やってはいけないこれだけの理由

第114回「ディーラーは変わり身が早いのを知らないでやってはいけない」

エコノミストとディーラー


銀行や証券会社などの金融機関にはエコノミストの方が多数存在しています。

FXの部門でも今後の為替動向を中長期的に研究・判断するエコノミストの方もいます。

FX関係者も経済指標の強弱や、今後の市場動向を読み解くためにエコノミストの意見や論文を参照することが多々あります。


しかしながら、エコノミストとディーラーが蜜月関係かと言えば、そうではありません。

中長期的に物事を判断するエコノミスト、売ったり買ったりと日々の取引を繰り返すディーラー、では相場を見る観点が違うのです。

エコノミストからすると、その時一瞬でも儲かれば良いディーラーを軽んじている人がいます。

一方、ディーラーの中には、口だけで実際に儲けているわけではないエコノミストに対して拒否反応を示している人もいます。


お互いの業務や観点が違うわけですので、どちらが正しい、正しくないではないのです。


変わり身が早いのがディーラー


今年に入り、ドル円は7月3日には161.95円まで上昇し、1986年12月以来のドル高・円安になりました。

私も7月上旬の円安局面では、「このままだと180円、いや200円まで円安になる可能性もあるな」と思っていました。

その時点でもし報道に聞かれたら、やはり「180-200円まで円安が進むリスクがあるでしょう」と述べていたと思います。


ところが、僅か2カ月超で140円を割り込み、昨年7月以来の水準まで下がるなど、ドル円は乱高下を繰り返しています。


先日ネットのニュースを見ていて、円高が進んだ記事へのコメントで

「この前まで200円って言っていた奴らはどうしたんだ?」

「日本売り、円売りと叫んでいたではないか」などと辛らつな発言が目立っていました。

このような記事を読んでどう思うかと言えば、むしろ「過去は過去なんだから、そんなこと指摘して馬鹿ではないか?」という印象です。



わずか1-2カ月の間とはいえ、日銀と米連邦準備理事会(FRB)の政策金利の捉え方が変わり、経済指標も強弱が出ているわけで、いつまでも7月上旬の考えを変えないでFXを取引するわけがないということです。

変わり身が早いのがディーラーですので、逆にいつまでも円安・日本売りなどに拘っているディーラー(もしくは元ディーラー)がいるとすれば、それはこれまでも儲かっていないディーラーです。


例えば、新聞などで金融機関の方に今後数カ月の予想レンジが掲載されたりします。

私もかつて聞かれたことがありましたが、出来たら応えたくないと思っていました。

というのも、その時はそう思っても、その1日後、1時間後には全く逆の考えになっている可能性すらあるからです。

要は、報道で出ている予想レンジを出している本人もそこまで真剣に考えていない人も多いわけです。


さて、米連邦公開市場委員会(FOMC)では50ベーシスポイントの利下げをしたFRBですが、パウエルFRB議長は「0.50%の利下げは後手に回らないという決意のサイン、新たなペースと見なすべきではない」と話し、今後の大幅利下げ継続を否定しています。

