になったかき氷タイプの一品を食したほか、北部の海口では南国フルーツが入ったものも楽しみました。機会があれば皆様にもぜひ味わっていただきたい一品です。