中国株の銘柄選び

意外と身近にある中国株、街中で探してみた(4) ロクシタン、南仏プロバンス発祥の自然派コスメブランド

中国株への投資を始めてみたいけど、どんな銘柄に投資していいか分からない。そんな場合は、身近にある上場企業に投資してみるというのも一つの手です。そこで今回は、意外と身近にある中国株というテーマで、身近にある中国株の銘柄を紹介したいと思います。日本でも意外と中国株銘柄の商品やサービスを探すことができます。今回は街中で中国株銘柄を探してみました。


ロクシタンの化粧品


ロクシタンの夜用美容液「イモーテル オーバーナイトリセットセラム」


今回見つけたのは、「L'Occitane(ロクシタン)」ブランドの化粧品です。「ロクシタン」と言えば、言わずと知れたフランスの自然派コスメブランドです。天然成分やオーガニック成分を使用した植物由来の化粧品が特徴で、ギフトやお土産の定番にもなっています。日本でも都市部を中心に124店(23年11月時点)もの店舗があるので、見かけたことがあるという人は多いのではないでしょうか。


ホテルのアメニティとして「ロクシタン」の化粧品を置いているところもあります。また、日本では女優の波瑠さんが、2023年10月からブランドアンバサダーを務め、テレビCMでも流れているので、目にしたことがある人は多いと思います。ただ、そのフランスの化粧品メーカーが香港証券取引所に上場していることを知っている人は、もしかしたら少ないかもしれません。


南仏プロバンスで1976年に創業


ロクシタンの創業は1976年。南仏プロバンスの農家に生まれたオリビエ・ボーサンが、学生だった23歳のときに立ち上げた会社です。オリビエ・ボーサンは自然豊かな故郷プロバンスの魅力を伝えるため、農家の納屋で眠っていた古い蒸留器を購入し、地元プロバンスのローズマリーからエッセンシャルオイルを抽出したところから、ロクシタンの歴史は始まります。このエッセンシャルオイルを市場で販売したところすぐに評判となります。そして地元で本格的な生産を開始したのです。


ロクシタンという社名は、プロバンス地方を指す古い呼び名「オクシタニ」に由来し、その地で暮らす女性「オクシタニの女性」にちなんで名付けられました。


ロクシタンの日本語ホームページ 出所:ロクシタンジャポンHP


ロクシタンはその後、事業を順調に拡大しますが、1990年初頭に投資会社がロクシタンの株式を取得し、オリビエ・ボーサンが会社を離れると事業が停滞します。しかし、ロクシタンの現会長で実業家のレイノルド・ガイガー氏が支配権を握ると、オリビエ・ボーサンはアドバイザーとしてロクシタンに復帰。事業も再び軌道に乗り、国際化が進展します。1995年に香港、1996年にニューヨークに出店すると、1998年には東京青山に日本1号店をオープン。2005年に巨大市場である中国に進出し、2007年には店舗数が1000店を突破します。2010年5月には香港証券取引所への上場も果たしました。



保湿の王様「シアバター」


ロクシタンと言えば、肌に潤いを与え、髪をつややかにする保湿の王様「シアバター」がよく知られています。お店で実際に手に塗って試してみましたが、塗った部分は脂分でテカテカ状態。保湿はバッチリといった感じでした。店員さんによると、男性の場合はひげ剃り後の肌ケアに使うのもオススメとのことでした。


シアバターを使ったハンドクリーム


そもそもシアバターとは、西アフリカから中央アフリカに生息するシアの木の種子から抽出した植物性油脂のことです。シアバターについては、それまであまり知られてはいませんでしたが、世界を旅していたオリビエ・ボーサンは1980年、ベルギー人ジャーナリストから、女性しか触れることのできない神聖な木「シアの木」の存在を初めて聞き、すぐにシアバターを生産しているというブルキナファソの貧しい村に向かいます。乾燥した土地にもかかわらず、シアバターを塗ってきた女性たちの肌や髪がとてもきれいで美しいことに驚きます。オリビエ・ボーサンは、世界中の人にこのシアバターを届け、同時にブルキナファソの女性たちの経済的自立も助けようと商品化を決意。フェアトレードでブルキナファソの女性たちの自立を支援するとともに、世界中にシアバターを使った商品の販売を始めたのです。


「ロクシタン」ブランドのカフェも運営


ロクシタンは、化粧品を販売する店舗だけでなく、実はカフェも運営しています。日本では、東京の渋谷と長野の軽井沢に店舗があります。渋谷の店舗は有名なスクランブル交差点を見下ろせる建物の2階と3階にあり(1階はロクシタンの店舗)、土日は順番待ちで長蛇の列になったりします。グルメサイト「食べログ」では執筆した2023年11月時点で3.67の高評価を獲得し、全国の「カフェ百名店(2022)」に選ばれるほどの人気店です。


明るい店内に、野菜やフルーツをふんだんに取り入れたメニュー。ロクシタンコスメをイメージした鮮やかなデザートや、身体にやさしいハーブティー、環境に配慮したオーガニックコーヒーなど。ロクシタンの企業イメージを体現した店づくりになっています。店内は女性ばかりでしたが、場所柄か外国人観光客も多いようでした。


ロクシタンカフェの料理


ELEMISなどのブランドも展開


「ELEMIS」ブランドの化粧品 出所:ロクシタン決算報告書


ロクシタンは、主力の「L'Occitane en Provence」のほか、買収などを通じて「ELEMIS(エレミス)」、「Melvita(メルヴィータ)」、「L’OCCITANE au Bresil」、「Erborian(エルボリアン)」、「Sol de Janeiro(ソルデジャネイロ)」といったブランドも展開しています。売り上げに占める割合は、「L'Occitane en Provence」が約7割と圧倒的ですが、それでも徐々にロクシタン以外のブランドの貢献も大きくなってきています。



もし実際に使っているブランドがあれば、応援という意味で投資を考えてみるのもいいでしょう。


まとめ:今回見つけた身近な中国株銘柄


今回見つけた身近な中国株銘柄はロクシタン(00973)で、香港証券取引所メインボードに上場しています。


 

【フランスの自然派コスメブランド】天然由来原料を使ったスキンケア製品やシャンプー、ハンドクリームなどの製造販売を手掛ける。「ロクシタン」や「エレミス」「ライムライフ」など計8ブランドを展開。23年3月末時点で欧米やアジアなど90を超える国・地域に合計2774の売り場を持ち、直営店は1362店に上る。地域別売上比率はアジア太平洋が42%、米州が33%、欧州・中東・アフリカが25%(23年3月期)。


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中国株情報部 部長兼編集長

池ヶ谷 典志

立命館大学卒業後、1997年に北京の首都経済貿易大学に留学。 北京では中国国有の大手新聞社などに勤務し、中国の政治、経済、社会記事などを幅広く執筆。 帰国後の2004年にT&Cトランスリンク(現DZHフィナンシャルリサーチ)入社。 現地での豊富な経験や人脈を生かして積極的に中国企業や政府機関などへの取材を行ない、中国企業の調査・分析を行なっている。

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