中国株への投資を始めてみたいけど、どんな銘柄に投資していいか分からない。そんな場合は、香港市場を代表する株価指数であるハンセン指数の構成銘柄の中から探してみるのが基本中の基本。ハンセン指数に選ばれる銘柄の中には、世界的な大企業もあれば、個性的で魅力的な銘柄もたくさん集まっています。このシリーズでは、香港市場の主要銘柄をハンセン指数の構成銘柄の中から選んで紹介していきます。
▼参考
中国株の銘柄選び 中国株ビギナーがまず選ぶのはこれ!ハンセン指数は基本中の基本
香港版Suicaのオクトパス、FeliCaを世界で初めて採用
香港鉄路は、傘下の八達通控股(Octopus Holdings)を通じ、Suica(スイカ)やPASMO(パスモ)のような非接触型の交通系ICカード「八達通(オクトパス)」の発行・運営事業も手掛けています。八達通控股は64%を出資する香港鉄路が筆頭株主で、ほかに九広鉄路(KCR)、九龍バス(KMB)、珠江船務企業(00560)傘下の新渡輪(サンフェリー)が共同出資しています。
オクトパスは非接触型交通カードの先駆けとなった
香港鉄路がオクトパスの利用を開始したのは、香港が英国から中国の返還された1997年。ソニーが開発したFeliCa(フェリカ)の技術を世界で初めて採用しました。オクトパスの成功を目の当たりにしたJR東日本は、4年後に同じくFeliCaの技術を利用したSuicaのサービスを始めます。香港版Suicaと書いてしまいましたが、実はオクトパスの方が先輩なのです。
香港でオクトパスを利用できる店舗は2023年6月末時点で9万7000店。カードの発行枚数は2370万枚と香港の人口の3倍超に上り、1日当たりの取引数は1590万件、取引額は3億5340万HKドルに達しています。香港では、交通機関の利用、買い物での支払いなど生活に欠かせないカードとなっています。オクトパスの事業は、決算報告書のセグメントの中では「その他」の項目に分類されています。
現在進められている鉄道プロジェクト
東涌線の延伸と新駅の建設計画 出所:香港鉄路HP
香港鉄路が現在進めている鉄道関連のプロジェクトとしては、香港島とランタオ島を結ぶ東涌線の延伸と新駅の建設があります。東涌線の終点は現在、ランタオ島の東涌駅となっていますが、この先1.3キロメートルの場所に延伸して東涌西駅を建設。さらに香港ディズニーランドに近い欣澳駅と東涌駅の途中に、東涌東駅とオイスター湾駅の2つの駅を新設し、2029-30年にかけて完成する予定となっています。新たに新設される駅には、マンションや商業施設、オフィス、幼稚園などを建設する計画です。
このほかにも、香港政府が策定した2031年までの鉄道整備計画「鉄路発展策略2014」に従って、鉄道網の建設が進められる予定です。前回、2000年に策定した計画に見直しをかけ、修正したものです。
計画されているのは、(1)西鉄線の錦上駅と落馬洲支線に増設する古洞駅を結ぶ「北環線」の建設(2)西鉄線の天水囲駅と兆康駅の途中に「洪水橋駅」を新設(3)西鉄線の屯門南駅新設と延伸(4)観塘線の鑽石山駅と将軍澳線の宝琳駅を結ぶ「東九龍線」の新設(5)南港島線(東段)と西港島線を結ぶ「南港島線(西段)」の建設(6)東涌線と将軍澳線を結ぶ「北港島線」の建設――などです。まだ、具体的計画の策定中のものもありますが、これらの路線が整備されれば香港市民の生活がさらに便利になりそうです。
2031年までの鉄道網整備計画 出所:鉄路発展策略2014
香港鉄路のロゴは何を表している?
香港鉄路のロゴ 出所:AASTOCKS
最後に香港鉄路のロゴについて触れておきます。鉄道会社のロゴは、利用者がそのマークを駅の目印として目指してきますので、ひと目でそれと分かるものである必要があります。その点、香港鉄路のロゴは、単純でありながら印象に残るデザインといえます。
上下2つの半円の円弧は、上が九龍半島、下が香港島を指し、それを貫く1本の縦線は両岸をつなぐ鉄道路線だと言います。また、このマーク自体が中国の古い文字である篆書体(てんしょたい)の「木」を表しており、「力・安定・成長」を象徴しているとされます。
樹木が地下にしっかりと根を張って成長するように、香港鉄路もまた、香港の土地に根ざし、四方八方に鉄道網を張り巡らせ、人々の暮らしを便利にしたい、そんな想いが込められているのです。地理的な特徴を表すだけでなく、中国の古くからの伝統を引き継ぎ、さらには鉄道事業への想いを込めた、そんなメッセージの詰まったロゴなのです。
まとめ:今回紹介した香港市場の主要銘柄
今回紹介した銘柄は、2000年に香港証券取引所メインボードに上場した香港の鉄道運営会社、香港鉄路(00066)です。
【香港の鉄道運営会社】香港で地下鉄や空港線、ライトレールなどを運行する。中国本土(北京、深セン、杭州)や欧州(英国、スウェーデン)、豪州でも地下鉄・鉄道事業に参画する。07年に九広鉄路を吸収。香港の公共旅客輸送シェアは49.6%(23年1-5月)。沿線の不動産開発や駅構内・周辺施設の店舗賃貸収入も収益の柱。香港での22年の総利用客数は延べ15億1800万人で平日の平均で445万人。香港と広州を結ぶ「広深港高速鉄道」の香港区間も運営する。