世界7位の規模を誇る香港市場。香港市場には中国を代表するIT企業など、数多くの魅力的な銘柄が上場しています。これまでテンセント(00700)、アリババ集団(09988)、中国建設銀行(00939)、チャイナ・モバイル(00941)、美団(03690)、HSBC(00005)、AIAグループ(01299)、JDドットコム(09618)、CNOOC(00883)の9銘柄を紹介してきました。 今回も前回に続き時価総額10位のネットイース(網易:09999)を紹介します。
ITバブル崩壊でどん底を経験、会社売却も検討
ネットイース(網易:09999)は2000年にナスダック証券取引所への上場を果たしたものの、不運だったのは、それがちょうどITバブル崩壊の開始時期だったことです。ITバブル崩壊のあおりを受け、インターネット広告事業が大打撃を受けます。株価は一時公開価格15.5米ドルから30%も下落するなど上場初日から大幅安でスタート。市場では「流血の上場」と呼ばれます。2001年4月には株価が1米ドルを割り込みます。
その後、財務報告書の虚偽記載が発覚したことで決算発表が遅れ、2001年9月にはナスダック証券取引所から株式取引の停止を命じられてしまいます。取引停止は翌年2002年1月まで続きます。取引停止時点で株価は0.64米ドルまで下落していました。しかも、最高経営責任者(CEO)や最高執行責任者(COO)といった中核メンバーも内部闘争の末に会社を去ります。丁磊氏は本気で会社売却も考えますが、買ってくれるところがありません。まさにどん底です。
海外のゲーム大手に相手にされず発奮
買い手がいなければ自分たちでやり切るしかありません。丁磊氏はどん底のなか、新たな収益源を模索します。そこで丁磊氏が目をつけたのがオンラインゲーム事業です。米国のエレクトロニックアーツ(EA)や日本のソニーなど海外の大手ゲーム会社に中国での代理販売契約を持ちかけますが、「中国市場は海賊版ばかりで商売にならない」として断られてしまいます。
頭にきた丁磊氏は「海外企業にできて、自分たちにできないわけがない」と発奮。自分たちでオンラインゲームを作ることを決断します。Webメール事業を始めるときと同じです。
米EA社は当時、ネットイースを相手にしなかった
ゲーム事業で復活、丁磊氏は32歳で中国1の富豪に
さっそく2001年にオンラインゲーム事業部を発足。オンラインゲーム会社も買収します。そして2001年末、「西遊記」を題材にした最初の多人数同時参加型ロールプレイングゲーム(MMORPG)「大話西遊」をリリースします。1995年に上映された同名の映画で主演を務めた香港の人気映画俳優・周星馳(チャウ・シンチー)氏をアンバサダーに任命し、マーケティングにも力を入れます。
ようやく完成した待望のゲームでしたが、頻繁にゲームがクラッシュするなど技術的問題で大失敗に終わります。しかし、翌年2022年に発表した改良版「大話西遊2」が大ヒットを記録。リベンジを果たします。
業績も上向き始め、2002年にはインターネット企業のなかでいち早く黒字化を実現。2003年にはオンラインゲーム収入が2億元を突破します。2003年には株価の上昇を受けて丁磊氏の資産価値が急増。32歳の若さで中国富豪ランキングトップに上り詰めます。オンラインゲームへの挑戦が大きな成功を生み出したのです。
「大話西遊2」はその後、2013年の大規模アップデートを経ていまでも運営が続けられており、サービス開始から20年以上も続く息の長いシリーズとなっています。
オンラインゲームが新たな収益源となる 引用:騰訊網
海外事業を強化、日本市場にも進出
ネットイースは、新たにオンラインゲーム事業を開拓して復活を果たしますが、この手法はすぐに他社に真似されてしまいます。特にテンセント(00700)がこの分野で勢力を拡大。他社の参入が相次いで競争が激化した2006-08年にヒット作を生み出せずに停滞すると、テンセントに1位の座を奪われてしまいます。
その後、2010年代に入るとスマートフォンの普及もあってモバイルゲームに力を入れます。2013年に人気シリーズ「夢幻西遊2」のモバイルバージョンをリリースすると、その後も次々と新たなモバイルゲームを投入。2016年に「陰陽師(陰陽師本格幻想RPG)」、2017年にバトルロイヤルゲーム「荒野行動」、2018年に非対称対戦型マルチプレーゲーム「第五人格(IdentityⅤ第五人格)」、MMORPG「明日之後(ライフアフター)」などを発表します。これらのゲームは日本でも人気を集めます。中国のゲーム会社とは意識せずにプレーしている人も多いのではないでしょうか。
日本で展開するゲーム 出所:NetEase Games
2020年には東京・渋谷にゲーム開発スタジオ「桜花スタジオ」を設立。日本で積極的にクリエーターを採用し、開発を強化しています。2023年には日本でもワーナー・ブラザーズと共同開発した「哈利波特:魔法覚醒(ハリー・ポッター:魔法の覚醒)」の配信がスタートする予定となっています。今後の日本での展開も期待したいところです。