エコノミストとディーラー
銀行や証券会社などの金融機関にはエコノミストの方が多数存在しています。
FXの部門でも今後の為替動向を中長期的に研究・判断するエコノミストの方もいます。
FX関係者も経済指標の強弱や、今後の市場動向を読み解くためにエコノミストの意見や論文を参照することが多々あります。
しかしながら、エコノミストとディーラーが蜜月関係かと言えば、そうではありません。
中長期的に物事を判断するエコノミスト、売ったり買ったりと日々の取引を繰り返すディーラー、では相場を見る観点が違うのです。
エコノミストからすると、その時一瞬でも儲かれば良いディーラーを軽んじている人がいます。
一方、ディーラーの中には、口だけで実際に儲けているわけではないエコノミストに対して拒否反応を示している人もいます。
お互いの業務や観点が違うわけですので、どちらが正しい、正しくないではないのです。
変わり身が早いのがディーラー
今年に入り、ドル円は7月3日には161.95円まで上昇し、1986年12月以来のドル高・円安になりました。
私も7月上旬の円安局面では、「このままだと180円、いや200円まで円安になる可能性もあるな」と思っていました。
その時点でもし報道に聞かれたら、やはり「180-200円まで円安が進むリスクがあるでしょう」と述べていたと思います。
ところが、僅か2カ月超で140円を割り込み、昨年7月以来の水準まで下がるなど、ドル円は乱高下を繰り返しています。
先日ネットのニュースを見ていて、円高が進んだ記事へのコメントで
「この前まで200円って言っていた奴らはどうしたんだ?」
「日本売り、円売りと叫んでいたではないか」などと辛らつな発言が目立っていました。
このような記事を読んでどう思うかと言えば、むしろ「過去は過去なんだから、そんなこと指摘して馬鹿ではないか?」という印象です。
わずか1-2カ月の間とはいえ、日銀と米連邦準備理事会(FRB)の政策金利の捉え方が変わり、経済指標も強弱が出ているわけで、いつまでも7月上旬の考えを変えないでFXを取引するわけがないということです。
変わり身が早いのがディーラーですので、逆にいつまでも円安・日本売りなどに拘っているディーラー(もしくは元ディーラー)がいるとすれば、それはこれまでも儲かっていないディーラーです。
例えば、新聞などで金融機関の方に今後数カ月の予想レンジが掲載されたりします。
私もかつて聞かれたことがありましたが、出来たら応えたくないと思っていました。
というのも、その時はそう思っても、その1日後、1時間後には全く逆の考えになっている可能性すらあるからです。
要は、報道で出ている予想レンジを出している本人もそこまで真剣に考えていない人も多いわけです。
さて、米連邦公開市場委員会(FOMC)では50ベーシスポイントの利下げをしたFRBですが、パウエルFRB議長は「0.50%の利下げは後手に回らないという決意のサイン、新たなペースと見なすべきではない」と話し、今後の大幅利下げ継続を否定しています。
また、長期金利見通しは2.875%と前回の2.750%から上方修正しています。
今後は日銀とFRBの動きを見定めることになりますが、ディーラーは変わり身が早いです。
これまでのレンジ予想などを妄信してはFXをやってはいけないでしょう。