春運スタート、混雑する鉄道駅
中国の新年は春節(旧正月、今年は1/22)がメインです。新暦元旦(1/1)は中国語で「跨年」と言い、それほどは重視されない一方、「過年」と呼ばれる春節正月は超特大イベントの趣があります。やや大げさですが、「故郷に絶対に帰り、家族団らんをしなければならない」という強迫感や信念すら感じられるほどです。
「春運」(チュンユン=春節期間の特別輸送体制)の初日に当たる1月7日。上海駅前のコンコースに設けられた鉄柵通路(ディズニーランドのアトラクションの順番待ちのイメージ)の中を、大勢の帰省客や旅行客が列を作って進んでいました。早朝だったので超混雑とは言えませんが、普段よりは大きなスーツケースやキャリーカートを持った人が多いように感じました。高速鉄道のターミナル駅である上海虹橋駅も混んでいたようです。
私も列に並んで駅の中に入り、高速鉄道に乗りました。向かった先は上海のお隣の江蘇省・泰州。新型コロナの大感染を経て、街がどうなっているかを見てきました。結論から言うと、観光スポットやレストラン、中心街などはガラガラで寂しい限り。市民がコロナを恐れて外出を自粛しているのか、そもそもコロナに罹って外出できないのか、はたまた春節前の閑散期なのか、理由はよく分かりません。いずれにせよ、テレビなどで報じられている「街に人が戻ってきた!」というポジティブニュースとはかなり異なる静かな光景でした。路線バスに乗った際、目的地で降りるまで乗客は私1人ということもありました。泰州からほど近い南京や揚州はそれなりの人出だったと聞きますので、失礼ながら観光地としての魅力の差が出てしまったのかもしれません。
さて、冬の観光地として人気が高いのは海南島です。中でも南部の三亜がリゾート地の代表格。実は海南島のシーズンは夏ではなく冬になります。中国各地から“避寒旅行”と称して多くの観光客が訪れるため、年末から春節にかけて書き入れ時を迎えるのです。
航空チケット代も値上がりしています。昨年は上海から三亜行きのフライトは片道数百元程度の時もありましたが、この春節期間中は定価にほぼ近い3000元前後となっています。ホテル代も高騰中。2年前、ゼロコロナ政策の真っ最中に訪れた民宿は1泊300元ほどでしたが、今はその3倍近くに上がっていました。高級ホテルの中には1500元や2000元など強気の価格設定をするところもあります。観光客が少なかった昨年までの割引設定とは大違いです。
車の呼び出しはお早目に……
上海の街でも中国の新年を前にした「師走感」が漂ってきました。この時期になると、職場などが主催する食事会(忘年会)が多く行われるものですが、今年はその光景をあまり見かけません。コロナによる自粛の影響があるのでしょうか。よって、ホテルの宴会場や大型レストランの需要はまだ戻っていないようです。一方、街のレストランやバーなどの客の入りはまずまずといった感じ。人気火鍋店には長蛇の列ができるほどです。もっとも、昨年の上海封鎖(ロックダウン)解除後も感じたのですが、人気店はブランクがあってもすぐに回復する一方、それほど流行っていない店は変化なし。むしろ経営状態が悪化して閉店に追い込まれるケースも数多く見てきました。外食産業の優劣が今まで以上に如実に表れている気がします。
先日、食事会からの帰りが遅くなり、夜11時に配車アプリの滴滴(ディディ)で車を呼ぶことにしました。ところがここで大問題が発生。アプリを開き車を呼び出してみると、なんと「200人待ち、待ち時間2時間以上」との表示が出てきます。昨年はすぐに空車が見つかったため、今回も安心しきっていたのですが……。
恐らく、雨という悪条件でそもそも車がつかまりにくいことに加え、ドライバーの多くが早めの帰省で上海から離れてしまい、需給がひっ迫しているのではないかと思います。北京の知り合いも同じ状況で困ったと言っていました。そういえばこういう時は、お店を出る30分前くらいから車を予約しておくのが鉄則だったな……。混雑時のテクニックを久しぶりに思い出しました。コロナ禍を経て、新しい生活様式への転換と共に、“コロナ前”のライフスタイルを取り戻すことが必要なようです。