中国株の銘柄選び

意外と身近にある中国株、街中の飲食店を探してみた(2) 羊のしゃぶしゃぶ料理の「小肥羊」

中国株への投資を始めてみたいけど、どんな銘柄に投資していいか分からない。そんな場合は、身近にある上場企業に投資してみるというのも一つの手です。そこで今回は、意外と身近にある中国株というテーマで、身近にある中国株の銘柄を紹介したいと思います。日本でも意外と中国株銘柄の商品やサービスを探すことができます。今回も街中の飲食店で中国株銘柄を探してみました。


羊のしゃぶしゃぶ料理の「小肥羊」、日本では21店舗を運営


今回街中で見つけたのは、火鍋料理の中でも羊のしゃぶしゃぶ料理の小肥羊(しゃおふぇいやん)です。2022年末時点で国内外に約180店舗。海外はカンボジア、日本、インドネシア、モンゴル、豪州、シンガポール、ニュージーランドに進出し、日本国内では21店舗を運営しています。日本では21店舗中12店が東京に集中していますが、街で見かけたり、実際にお店に行ったりした方もいるのではないでしょうか。


小肥羊の日本進出地域(2022年末時点)


独自スタイルの薬膳火鍋、門外不出の秘伝のスープ


小肥羊の火鍋は、中国各地の火鍋に独自スタイルを盛り込んだ薬膳火鍋で、血行促進や美肌効果があるとされています。小肥羊の火鍋スープは、ホームページの説明によると、特別な「鍋師」だけに調合が許された門外不出のものらしく、白湯(パイタン)と麻辣(マーラー)の2種類。好みに合わせて選ぶことができます。この秘伝のスープでラム肉(羊肉)特有の臭みを取ることができ、冬に食べると体の芯から温まります。

 

小肥羊の料理 出所:小肥羊のホームページ


ヤム・チャイナの一員として香港証券取引所に上場


写真は小肥羊の池袋東武店


小肥羊は1999年に内モンゴル自治区包頭に1号店を開店し、その翌年には上海や北京に進出。2008年6月には香港市場に上場を果たしますが、2012年にヤム・ブランズ(YUM)に完全買収されて上場廃止。ヤム・ブランズはKFC(ケンタッキーフライドチキン)やピザハットなどを展開する世界最大規模の外食チェーンで、ニューヨーク証券取引所に上場しています。


ヤム・ブランズはその後、中国事業を手掛けるヤム・チャイナを分離。ヤム・チャイナは、2016年にニューヨーク証券取引所、2020年に香港証券取引所に上場を果たします。こうして、小肥羊はヤム・チャイナの一員として香港市場に戻ってきたのです。小肥羊に投資しようとしたら、実際には、その親会社であるヤム・チャイナに投資することになります。


ヤム・チャイナはKFCやピザハットなどのブランドを中国で展開

 

ヤム・チャイナが展開するブランド 出所:ヤム・チャイナHP


ヤム・チャイナは、小肥羊のほかにも傘下に多くのブランドを抱えています。代表的なのは、マクドナルドと並ぶファストフードの雄・KFC(ケンタッキーフライドチキン)で、中国1号店は1987年にオープン。2022年末時点で店舗数は9000店超に上り、店舗数・売上高でマクドナルドを大きく上回っています。


ピザハットはKFCよりも3年遅い1990年に中国に進出。2022年末時点で店舗数は2900店余りに達しています。このほか、メキシカン・ファストフードの「TACO BELL(タコベル)」が91店舗、蒸し鍋料理の「黄記煌」が海外店舗も含めて590店舗、イタリアンコーヒーの「Lavazza(ラバッツァ)」が85店舗となっています。 


小尾羊は中国店頭市場に上場、日本で15店舗を運営


ちなみに、似たような名前の「小尾羊(しゃおうぇいやん)」という火鍋店も日本に進出しています。真ん中の漢字が「肥(ふぇい)」か「尾(うぇい)」かの違いだけです。創業は小肥羊よりも少し遅い2001年。1号店は小肥羊と同じ内モンゴル自治区包頭です。店舗数は小肥羊に比べて少なく、2022年6月末時点で、国内外の直営店が18店、協力店が20店、海外でフランチャイズ91店を展開しています。海外では、日本、英国、米国、ドイツ、アラブ首長国連邦、ラオス、ベトナム、カンボジア、シンガポール、豪州、ニュージーランドに進出。日本の店舗数は15店舗(東京9店、神奈川3店、埼玉2店、宮城1店)に上ります。


小尾羊は中国の店頭市場に当たる全国中小企業株式転譲システムで取引されている企業で、残念ながら日本の個人投資家は直接取引することはできません。


写真は小尾羊の東京・新大久保店


まとめ:今回見つけた身近な中国株銘柄


今回見つけた身近な中国株銘柄はヤム・チャイナ(百勝中国:09987/ YUMC)で、香港市場とニューヨーク市場に上場しています。


 【外食チェーンの大手運営会社】中国でフライドチキンの「KFC」、ピザの「ピザハット」、火鍋料理の「小肥羊」、蒸し鍋料理の「黄記煌」といった外食チェーンを展開。22年6月末時点の店舗数はKFCが8510店、ピザハットが2711店など。米ヤム・ブランズの傘下だったが、16年にスピンオフし、ニューヨーク証券取引所に上場した。メキシコ料理の「タコベル」、イタリアンコーヒー「Lavazza(ラバッツァ)」なども手掛ける。


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中国株情報部 部長兼編集長

池ヶ谷 典志

立命館大学卒業後、1997年に北京の首都経済貿易大学に留学。 北京では中国国有の大手新聞社などに勤務し、中国の政治、経済、社会記事などを幅広く執筆。 帰国後の2004年にT&Cトランスリンク(現DZHフィナンシャルリサーチ)入社。 現地での豊富な経験や人脈を生かして積極的に中国企業や政府機関などへの取材を行ない、中国企業の調査・分析を行なっている。

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