中国株の銘柄選び

香港市場の主要銘柄:香港鉄路(2) 九広鉄路吸収で香港の鉄道独占事業者に、ディズニー線も運行

中国株への投資を始めてみたいけど、どんな銘柄に投資していいか分からない。そんな場合は、香港市場を代表する株価指数であるハンセン指数の構成銘柄の中から探してみるのが基本中の基本。ハンセン指数に選ばれる銘柄の中には、世界的な大企業もあれば、個性的で魅力的な銘柄もたくさん集まっています。このシリーズでは、香港市場の主要銘柄をハンセン指数の構成銘柄の中から選んで紹介していきます。


▼参考

中国株の銘柄選び 中国株ビギナーがまず選ぶのはこれ!ハンセン指数は基本中の基本


2000年に香港証券取引所に上場


1990年代後半になると、鉄道の建設や運営のために必要な資金を調達するため、香港証券取引所への上場準備が進められます。2000年4月に社名を「地下鉄路公司(Mass Transit Railway Corp.)」から「地鉄有限公司(MTR Corp.,Ltd.)」に変更。その年の10月に香港証券取引所への上場を果たします。


上場に際し、香港政府は株式の23%を手放しますが、香港政府はその後も支配権を維持し、現在まで筆頭株主の地位にとどまっています。香港証券取引所に上場する企業では唯一、香港政府が株式の50%以上を保有する支配株主という特殊な立場です。そして、上場の翌年、2001年6月には早くも香港を代表する株価指数であるハンセン指数の構成銘柄に採用されます。


上場後も鉄道の建設・開業が続きます。2002年には将軍澳線が全線開通。2005年には香港ディズニーランドの開園に合わせてディズニー線も開通します。ディズニー線は途中の停車駅がなく、欣澳(Sunny Bay)駅とディズニー駅を結ぶ全長3.5キロメートル。自動運転で乗車時間はわずか5分というMTRの中で最短の路線です。


路線自体は短いのですが、舞浜のディズニーリゾートラインと同様、運行車両の窓やつり革がお馴染みのミッキーマウスの顔の形になっているなど、ディズニーランド向けの特別仕様となっていて、気分を盛り上げてくれます。


 

写真は香港のディズニー線 出所:筆者撮影


九広鉄路を吸収、香港の鉄道独占事業者に


2006年になると香港政府は、香港の鉄道事業を二分していた九広鉄路(KCR)との合併を決めます。九広鉄路の運営権(期間50年、延長あり)をMTRに任せるもので、事実上のMTRによる吸収合併です。


香港の鉄道事業における重複投資を避け、事業運営の効率を高めることが狙いでした。香港では「両鉄合併」と呼ばれ、大きな話題となりました。2007年に2つの鉄道が正式に合併し、「香港鉄路有限公司(MTR Corp.,Ltd.)」が誕生。香港の鉄道を独占的に運営する事業者となります。合併に当たっては、独占への懸念に配慮して鉄道料金の引き下げも行われました。


 

100年以上の歴史を誇る九広鉄路とは?


ここで合併した九広鉄路(KCR)について紹介しておきましょう。九広鉄路はMTRよりも長い歴史を誇り、最初の路線である中国側の広州と香港側の九龍を結ぶ九広鉄路(Kowloon-Canton Railway:KCR)の建設が始まったのは1906年のことでした。このとき中国側はまだ清朝末期。香港側は当然ながら英国統治時代です。


香港政府と清朝政府の1898年の合意にもとづく建設で、鉄道の建設・運営の特権を与えられたのは、東インド会社を源流とする英国系資本のジャーディン・マセソン商会と香港上海銀行(HSBC)の合弁会社でした。


路線は中国側の「華段」と香港側の「英段」に分けられ、1910年に中国側の国境と九龍半島を結ぶ全長35.4キロメートルの「英段」が完成。翌年の1911年には中国側の「華段」も開通します。「英段」は現在のMTR東鉄線、「華段」は現在の広深鉄路です。


当時の建設環境は劣悪だったことから工事で多くの人が命を落としますが、完成した九広鉄路は広州と香港の貿易活動を支える路線となります。


英段開通の初日の羅湖駅の様子 出所:九広鉄路公司HP


九広鉄路(KCR)はこのほか、合併前に西鉄(West Rail)、馬鞍山鉄路(Ma On Shan Rail)、軽鉄(Light Rail)を運行していましたが、これらの路線も香港鉄路に引き継がれます。


合併前のKCRの路線図、合併前に4路線を運行していた 出所:九広鉄路公司HP


次回も香港鉄路の続きです。お楽しみに。


まとめ:今回紹介した香港市場の主要銘柄


今回紹介した銘柄は、2000年に香港証券取引所メインボードに上場した香港の鉄道運営会社、香港鉄路(00066)です。


 【香港の鉄道運営会社】香港で地下鉄や空港線、ライトレールなどを運行する。中国本土(北京、深セン、杭州)や欧州(英国、スウェーデン)、豪州でも地下鉄・鉄道事業に参画する。07年に九広鉄路を吸収。香港の公共旅客輸送シェアは49.6%(23年1-5月)。沿線の不動産開発や駅構内・周辺施設の店舗賃貸収入も収益の柱。香港での22年の総利用客数は延べ15億1800万人で平日の平均で445万人。香港と広州を結ぶ「広深港高速鉄道」の香港区間も運営する。


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中国株情報部 部長兼編集長

池ヶ谷 典志

立命館大学卒業後、1997年に北京の首都経済貿易大学に留学。 北京では中国国有の大手新聞社などに勤務し、中国の政治、経済、社会記事などを幅広く執筆。 帰国後の2004年にT&Cトランスリンク(現DZHフィナンシャルリサーチ)入社。 現地での豊富な経験や人脈を生かして積極的に中国企業や政府機関などへの取材を行ない、中国企業の調査・分析を行なっている。

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