また、長期金利見通しは2.875%と前回の2.750%から上方修正しています。


今後は日銀とFRBの動きを見定めることになりますが、ディーラーは変わり身が早いです。

これまでのレンジ予想などを妄信してはFXをやってはいけないでしょう。




この連載の一覧
第124回「12月の日銀政策決定会合・・・データを信じてやってはいけない?」
第123回「FXは専門家に任せてやってはいけない」
第122回「トランプ相場もアジア通貨の動きを見ないでやってはいけない」
第121回「第2次トランプ政権・・・Xを見ないでやってはいけない」
第120回「いよいよ大統領選挙・・・この通貨の動向を知らないでやってはいけない」
第119回「円買いの流れを一瞬で止めた石破政権・・・今後の政局を知らないでやってはいけない」
第118回「想定為替レートを知らないでやってはいけない」
第117回「日銀には独立性がないことを知らないでやってはいけない」
第116回「ダブル石破ショック・・・今月は政治に翻弄されることを知らないでやってはいけない」
第114回「ディーラーは変わり身が早いのを知らないでやってはいけない」
第113回「FRBの2大責務…今は何を重要視しているかを知らないでやってはいけない」
第112回「バイアスがかかった考えをもってやってはいけない」
第111回「円相場を見るならアジア通貨の動きを見ないでやってはいけない」
第110回「7・8月の相場を振り返る・・・この反省を生かさないでやってはいけない」
第109回「日銀の政策決定会合の結果発表時間がなぜ定まらないのか」
第108回「日銀のパラダイムシフト2…正副総裁が市場流動性を破壊」
第107回「日銀のパラダイムシフト…これまで通りの考えでやってはいけない」
第105回「スポーツ賭博もFXも②・・・嘘が常態化する人はやってはいけない」
第104回「自分が一番大事?・・・様々なことを勘繰らないでやってはいけない」
第103回「円安を本当に止める気があるのか・・・何が信用できるかを確かめないでやってはいけない」
第102回「クロス円をしっかり見ないでやってはいけない」
第101回「介入を過度に警戒してはいけない」
第100回「CPI後のFOMC、ドットプロントに織り込んだか吟味しないでやってはいけない」
第99回「南ア政局・・・これを知らないでランド取引はやってはいけない」
第98回「G7財務相・中央銀行総裁会議・・・結果を調べないでやってはいけない」
第97回「南ア総選挙、これを知らないでやってはいけない」
第96回「ラーメン3000円も高くない、自作自演の円安を知らないでやってはいけない」
第95回「利上げだけで円安が止まると思ってやってはいけない」
第94回「介入にも限界があることを知らないでやってはいけない」
第93回「スポーツ賭博もFXも①・・・バンプはやってはいけない」
第92回「毎回同じ理由で動くと思ってやってはいけない」
第91回「クロス通貨・・・どのように算出しているか知らないでやってはいけない」
第90回「FXの世界のギャンブル依存症・・・このような人はFXもやってはいけない」
第89回「カントリーリスク・・・混迷する世界情勢を知らないでやってはいけない?」
第88回「チャートポイントを信じますか?・・こんなチャート利用法はやってはいけない」
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第83回「中央銀行も変わる・・・マイナーチェンジを知らないでやってはいけない」
第82回「コンプライアンス・・・時代の移り変わりを知らずにやってはいけない」
第81回「こういう人はFXをやってはいけない③・・・利食えない人はやってはいけない」
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第77回「今年1年は何をやったら儲かったか・・・反省せずに来年はやってはいけない」
第76回「昨年の値動きを忘れずにやってはいけない」
第75回「今年は今週でおしまい?・・・最後の2週間はやってはいけないこと」
第74回「実弾介入しか防げない・・・根強い円安基調でやってはいけないこと」
第73回「感謝祭相場・・・11月の特別事情を知らないでやっていけない」
第72回「要人発言を吟味しないでやってはいけないこと・・・介入は入らない?」
第71回「スイスフランの値動きを見ないで、やってはいけない」
第70回「10月の介入実績ゼロ、介入の噂だけを信じてやってはいけない」
第69回「下手な鉄砲は数撃っても当たるのか?・・・動かない相場の時は何をしてはいけないか」
第68回「中東紛争・・・過去とのFXの動きが違うことを考慮しなくてやってはいけない」
第67回「NZ総選挙を知らずにやるな・・・今日はNZドルに要注意」
第66回「米政治・次回は政府閉鎖も・・・FXも動く可能性あり」
第65回「月末は余裕がない人はやってはいけない」
第64回「ストライキ・・・舐めてはいけない経済への影響」
第63回「どうせなら格好よく言おう・・・こういえば通と思われる?」
第62回「NZ・10月総選挙・・・これを知らないでNZドルを取引してはいけない」
第61回「食料インフレ・・・国によって違うことを知らないでやってはいけない」
第60回「インフレ指標・・・これを知らずにやってはいけない」
第59回「夏枯れ相場でも手を出す3タイプのディーラー・・・やってはいけないのは?」
第58回「中銀は内容だけでなくスケジュールも異なる」
第57回「日銀?分からないときはやってはいけない・・・海外勢は理解不能」
第56回「ブラックアウト期間を知らないでやってはいけない…国によっても違う」
第54回「新聞を確かめずにやってはいけない」
第53回「スワップポイントを知らずにやってはいけない」
第52回「日銀の利上げ?・・・準備を怠らずにやってはいけない」
第51回「対ドル以外の取り引きを見ないでやってはいけない」
第50回「時間帯を知る②東京市場とは・・・これを知らずにやってはいけない」
第49回「時間帯を知る①月曜早朝取引・・・これを知らずにやってはいけない」
第48回「歴史は繰り返す・・・過去の動きを忘れてやってはいけない」
第47回「政治的な動きを知らなくてはやってはいけない」
第45回「経済指標での動きを50/50と思ってやってはいけない」
第46回「常に知識・情報をアップデートしないといけない」
第44回「銀行の融資状況を知らなくてFXをやってはいけない」
第43回「雇用・CPI等から、新たな視点に変えないでやってはいけない」
第42回「フェドウォッチを見ないでFXをやってはいけない・・・年末は95%利下げ予想」
第41回「高金利通貨は各国の状況を知らないとやってはいけない」
第40回「金融危機はまだ去っていない、最良のCEOの言葉を無視してはやってはいけない」
第39回「ドットプロットとフェドウォッチのずれを判断しないでやってはいけない」
第38回「若者こそFX取引を・・・その2、やってはいけないでなく、やってほしい」
第37回「銀行の救済問題、詳細を把握せず取引してはいけない」
第36回「若者こそFX取引を・・・その1、やってはいけないでなく、やってほしい」
第35回「肌感覚を大切にしないでやってはいけない」
第34回「タカ派・ハト派を知らずやってはいけない」
第33回「政治家の発言を吟味して取引しないといけない」
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為替情報部 アナリスト

松井 隆

大学卒業後、1989年英系銀行入行。入行とともに為替資金部(ディーリングルーム)に配属。以後2012年まで、米系、英系銀行で20年以上にわたりインターバンクのスポット・ディーラーとして為替マーケットで活躍。ロンドン本店、アムステルダム、シンガポール、香港の各支店でもスポット・ディーラーとして活躍する。 銀行退職後は本邦総研、FX会社のコンサルティング、ビットコインのトレーディング等多岐にわたって活躍。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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