中国株の銘柄選び

中国株の銘柄選び:意外と身近にある中国株、家電量販店で探してみた(1) スマホ、PC編

中国株への投資を始めてみたいけど、どんな銘柄に投資していいか分からない。こんな人は多いと思います。そこで今回は、意外と身近にある中国株というテーマで、身近にある中国株の銘柄を紹介したいと思います。


日本株の銘柄であれば、身近に上場企業の製品やサービスが溢れています。米国株でも、IT大手であるGAFAのサービスを利用しているという人は多いでしょう。製品やサービスを利用していれば、その製品やサービスを通じて、その会社のこともある程度分かるでしょうし、なにより愛着が湧きます。そして、その会社を応援したいと思うこともあるでしょう。しかし、中国株の銘柄となると、なかなか製品やサービスを利用する機会がありません。そこで、今回は日本の家電量販店で中国株の銘柄の製品を探してみました。


写真は日本の家電量販店のスマホ売り場


スマホ売り場では中国ブランドが徐々に進出


まずはスマートフォンの売り場です。米アップルの「iPhone」や韓国サムスンの「Galaxy」、ソニーの「Xperia」、シャープの「AQUOS」などと並んで目につくのが、中国ブランドのスマホです。小米集団(シャオミ:01810)にOPPO(オッポ)――。世界でも販売トップ5に入る中国メーカーのスマホが並んでいます。もしかしたら、どこの国のブランドか知らずに使っている人もいるかもしれません。


 


このうち上場しているのは世界シェア3位の小米集団で、世界シェア4位のOPPOは残念ながら未上場です。サッカーW杯公式スポンサーで世界シェア5位のvivoは、すでに日本に拠点を設けていますが、現時点で日本で販売はされていないようです。


OPPOは残念ながら未上場


小米集団は2010年設立のスマホメーカーで、日本市場には2019年に進出。IoT家電の販売やネットサービス事業も展開し、スマホを軸とした「IoTエコシステム」を構築して成長している企業です。GAFAで例えるなら、アップルのようなビジネスモデルで、創業者の雷軍氏は、中国のスティーブ・ジョブスとも呼ばれます。


小米集団のスマホは、低価格でデザイン性に優れ、熱狂的なファンが多いことでも知られています。小米スマホの熱狂的なファンは「米粉(=小米のフォロワー)」とも呼ばれます。日本では主に「Redmi(紅米)」「Xiaomi(小米)」などのブランドを展開しています。


 写真は小米集団のスマホ「Redmi Note 11」


PCの売り場ではレノボグループのPCを発見


次にPCの売り場をのぞいてみます。「Dell」「HP」「Mac(アップル)」などの米国系に加え、「Acer」「ASUS」といった台湾系、「dynabook」「VAIO」などの日本系メーカーのPCがひしめき合っています。そうした中で目につくのが「Lenovo(レノボ)」や「ThinkPad」などのブランドを展開する、世界シェア1位のレノボグループ(聯想集団:00992)です。


写真はレノボグループのPC売り場


こちらも、スマホと同じように中国メーカーのPCとは知らずに使っている方がいるかもしれません。「ThinkPad」はもともと米IBMのPCブランドでしたが、2005年にレノボグループが買収。「ThinkPad」のブランドはそのまま残し、利用者の属性に合わせた複数ブランドによるマルチブランド戦略を展開しています。2022年はちょうど「ThinkPad」ブランドの誕生30周年にあたります。


 


「ThinkPad」だけではありません。実は、レノボグループはPC生産でNECや富士通と合弁事業を展開しています。下の円グラフは日本国内におけるPC出荷シェアですが、1位のNECレノボ、3位のFCCL(富士通クライアントコンピューティング)がレノボとの合弁事業なのです。




NECの「LAVIE」、富士通の「FMV」と言えば、日本ではお馴染みのPCブランドです。当然日本ブランドだと思って使っている方が多いと思いますが、合弁事業の5割超をレノボ側が握っていますので、国内PCの4割超は実質的にレノボ系のPCとなっています。


レノボはNECや富士通と合弁でPCを生産している


みなさんは普段どこのメーカーのPCを使っていますか?自分の使っているPCは、実はレノボ系のPCだった、なんてことはありませんか? 中国株を始めるに当たり、どんな銘柄に投資していいか分からないという方は、実際に自分の使っている身近なものから選んでみるというのも一つの手です。 


まとめ:今回見つけた身近な中国株銘柄


今回見つけた身近な中国株銘柄は次の2銘柄で、いずれも香港市場に上場している銘柄です。

【中国のスマホ大手】議決権が多い種類株を発行する企業の香港上場第1号。雷軍会長が立ち上げたスマホメーカーで、22年4-6月期の世界シェアは13.8%で3位(カナリス調べ)。中国のほかインドや欧州でシェア上位にある。IoT製品部門ではスマートテレビ、空気清浄機、AIスピーカー、ロボット掃除機などを開発。ネットサービスでは音楽・映像・ゲーム配信のアプリを通じ広告収入や課金収入を得る。21年、EV事業に参入。


【パソコンの世界最大手】 05年に米IBMのパソコン(PC)部門を買収し、法人向けで「Think」、消費者向けで「Idea」のブランドを展開する。22年7-9月のPC世界シェアは22.7%で首位(IDC調べ)。スマートフォンは中南米に強みを持つ。11年に独メディオンを買収し、NECとPC事業の合弁を設立。14年にIBMの低価格サーバー事業と米モトローラ・モビリティーを買収した。18年に富士通とのPC合弁事業が始動。

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中国株情報部 部長兼編集長

池ヶ谷 典志

立命館大学卒業後、1997年に北京の首都経済貿易大学に留学。 北京では中国国有の大手新聞社などに勤務し、中国の政治、経済、社会記事などを幅広く執筆。 帰国後の2004年にT&Cトランスリンク(現DZHフィナンシャルリサーチ)入社。 現地での豊富な経験や人脈を生かして積極的に中国企業や政府機関などへの取材を行ない、中国企業の調査・分析を行なっている。

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