自民党総裁選から解散・総選挙へ・・・第1次石破ショック
9月27日に行われた自民党総裁選では、第1回目の投票で利上げ反対・財政拡大をモットーとした高市早苗氏が議員票と党員票ともにリードしたことで、市場は円売り・株買いに動きました。ドル円は144円台から146.49円まで上昇しました。
しかし、決選投票では議員からは不人気とされていた石破茂氏が逆転し、自民党総裁選で勝利を収めました。
そして、石破氏が利上げを容認し、金融所得課税の実施も肯定的だったことで、為替市場は円買い、株式市場は大幅下落になるなど、「(第1次)石破ショック」が起こりました。ドル円は146.49円から142.07円まで、翌営業日には141.65円まで下がりました。
短期的と中長期的は違う
石破氏と高市氏の有力2候補は日銀に対する姿勢や財政について相違が明らかだったこともあり、総裁選で両者のうちどちらが勝つかで市場が敏感に反応するのは当然の結果でした。
一方もう一人の有力候補だった小泉進次郎氏に関しては、受け答えも何を言っているか分からないと評されているように、日銀や財政に関しても不透明なままでした。
このように、株価が大幅に下がったことで石破氏が「悪い」、逆に高市氏が「良い」とは一概には言えません。
市場参加者は短期的に鞘を得ることが出来るのであれば、それを狙わなければ相場師として失格です。
ただし、これはあくまでも短期的なことであり、中長期的には違います。
例えば超保守とされる高市氏は首相就任後も靖国神社への参拝を行うと述べていました。
この場合には中国、韓国だけではなく、日中・日韓でもめてほしくない米国からも拒否反応が出たことでしょう。
また、財源が不透明な中で財政拡大路線を行ったら、市場から烙印を突き付けられて僅か44日で辞職に追い込まれたトラス英首相と同じ道をたどるとの声もありました。
よって中長期的には、いくら利上げに反対しようが中長期的には為替市場も株式市場もどう動くかは未知数です。
ただし、市場は不確定の中長期よりも、確定的な短期的なもので動くのは当然だったので、今回の相場展開は想像通りに動いたと言えるでしょう。
第2次石破ショック・・・石破氏の変節
先週の政局で一番驚かされたのは石破氏が突如衆議院選挙を10月15日公示の29日投開票をする方針を示したことです。
これまでは、国会論戦を通じて有権者に判断材料を示してから衆院を解散する考えとしていたものが急転しました。
石破氏の予想外の行動は、これだけにはとどまらず10月2日には植田和男日銀総裁との会談後、「個人的には現在、追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない」「これから先も緩和基調を維持しながら経済が持続的に発展することを期待している」と述べました。
相場は一転株高・円安になり、4日には米雇用統計の結果もありドル円は148円台まで上昇しました。「第2次石破ショック」(もしくは逆石破ショック)とも呼ばれています。
これまでの日銀の利上げを容認していた石破氏ですが、「第1次石破ショック」により、円高はまだしも、株安になったことで、総選挙を迎えるうえで株安になっては困るから、このような発言を行ったといううわさもあります。
総選挙次第で相場は再び混迷と予想
総裁選の前倒しは野党が準備ができる前に選挙を行う、期待が先行している時期に行う、などと言われています。
しかし、本当に石破・自民党政権の思惑通りに事が進むかは全く未知数です。
米大統領選挙もバイデンVSトランプの場合はトランプ氏の圧勝が予想されていました。
ところが、ハリス副大統領がバイデン大統領と変わって民主党の大統領選の候補になると、流れが一転しました。
さらに自民党政権はこれまでも裏金や旧統一教会などの問題をいまだに解決できていません。
総理就任の僅か1週間でこのようにクルクルと変える石破総理に有権者がどのような判断を下すかも分かりません。
よって、石破総理の考えているシナリオ通りにいくかは不透明な状況です。
今後発表される世論調査や、公示で出てきた候補の騰落予想などで、どのように選挙が進むか分からないでしょう。
現在の政権与党が勝てるかも分かりません。
また、たとえ与党が勝てたとしても議席を大幅に減らした場合には、石破総理が責任を取らされ、辞任圧力が高まるかもしれません。
さらに、勝てた場合でも、これだけ変節を繰り返している石破氏ですので、選挙が終わってしまえば日銀の利上げに反対をしない可能性すらあるでしょう。
更に円安が急速に進んだことで、これだけ変節を繰り返す石破首相ですので円安けん制すら入る可能性もあります。
これからしばらくの間は政治に翻弄されることは確実で、10月の円絡みの市場は更に神経質に動きそうです。